堕天使の錬成陣はピカイチ

 《神聖》『上位天使・エル』は「真なる天啓」により多くの力を手に入れた。


 始めに『聖域せいいき』を使い、行動範囲を絞る。辛うじて堕天使の身を守っていた『暗霧』は消散していった。


「ハッハッハッ!なんちゅー力だ......闇の魔力を常時濃い状態で展開しねえと体に響いちまう......」


 天使の更なる力に興奮するあまり、堕天使の口調はエルのように粗暴になる。というのも『聖域』の聖なる魔力が濃すぎてかなりの負荷が堕天使にかかっているからである。


「どうした?上位堕天使へならないのか?君ももとは天使だろう?」

やつに天啓が降りるとでもいうのか?馬鹿が」

「また『融合』すればいい話ではないか?」

「ハッ!脳が足らねえみたいだな!」


 「真なる天啓」を授かったエルは前の粗暴な言葉遣いより少し落ち着いた言葉遣いに変化した。様々な知識を天啓により授かったからだろうが、堕天使はそんなエルを怪しむ。そんなことはお構いなし、とエルは様々な魔法を使いこなし堕天使へと迫り行く。


「君に全てかわせるかな......?『多重詠唱:雷光柱』!」


 激しい稲妻の如く、聖力を帯びた柱が次々と降り行く。が、堕天使もまんまとやられる訳にはいかない。


「何もしないとでも思ったか?馬鹿め!『土倉』!」


 魔方陣が出現し光り出した途端、地中から堕天使を囲むように倉が現れた。聖力が込められているとはいえ基は電気、『雷光柱』は殆んどが地面へと受け流される。


「魔法の相性も考えないとなぁ?」


 ならばと思いエルは『滅魔砲』を詠唱しようとするが堕天使側は中位と下位がもう一体ずついるためその対処に回らなければならなかった。


 一方の中位堕天使が『土倉』でエルの猛攻を耐えている間、もう一方の中位堕天使は錬成陣で大斧を1丁、そして小さな小瓶を1つ錬成する。


 大斧は『コートアース』と呼ばれる大斧で堕天使がまだ天界に居たとき愛用していた斧だ。その大きな刃を支えるには些か心許ないような柄だが、この大斧は天界製なので心配御無用なのだ。それから堕落の影響か、これまで金のように輝く色合いだったものが、漆黒になり黒光りしている。

 今回はその大斧に更なる能力を三つ『付加』させた。


 一つ目は『対聖魔法』。エルが攻撃を仕掛けて来る度、防御壁を一々魔方陣で行使しているのは無駄が多い。なので攻防一体化できるようこれを『付加』した。


 二つ目は『魔力分解』。これは名前のまま、一定範囲内の魔法を全て魔力へと分解し、魔法の行使を無かったことにするという反則極まりない魔法だ。堕落の末に得るものは強力なものばかり......


 三つ目は『黯転警鐘あんてんけいしょう』。これは相手の脳内で警鐘を響き渡らせ、行動を鈍らせるというもの。実はこの魔法中々にエグい。

 堕天使が実験程度に魔物へ行使してみたのだが、その魔物は「ギャァー!!!ギャァー!!!」という耳をつんざくような奇声を上げ、目をギョロギョロと回す......ということがあったくらいだ。

 それを武器に『付与』することで魔力を流すだけで『黯転警鐘』を行使するというとんでもメカニズムを産んでしまった......




ちなみに堕天使はこのときちゃっかり自分の身体に『精神支配』という魔法を『付与』し、自分の脳内へ警鐘が響き渡ることを事前に防いでいたのだ......

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