第5話 私は何ができるんですか?
「じゃあ、最後。よろしく。」
そういわれて、私の番が来た。立ち上がると、やはりじろじろと見られる。確かにこの髪色は変らしいし、平民は勇者様と私だけだし、見られるのは仕方のない事だろうけど。
「ヴェンデルガルド・アンガ―ミュラーです。属性はよくわかりません。正直私自身、なぜここに呼ばれたのかも、私のこの中での役割もよくわかっていません。まぁよろしくお願いします。」
そういうと、すっと前にアンシュッツさんとバシュさんが出てきた。
私に背を向けて、というよりは魔王討伐パーティーの皆さんに向かいあえるように。
「彼女については私達から説明いたします。」
「ああ、よろしく頼む。我々もそして彼女も、彼女の能力についてまだわかっていないのだからな。」
アンシュッツさんの話に返事をしたのは殿下だった。
宰相だから顔見知りなのかな、と勝手な憶測を立てる。というより私は席に戻ってはいけないのですかね・・・
「ああ、アンガ―ミュラーさんも席について大丈夫ですよ。」
私の思いを組んでくださったのか、バシュさんがそういってくれた。バシュさん、優しい。
「はい、ありがとうございます。」
私が席に戻ったのを確認してからアンシュッツさんが話し出した。
私の能力について、そして、なぜそれを隠し続けているのかについてを___
「まず、彼女の能力についてです。端的に申し上げますと、彼女の能力はまりょくではなく、魔力です。
通常、魔物にしか使えない魔法が彼女にも使えるのです。
そしてどのようなことができるのか___
それは、時空間の移動です。」
時空間の移動・・・?
つまりは瞬間移動と
ということは私は送迎係?
「時空間の移動!?人類に本当にそんなことができるのかしら・・・。」
「でもレーナさん、魔力には計り知れない力があるといいますよ。」
さっきまで静かにしていたグリーベルさんと、その部下のテーグリヒスベックさん。
2人の会話から、私がどんなにすごい力を持っているかが分かる。
それと同時に、もしかしたらヴァルも同じ力を持っているのかもしれない。それが分かったら、変な所に利用されるのでは?という不安が襲ってくる。
「時空間の移動、今までの魔力を持った人間は土地と土地の移動しかできませんでした。いえ、それでも十分だったのです。
しかし、検査の結果、アンガ―ミュラーさんはそれをも超越する魔力を持っていることが分かりました。それがタイムトラベルです。
そして、魔力には願ったものを出すことができます。というよりは、ものを移動させるという方がイメージ的には近いです。
例えば、リンゴが欲しいと思ったのなら、そのリンゴはどこかから取ってきたものになります。
家にある本を読みたいと思ったら、それを鮮明に思い浮かべれば、その実物がもらえるということです。
まとめると、魔力には時空間の移動、ほしいものを取り寄せる機能があります。
そしてそれらはすべて、アンガ―ミュラーさんが願えばいい。発動条件などはなく、呪文も必要ありません。わかっていただけましたか?」
アンシュッツさんは、長い長い説明を終えてふぅ、と息をはいた。
そして私の役割は送迎係と食料と物資の調達だということが分かった。十分。それは、私には十分すぎる役割で明らかに大きすぎる役割だった。
「アンガ―ミュラーさん、あなたにメガネを持ってくるように、といいましたよね?」
突如わたしに話が降られてきて少しびっくりとする。
「はい、持ってきましたが。」
「ありがとうございます。
通常、強力な魔力を持つものは目がとてつもなく悪いと言われます。しかし、アンガ―ミュラーさんはそこまで目が悪いわけではない。
では魔力が弱い?そうではありません。人間に魔力が宿る場合、その人間は魔力を使う時のみ目が極端に悪くなるのです。
だからメガネを持ってくるようにいったのです。」
メガネ・・・そういえばどうして家にあったのだろう・・・
「と、まぁ、私からの説明は以上です。出発は明日、13時にまたこの部屋に集まってください。今日は各自の部屋でお休みください。
失礼いたします。」
アンシュッツさんが出ていって、私たちは誰から言うこともなく部屋の外に出た。
私の案内はバシュさんがしてくれた。私の部屋は、一人にしては広すぎて、ベッドもふかふかすぎるから、多分今日は眠れないな、と思った。
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