きみらのにじたんぺん

√素数

《休もう》レオンと綾乃

ふら、ふら、と右へ左へ揺れたレオンの体が前からやってくる。その目はなんだか妙にふわふわとしていて、眠気を我慢しているようなはっきりとしない目だった。

「レオン」

「……んー」

一応のような返事をして横を通り過ぎようとするのを、両肩に手を置いて静止する。

「レオン、ちょっと」

「ん……どうしたの」

いつもは綺麗な金髪にも癖っ毛がついてしまっていて。

「どうしたのじゃないよ……最近寝てないんじゃない? ひどい顔してるよ」

「あー、うん、大丈夫大丈夫」

だんだんと目が冴えてきたのか、大丈夫の声も最初の一言よりは聞き取りやすいけれど。でも、全然大丈夫じゃない。

「ねえ、休もう……?」

私よりちょっぴり背の低いレオンの顔を覗き込むと、微笑みが私の視界に花を咲かせた。

「心配ありがとう、でも大丈夫だよ」

大丈夫じゃないよ。

私の手を優しく離して通り過ぎていくレオンを止める方法が数秒思いつかなくて、やっと頭に浮かんだものをすぐ実行することしか私にはできなかった。

レオンの背中を包み込むように、ぎゅっと抱きしめる。

「無理、しないで」

「綾乃……」

レオンが振り返って私を見た。すごく不安な表情をしてしまっているだろうことが、自分でもわかる。

「休むことは大事だよ、い……一緒に、寝よう?」

一瞬、レオンは何かを考えているように動作が止まってじっと私の顔を見つめていた。

すぐに、笑顔がまた戻ってくる。

「そんなこと言われたら断れないよ」

参ったなあ、とレオンは私の頭を撫でた。

「じゃあ、行こうか」

レオンに手を取られ、行き先も言わずにレオンは私の先を歩いていく。それはどことなく、とても嬉しそうに。

「行くって、どこに」

「決まってるだろう」

レオンに導かれるままに、私は一歩一歩を踏みしめた。ああ、心臓がうるさい。

真っ赤になった顔は、レオンが振り向いた時に見られないように、俯いていて。

もう、ずっと振り向かないで。

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