第11話
翌日、プラークにチルを預けに行くとすぐにカイを奥の部屋に連れて行った。
「カイ、大至急の依頼が一件入った」
「はぁ……、やっぱりそうか。相手は国王か?」
「あぁ、そうだが、どこでその情報を――。いや、それは聞くべきではないな。どうにも複数人、国王の暗殺を企んでいる者がいるようだ。そいつらの暗殺を頼みたい」
「相手も全くわからない状況か……」
「あぁ、とりあえず国王が城の外にいる間に暗殺されなかったら依頼達成と言うことらしい」
「断るわけにはいかないんだな……?」
「あぁ。もし、これで国王が暗殺されてしまったら仕事がしにくくなるぞ」
今の国王はカイへと依頼をしてくるところを見ても、友好関係を築けている。
ただ、それが新しい人物になるとまた全然違うことになる。
「はぁ……、面倒な仕事だな……」
「その分報酬も格別なんだけどな。まぁカイには関係ないか……」
「まぁそこまで金には困っていないからな。ただ、護衛も兼ねるとなると俺一人じゃ厳しいな。少し助けを呼ぶ必要がある」
「……わかったよ。俺も出る。あとは……」
「アルマだな」
「うげっ、あいつも呼ぶのか?」
「当然だ、実力は折り紙付きで情報の流すこともまずない」
「その分金はかなり要求されるけどな」
「かかった分は国王に請求すれば良い。必要経費だ」
「そうだな。わかったよ。それじゃあ俺も準備をしてくるし、カイがアルマを誘ってきてくれ。店は……チルに任せても大丈夫か?」
「は、はい、お任せください!」
チルがグッと手を握りしめる。
そして、顔を強張らせていた。
少し心配だけど、ほとんど客も来ないだろうからまぁ問題ないか……。
「それじゃあ俺は少し出てくるよ。集合はここでいいよな?」
「あぁ、大丈夫だ」
「カイさん、いってらっしゃい」
チルに見送られてカイは大通りに出る。
そして、アルマの情報屋へ向かって歩いて行った。
◇
大通りは次第に人が増えていた。
この中で見物客のフリをした暗殺者を殺しても見つかりはしないだろうが、移動が大変そうだ。
結局素早く動ける手段が大事になってくる。
そう考えるとやはり情報屋の力は大事だからな。
カイはアルマの家にやってくると軽くノックをする。
もちろんそれで返事がくるとは思っていない。
そのまま家の中へと入る。
すると相変わらず散らかった部屋の中でアルマは机に頬杖を付きながら眠っていた。
「はぁ……またか……」
思わず頭を抱えてため息を吐いてしまう。
ただ、そこまでゆっくりしている時間はないのですぐにアルマへと近付いていく。
「おい、起きろ……」
「うーん、むにゃむにゃ……」
一度声をかけただけだとまるで起きる気配がない。
仕方ないな……。
カイは懐に忍ばせてあるナイフに手をかける。
するとその瞬間にアルマはさっと後ろに飛び避ける。
「あっ、起きたか」
「あっ、起きたか、じゃない!! いきなり殺そうとしてくるな!」
「いや、だって目の前で寝てたらな……つい」
「ついじゃない! はぁ、まぁいいか。それで私に何か用なのか?」
「いや、少し力を――」
「断る!」
全てを言い切る前に断られてしまう。
「最後まで聞け」
「いやだ。どうせろくでもないことなんだろう。私に暗殺を手伝えとか……」
「よくわかったな」
「いーやーだー。私はこの家から出ないんだ! 家の中で仕事ができるから情報屋という仕事をしているのに何を好き好んで家の外に出ないといけないんだ!」
やはりこうなるか……。
その能力はピカイチながら外に出ない性格のせいで情報屋に収まっているアルマ。
ただ、彼女を動かすのは簡単だった。
「そうか、それなら仕方ないな。今回の依頼は国王直々のものだったんだけどな……」
そのことを伝えた瞬間にアルマの背筋がピンと張って聞き耳を立てていた。
「依頼料もかなり高いと聞いていたんだけどな……」
ピクッピクッ。
アルマの体が反応している。
これはもう少しだな。
「残念だな。まぁ仕方ないな。今回は俺とプラークの二人で大金を分けさせて貰うよ。無理言って悪かったな」
「いや、待て。その……、なんだ。この私の力が必要なんじゃないのか?」
「でも、迷惑がかかりますよね? それに家の外に出られないなら無理をさせるわけには」
「いやいや、無理なんてそんなことないぞ。ちょうど家の外に出たいと思っていた所なんだ。せっかくだからな」
「そうですか、それなら助かります」
あっさりと金に釣られるアルマにカイは心の奥で微笑む。
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