《先輩》華恋

「先輩、帰りましょう」

帰りのホームルームを終えた私が昇降口で靴を履いていると、どこからともなく華恋が現れた。華恋の教室からここまで少し距離があるはずなのに、息の切れた様子もない。いつものように満面の笑みで私を迎えにきてくれていた。とんとん、とつま先を地面に当てて靴を履き、

「帰ろっか」

「はい!」

いつものように二人きりの下校が始まる。


いつものように、と言ったけれど前言撤回。今日の私には、ある疑問が頭に浮かんでいた。

どうしてここまで慕ってくれるんだろう。なんて。思えば、たまたま趣味が合うくらいの華恋が私をずっと好いていてくれる理由がわからない。

「ねえ」

「何ですか?」

ころん、と効果音が鳴るような動作で首を傾けた華恋はまあ、可愛い。

「どうしてずっと私のことを好きでいてくれるの?」

「先輩が好きだからです」

んー……答えになってないなあ。

「うーん、そうかあ」

「先輩も私のことが好きでしょう。知ってますから」

「すごい自信だね」

「はい!」

好きじゃないと言ったら嘘になるけども。

「先輩とラノベの話をするの、すごく楽しいですし。ずっと一緒にいたいんです」

蝉の鳴き声の中でも一言一言が私の耳に届く。

「それと」

「ん?」

ラノベの話くらいなら他の人でも出来そうな気がする……けど、違うんだろう。そうじゃなくて、もっと大事な。

「先輩の妹になったみたいで……幸せです」

見ると、華恋は本当に幸せそうな笑みを浮かべていた。妹……か。確かに、華恋は妹モノが好きだったような気がする。

「普段は姉モノよりも妹モノのほうが読むんですけどね。先輩見てると、私のほうが妹になりたくなっちゃうんです」

私の視線に気づくと、いたずらっ子のような表情に変わった。

「私みたいな妹、いかがですか?」

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きみらのにじたんぺん √素数 @sayo23

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