怠惰の代償

翌朝。背負っているものを爆破してしまったような、清々しい気持ちでアブは目覚める。

起きてそうそうに昨晩改ざn…修正したステータスを眺めにやける。


「完璧だ。あとはこれを見せて信じ込ませるのみ。」


以前、傍観神が書類を誤魔化して言っていた台詞を一人部屋の中で呟く。

家族を騙すことへの罪悪感などとうに消え失せていた。

今はただただ自分の身の安全を確保するためどんな手を使ってでも隠し通さなければならないからだ。


―――ガチャ


「姉さん?どうしたんです?」


「あ、起きてたんだ。母さんから起こしてきてって言われたからきたんだけど」


「そうですか、すぐ行きます」


「それで…ステータスの件はどうにかなりそうなの?」


「バッチリです!姉さんのお陰でね」


ユリーナは頬を赤く染め、「だったらいいけど」とだけ言い残し部屋をあとにする。

アブも服を着替え、ユリーナを追う。





「「アブ、おはよう」」


「おはようございます、父さん、母さん。

昨夜はすみませんでした。」


「仕方ないよ、初めてあんな長旅をしたしね、もう大丈夫なのかい?」


「はい、もうすっかり」


「それは良かった、それと今日は服を見に行くからね」


「はぁ、服ですか…?」


「うん、今度王都で開催されるパーティーに来ていく礼服だよ。国王主催だから、普通の貴族服で行く訳にも行かないんだよ。」


パーティー。きっと美味しい物が並んでいるに違いない。何も無いなら行く必要は無いが、食べ物がある可能性にかけて見るのも面白い。


「ねぇ、アブ、そう言えば昨日なんだかんだで見れてなかったけど、ステータス。見せてもらえるかしら」


母さんの言葉に父さんがはっとした様子でこちらを見る。

完全に忘れていたのだろう。


「うん、大丈夫だよ、【個体能力開示ステータスオープン】」



――――――――――――――――――――

【名前】アブスタール・バルト

【種族】人間族

【性別】男

【年齢】6歳

【称号】子爵家次男


【レベル】286

【体力】2.958.000/2.958.000

【魔力】∞/∞

【武力】198.000

【能力】SSS+

【固有魔力】固有魔力複写(幻影、感情吸収)

【適正魔法】火属性・水属性・風属性・土属性・氷属性・雷属性・無属性・自然属性・光属性・聖属性・闇属性・時空間属性

【スキル】

・魔力耐性Lv.30

・物理耐性Lv.30

・魔法能力Lv.30

・攻撃能力Lv.30

・鑑定

・アイテムボックスLv.30

【特殊魔力】

・狙撃(あらゆる攻撃が必中する)

・経験値取得ボーナス(経験値取得時1000倍)

・Lv上昇率ボーナス(経験値反映率200倍)

・魔法攻撃反射(自分の致命ダメージを超過した魔法攻撃を全反射)

・変装(自身の思い通りの姿に変えられる)


【加護】

・創造主アムルの加護

(炎と闇を司る神)

・傍観神テラムノスの加護

(土と無を司る神)

・破壊神ユラピアスの加護

(光と聖を司る神)

・自然神ムルーティアの加護

(自然を司る神)

・海洋神ウォルピウスの加護

(水を司る神)

・電雷神サンディウスの加護

(雷を司る神)

・氷雪神アイシウスの加護

(氷を司る神)

・時空神マグナドクの加護

(時間を司る神)

・亜空神セムナドクの加護

(亜空を司る神)

・魔法神テルベスの加護

(魔法を司る神)

・武闘神ゼムノスの加護

(武術を司る神)



――――――――――――――――――――


「「!?!?!?」」


凄まじい迄の阿呆を見せていることをアブはまだ知らない。

このステータスを見た両親は震え上がり、あんぐり開いた口を戻すのも忘れ、アブの方を見る。


「な、なん…なんだい?このステータスは!?まるでバケモノを名乗っているのと同じじゃないか!アイテムボックスに鑑定、それに全ての神の加護を持っているだと!?」


「アブ、貴方は神の子の生まれ変わりなの?

人間である貴方が何故、光属性や聖属性を使うことが出来るの?」


「アブ、だから強かったんだ。そりゃ勝てないわけだよ」


「それによく見たら、Lv286とはどう言う…魔力も無限だと言うし……」


「レベルは特殊魔力の所為かと。獲得した経験値の20万倍が反映されることになっていたので」


「「「………!?」」」


全員、もう言葉のひとつ絞り出すことも出来ない。

今まで育ててきた家族が桁違いの能力を持っていたらそうなるのも仕方が無いだろう。


だが、その原因はこのアブだ。

アブは調べるという簡単なことを怠ったのだ。

神族の称号やあからさまな特殊魔力諸々は隠したものの、スキルについているレベルの意味、適正魔法属性の見落とし、弄ることすら出来なかった能力値。加護なんかは関係ないだろうと高を括っていたこと。

その全てが仇となり今、微妙な食卓を作り出している。


「あなた、どうしましょうか。アブのこのステータスのこと」


「勿論、口外は厳禁だ。アブ、よく聞きなさい。このステータスがどこからが漏れてしまった場合、一生を国の管轄としてその身を置かなければならないかもしれないのだよ。

この言葉の意味、分かるよね?」


「へ?アブ、王国の管轄なの…?」


ダメだこの姉。バレたらの話に決まっているだろう。


「だから、ユリーナも話してはいけないよ。

このステータスについては」


「うん…」


その後は誰も、一言も言葉を発すること無く朝食を食べた。

味なんて感じなかった。



そして母さんから準備をするよう言われ、顔を洗い髪を整える。

外に出るともう既に馬車が来ており、手招きされ乗り込む。


「宿とは反対側なんですねぇ」


「でも、歩いていく訳には行かないんだよ?」


見透かされていたのか。

いちいち馬車に乗るのが面倒だと言うことを。


そして連れてこられた服屋の中に入る。

貴族御用達の商会なのか、宿と似た雰囲気が漂う高級感あふれる店構えだ。

2階に連れてこられると、色々な服が並んでいる。


「色々着付けてみないとね」


母さんの浮かべるその笑みに、背中に悪寒が全力疾走するのがハッキリとわかる。


ユリーナ姉さんは憐れむような目で見つめてくるが、ミーナ母さんの「ユリーナもよ?」

という一言で顔の全パーツが引き攣っている。


色々な服を着させられるがどうもしっくりこないらしく、「これも違う、こっちもダメ」とえんえん同じことを繰り返している。

どうも違いがわからない自分たちには苦痛でしかない。

1時間かかってやっとピンと来るものがあったのか、購入していく。


「終わっ「てないわ。次はユリーナよ」…」


思わず逃げ出そうとするも肩を掴まれる。


「アブ、待ちなさい。逃げようったってそうはさせないから」


流石は鋼鉄破壊の持ち主。掴む力が尋常じゃない。

そこから色々着ていくユリーナ姉さんを見たがどれも普段と大して変わらないものばかりだった。


2時間も掛けて着させて行ったのに結局買ったのは2着、俺のと合わせても3着しか買っていない。


そしてまた馬車に乗り込み、バルト領を目指す。






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