第45話・日常の異変
文化祭が終わってから三日後の朝、この日も俺にとってはシエラちゃんが来てからの日常と変わらない一日の始まり――のはずだった。
「のわっ!?」
「きゃっ!?」
そろそろ朝のホームルームの時間になるので職員室を出て教室の方へ向かい始めると、階段を駆け下りて来た赤井さんとぶつかった。
「おい、大丈夫か?」
「は、はい、大丈夫です。ごめんなさい先生、慌ててたものだから」
「慌ててたって、いったいどうしたの?」
「シエラちゃんがまだ来てないんです!」
「えっ!? シエラちゃんが?」
「そうなんです、いつもギリギリだけどちゃんと来てたのに……まさか途中で事故に遭ってたりしませんよね!?」
「お、おい、縁起でもない事を言うもんじゃない」
「でもシエラちゃん、今まで一度も遅刻した事ないんですよ? 心配するなって言う方が無理ですよ!」
「うむ……」
初めて見る赤井さんの慌てぶりに釣られてしまったらしく、俺も心の中に不安が広がり始めていた。しかし俺は先生だから、ここで赤井さんと一緒に慌てふためくわけにはいかない。
「赤井さん、とりあえず落ち着いて。心配な気持ちは分かるけど、単に寝坊してるとか、途中の信号に引っかかって遅れてるだけって可能性もあるんだから」
「た、確かにそういう可能性はありますよね……すみません」
「とりあえずは教室に行こう、その内シエラちゃんも来るはずだからさ」
「そうですよね、分かりました」
こうして俺は赤井さんと一緒に教室へ向かい、俺はこの日初めて出席簿のシエラちゃんの欄に×印を入れた。
× × × ×
一時間目の授業が終わって三組の教室を出ると、一組の教室から飛び出して来た赤井さんが俺を見て急いで走って来た。
「先生、やっぱりおかしいですって!」
「おかしいって何が?」
「シエラちゃんですよ、一時間目が終わったのにまだ来てないんですよ?」
「えっ!? まだ来てなかったのか?」
「そうなんです、本当にどうしちゃったんだろ……」
シルフィーナさんが隣の部屋に住んでいる以上、寝坊をしているという可能性は限りなく低い。となると、本当に途中で事故にでも遭ったのではないかと心配にもなってくる。
しかし仮にそうだったとしたら着ている制服や生徒手帳から学校に連絡があるはずだから、その可能性も低く感じる。となると、途中で思わぬアクシデントに見舞われて身動きが取れなくなっている線も有り得る。
「赤井さん、俺は次の授業は午後からだから、校長の許可を貰ってシエラちゃんを捜しに行く、だからもしシエラちゃんが学校に来たら俺の携帯に連絡をしてくれないか?」
「分かりました」
「ありがとう、それじゃあ行って来る」
「シエラちゃんの事、よろしくお願いしますね」
「ああ」
こうして俺は職員室に戻ってから校長に事情を話して外出許可を貰い、シエラちゃんを捜しに出た。しかし思い当たる場所などを色々と回って見たが、結局シエラちゃんを見つけ出す事はできず、俺はシルフィーナさんに協力をしてもらおうと自宅アパートへ戻って来た。
「すみませんシルフィーナさん、早乙女です、シエラちゃんを捜す手伝いをしてほしいんですが」
部屋の玄関扉をコンコンと叩いてそう言ったが、シルフィーナさんからの反応は無かった。
――いつもならこんな事を言えば即座に飛び出して来るはずなのに、どこかに出掛けてるのかな?
色々な意味で焦っていた俺は、シルフィーナさんの不在にどうしようかと思いながら一旦自宅へ入った。そして喉の渇きを潤す為に冷蔵庫からお茶を取り出し、コップに注ぎ入れてそれを飲む最中、ふと小さなテーブルの上に出勤前には無かった小さなメモ紙が置かれている事に気が付いた。
俺はお茶を飲み終えたコップを台所のシンクの中に置き、その小さなメモ紙を手に取って見た。
「えっ!?」
置かれていたメモ紙を見た俺は、その短い内容を見てとてつもない衝撃を受けてしまった。
※他作品を制作によりストックが尽きましたので、次話からは一週間に一度、土日のどちらかでの更新となります。ご了承くださいませ。
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