異端児の片鱗
家に着いたアブは何かに捕われたように考え込む。
その原因は服屋で見たとある品だった。
~時は少し遡ること数時間前~
「これは……?」
服が沢山並んでいる中に短剣のような物がいくつか並んでおり、その中でも1番豪華な装飾をされた鞘の短剣を手に取り眺める。
赤地に金の紋様を入れた鞘。剣は大して普通のものであったが、魅入るには十分だった。
「それはねある程度の貴族が自分の爵位を証明するためのものなんだよ。今見てるその短剣なら伯爵家、隣のは辺境伯家みたいにね」
「いいなぁ、そんな短剣が欲しい」
「まぁ、持てるのは貴族家当主だけなんだけど」
♢ ♢ ♢
そんなことがあり、短剣を入手するすべを考えていた。
「あ?作ればいいのでは?」
そうしてアブは魔力を使い、短剣という名の魔剣を創り出したのだ。
魔界の大蛇であるデスサーペントの革を柄にし、片刃の刃はミスリル主体。その刃にはオリハルコンで模様付けをする。ここに魔力を流し込めるようにするのだ。鞘はさっき見たものを頭でイメージしながら作りだしたものだ。
「で、出来た…!!」
そしたら次は
まずは耐久性。だが万が一欠けてしまった場合は治さなくてはならない。
それはとても面倒臭い。
「じゃあ…【
まずは二度と壊れない剣の完成。
次に斬れ味。スパッとなんでも切れる剣を作りたい。
「【
最後に魔力を流し込んでも耐えられるようオリハルコンに直接付呪をする。
だがどうせなら…
「【
これで完成だ。
しかし、ここであることを思いつく。
どうせならいろんな形に変化させて戦った方が面白いだろう。
何にしようか………。
「短剣、長剣、大剣、双剣、片手斧、両手斧、矛、槍、杖。沢山ある。まだまだありそうだが、取り敢えずはこれに変形出来るようにしておこう。
【
よし。出来た!
あとはこの短剣を背中の鞘にしまっておくだけだ。
♢ ♢ ♢
「ん?アブ?その背中の剣は?」
「気付きましたか?ふふふ、素晴らしいでしょう!私の短剣、ミラーウィングです!」
「も、もしかしてあの店から盗んできたんじゃないよね?」
目を大きく見開いて尋ねてくる。
いくらなんでもそんな事するわけない。
「違いますよ。創ったんです(ドヤァ…!)」
「へ?つ、創った?どういうことだい。
説明してもらおうか。」
「え?その…魔力で、こう…パパって…創りました( ドヤァ…!)」
「アブ、その顔ものすごく腹立つからやめなさい」
誰だ?そんな失礼なことを言う人は。
「あ、ルーシー姉様。いたんですか。」
「ずっと居たわよ!ていうかその剣作ったってどういうこと!?」
「今言いませんでしたっけ」
「「言われてわかるもんじゃない(わよ)!!」」
え、ええ?
そんな事言われても作ってしまったのだからしょうがない。
すると後ろから来たのであろうユリーナ姉さんに剣を引き抜かれる。
「この剣格好いいわね」
「や、やめてよ、取らないで」
「いいじゃない見るくらい」
いや、そうじゃない。
ミスリルやオリハルコンなんてよく考えたら子供の入手出来るものではない。
「ん?それは……ミスリルかい?」
父さん、なんで1発で見抜くんだ。
「父様!違います、ミスリルだけじゃないです、オ…オリハルコンも組み込まれてます…!」
巫山戯んなルーシー!!
そう、このミスリルもオリハルコンも、
採取や精錬がとても難しく、国の中でも限られた鍛冶師しかミスリルやオリハルコンを
使った武器や防具の精製を依頼されることは無い。
そんなこと知るわけもないアブはその2つを巧みに使用した魔剣を生み出した。
その技術があればこの国のどんな鍛冶屋も潰す事が可能だ。
「アブ、その剣はあまり人に見せたりはしないこと。分かった?」
「…………はい…」
「アブ……どんどん人の領域を離れていく弟を見るとこんなに悲しくなるのね…」
ルーシー姉様がしみじみとした感じで言う。
やめろ。まだ人でいるからな。神族だが。
だがしかし、ほんとにこれからの行動については考え直した方が良さそうだ。
いつバレて連れていかれるかわからない。
ま、家族のことは信用しているが。
人間界に転生した創造主のお話 トマト教信者 @kiririniumis
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