大願が叶うとき

 前回は大斧、「コートアース」について話したが今回は同時に錬成されたポーションについて話していこう。


 このポーションは天界にあった「オール・アップ」というポーションを真似たものだ。

 オール・アップとはその名の通り身体能力から魔力まで、幅広くステータスを大幅アップさせるものだ。ただし、代償として効果時間である5分が経つと10分間弱体化してしまう。


 だがそれでは最後の切り札として使うしかないので使い所が限られる。

 なので堕天使はそれを改良することにした。


 まず効果時間が5分だと一瞬の間しかブーストできないので効果時間を伸ばし、15分にした。だがこの世界は±0で成り立っている。なのでメリットを増やせば、その分デメリットも増えるという訳だ。


 そのデメリットを弱体化10分間から小人化20分間へと変えることにした。


 弱体化はそのままの体で力が弱くなるだけだが小人化は弱体化よりも更に力が弱くなる。力を使おうと筋力強化を施しても、元が小さいのでさほど力にはならない。

 それは魔法も同様で、魔力強化をしても体が小さいので魔力変換効率が低下するので発動までに時間がかかる。


 が、しかし。堕天使の得意とする魔法陣は陣を空間にし、そこで何かを行うというものだ。なので体が小さかろうが大きかろうが魔力変換効率には一切関係ない。


 要はとんでもチート武器になっているということだ。


「ふう......準備なら万端だぞ?」

「また何か小賢しい真似をするのかい?」

「いいや、今度は打ち合いだ!」


 そう言って丸腰のエルへと駆ける堕天使。しかしエルは堕天使が消散していると思っていた聖剣をどこからか再び持ち出してきた。どこか強さも一段階ほど上がっているように感じる。


「上位になったらそんなこと御安い御用ってか!?」

「それほどでもありませんよ。さあ?来ないのかい?」


 それからは激しい乱打戦が続いた。オールアップによりステータスが大幅アップしている堕天使は上位天使となったエルと互角に渡りあっている。


「おいおい!上位天使ってのはこんなもんなのか!?これじゃあの豪華な天啓の意味が無えな!」

「.........」


 堕天使に煽られても顔色一つ変えずにエルは対処している。堕天使は「何か策があるんじゃ......?」と様子を見るも特に変わったことはない。寧ろ剣捌きが単調になっていた......


 ならばと思い堕天使はコートアースに『付与』された「黯転警鐘」を発動させた。

 辺り一帯に凄まじい音が鳴り響く。遠く離れた木々にも音の衝撃波が伝わっているようで、ミシミシと音を立てながらしなっている。


 エルは動きを止め棒立ちになってしまった。


「上位天使ともあろうお方がまんまと技にかかるとは......名ばかりなんじゃねえのか?」

「.........」

「おいおい、だんまりかよ」


 エルを煽ってみるも一切、反応が無い。なので堕天使は一つ一つ丁寧に高位魔方陣を錬成していく。


 火の高位魔方陣が一つ


 水の高位魔方陣が一つ


 木の高位魔方陣が一つ


 闇の高位魔方陣が一つ


 無の高位魔方陣が二つ


 計六個の魔方陣が錬成された。火、水、木、闇の魔方陣を無の魔方陣で挟み纏める。すると魔方陣同士が光り出し、融合を始めた。

 やがて光が収まるとそこには何も無かった。いや、正確には「目で捉えるのが難しい」といったところだろう。それに対し堕天使は感嘆の声を挙げる。


「ついに......遂にたどり着いたぞ!『仮初めの魔方陣』へと!」

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姿が変わっても うゆ @uyu717

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