第6話 みんなが来るまで。
翌日 12時45分
「忘れ物なし、ベッドメイキングもちゃんとした、ゴミもまとめた。メガネ持った。
うん、よし。」
部屋を出る前にしっかり確認をする。昨日聴いた私の能力だったら、忘れ物もすぐに取れるんだろうけど、それでも面倒くさいのは嫌だから私の分だけでも少なくしておこう、と思った。
ベッドメイキングをしたのは、お母さんにそういわれたから。大昔の言葉で「立つ鳥跡を濁さず」という言葉があるし、とにかく何かを使った時は使う前よりもきれいにして出ろ、とお母さんはよくいうから。
だから私もそれに従っている。したがわないと怖いっていうこともあるのだけれど。
コンコンッ
私がくだらないことを考えていると、バシュさんが入ってきた。
「そろそろお時間です。ご準備は整っていますか?」
「はい、ありがとうございます。」
昨日よりも少しだけピシッっとした髪型をしているのだけれど、雰囲気は昨日と変わらず、どちらかというと少しでも私の緊張を落ち着けようとしているような感じだった。
でも、あいにくと私は緊張していない。
部屋を出たら緊張するかな、とか、集合場所に行ったら緊張するかな、とか思っていたけれど、そんなに私は緊張しないほうらしい。
ガチャッ
集合場所について、バシュさんがドアを開けてくれる。ここに来てから何度もそれをしてもらっているけど、一向に慣れない。
部屋の中を見ると、今日は私がラストではなかったようで中にはアリス様と第一王子と第二王子。
三人の間に会話はなく、少しだけ空気がピリついていた。この空気の部屋に入りたくない。そう思うけど、入らなければ仕方ない。
というより、アリス様はともかく第一王子と第二王子の間に会話がないのは少し心配になる。これから2人で協力し合ってこの国を治めていくのに、その2人の間がピリついているのはすこしきついのではないだろうか・・・。
魔王を討伐して帰ってきたときに2人の間のわだかまりがなくなっているといいな。
まぁ、私が何をするとかはないのだけれど。
仲直りをするのを助けるのも私以外の誰かだろうなぁ、と思う。
部屋にいた3人は昨日と同じ椅子に座っていた。
私も同じにした方が良いと思ってアリス様の隣を選んだ。
===
「それでは、これで全員ですね。」
その声で思い思いの事をしていた8人がアンシュッツさんの方を見る。
アンシュッツさんが来るまでの間は少しだけ会話があった程度で、基本的には静かだった。
話していたのは女神さまと第一王子、グリーベルさんとテーグリヒスベックさん。他の人は本を読んでみたり、忘れ物がないかを確認してみたり。と、思い思いの事をしていた。
部屋の中には魔王討伐パーティーの9人とアンシュッツさんの合計で10人しかいなかった。国王陛下は少し前から病気で臥せっているらしく、今日の朝病状が悪化したらしい。
なら治癒まほうをかけてから行けばいいのではないかとも思うけれど、国王陛下の病気の原因は魔力の増え過ぎらしいので、早急に魔王を倒さなければならないとさっき説明があった。
「全員で手をつなぎ、アンガ―ミュラーさんが"魔界に行きたい"と思うだけで魔界との境界線にたどり着きます。そこからは歩いて行っていただくことになります。
それから先の案内についてですがまほう間でのやり取りをします。それは第一王子に一任しているので、第一王子を介しての連絡だと思ってくださって結構です。
それでは、どうか、ご無事で。」
そういわれて、アンシュッツさんが部屋から出て行った。
パーティーのメンバーのみとなった部屋内は静まり返ってしまった。
「つってもよ、俺らがどれだけ行くのを渋った所で、行かなきゃいけねーのには変わりないんだろ。」
そういったのは、ツヴァイクレさんだった。
火属性のまほうと、物理攻撃を得意とする彼は得意分野の通り、直線的なのだろうか。
「そうだな、では、行こうか。」
3文字しかしゃべれない魔王ってどうよ。 @matunami0131
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