第17話アヤメ

昨日篠崎は何かに気づいた様子だった。

何に気づいた?

一貫性のないマークに意味があるのか?

それとも一つ一つ解釈しないと成り立たないのか?


「尾崎さん。言いにくいんですけど、また2件発生しました。」


ふざけるな。

模倣犯は俺たちを嘲笑うかのように警戒網抜けて殺して回ってる。

3日連続で5件は異常すぎる。

まて、あいつは昨日事件のあった場所の位置を気にしてた。

もしかすると…


「おい原田。どこでおきた?この地図にマーキングしてくれ。」


地図広げてマークがあった事件現場に印をつける。

ほぼ均等な距離感と配置。

線で結ぶと…


「あ!星!」


これで一つ目の星のマークに関しては説明がつく。

十字架とカンガルーはなんだ…

原田が何かに気づいたような顔をした。


「十字架ってもしかして教会じゃないですか?星の中にある教会になんかあるんじゃ…」


星の中には6軒も教会がある。

絞り込むにはどすれば…

掴みかけた犯人の意図が手をすり抜けていく。


クソが。


「おい、新しい2件にマークはあっあか?」


それを聞いた原田の目線が一瞬泳いだ。


「おい、なんだよ。」


「それが、絵じゃなくて花が…」


それ以上を言おうとしない。


「花がなんだってんだ!」


原田は苦痛を絵に描いたような表情で口を開いた。


「切られた首にに植えられてまして…」


ドカン!

机を思いっきり殴った右手はすぐに腫れ上がって拳が握れなくなった。

ふざけるな…

殺した挙句傷口に…


「それで、なんの花だ。」


完全に腰の引けた原田はか細い声で尾崎に伝えた。


「タンジーと、ユリオプスデイジーって花です。花言葉は…」


怒りと悲しみが混ざって原田は言葉が出なてこないようだった。

やり場のない怒りが2人の間に流れる。


「花言葉は、あなたとの戦いを宣言する。それと、夫婦円満です。」


一つ目は前半の犯人に向けたメッセージ、もう一つは皮肉かよ。


クソが。


気がついたらあいつに電話をかけていた。


「また起きたってね。今回は何?」


電話の向こうのアイツの言葉は冷静で俺の怒りを静かに冷ます。


「切られた首にタンジーとユリオプスデイジーが植えられてた。花言葉は…」


「宣戦布告と夫婦円満。」


事件の詳細を聞いても篠崎の声のトーンは変わらず冷静だった。


「花言葉詳しいんだな。」


「趣味程度よ。それよりその犯人許せないね。殺した挙句に弄んで。」


篠崎の声は微かに震えていた。


「絶対捕まえる。じゃあな。」


あいつのお陰で冷静さを取り戻せた。

最初に事件を起こしたやつもそうだが模倣犯は絶対に逃がさない。

無意識に握られた左手からは血が出ていた。


ちょっと血が出ただけでこんなに痛てぇのかよ。





模倣犯。今夜絶対に殺す。

やっと見つけた。


「エマ。進展あったの?」


「あいつは死体を汚した。切った首に花植えやがった。」


私の顔を見たゆうきは青ざめていた。

昨日自分に向けられていた殺意が教室の中にいた全員に伝染した。

クラス中から視線が集まる。


「.場所変えよう。ゆうきには話しておきたい。」


ゆうきの手を引いて教室を出た。


エマたちがいなくなった教室は普段の温度を取り戻した。

エマの感情的な姿を初めてみた人たちはしばらく時間が止まったままだった。

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