元神のステータス
「やっと着いた〜」
外を見ると目の前には城壁があり、門番で受付をしているマルクスの姿がある。
「今日はもう宿に行って、明日の朝、洗礼を受けに教会に行くから」
マルクス父さんにそう言われ、皆で宿に向かう。さっき言ってた貴族の仕事だ。
少しゆくと貴族用なのか派手な装飾をした建物に着いた。どうやら宿らしい。
「来ると伝えていたバルト領のものだが。」
『あ、ようこそおいでくださいました。マルクス様。ささ、お部屋はこちらになります。どうぞ。』
オーナーに通された部屋はなかなかに豪華なもので、平民ではいくら金を積んでも泊まることは出来ないらしい。
「ふぅ…つかれたぁ」
ソファに座り少し寛ぐ。
ミーナ母さんはもう既に眠気が最高潮なのかほぼ半分寝ている。
「そう言えば姉さん、姉さんのステータスって見れるの?」
「うん!見れるよ、見たいの?」
「うん、ちょっと気になって」
「【
魔力を使ったものなのだろう。
微弱だが、魔力を薄く広げたような感じだ。
――――――――――――――――――――
【名前】ユリーナ・バルト
【種族】人間族
【性別】女
【年齢】9歳
【称号】子爵家次女 アブ好き
【レベル】25
【体力】590
【魔力】115
【武力】465
【能力】A
【固有魔力】
【適正魔法】火属性
【スキル】剣闘術 Lv.5
【加護】武闘神の加護
――――――――――――――――――――
なんだアブ好きって。
これ多分気にしちゃいけないやつか。
でも、少し嬉しいかもしれない。
だが、気にしない。
「これって一般的に見て高いの?」
「村の中では高いらしいけど、他にも強いひとはいっぱいいるから分かんない」
そして次の日……
「よし、行こうか、アブ、ユリーナ準備して」
朝食を食べて寛いでいるとミーナ母さんから準備をするよう言われる。
ついに洗礼に行くのだ。
準備をすると、馬車が宿の前に来ているのでそれに乗り込む。
教会に行くのに馬車に乗る必要があるのか戸惑ったが、貴族は少しの移動でも馬車が必要みたいだ。特に他の地域では。
馬車が出ると、目と鼻の先にある教会には程なくして着いた。
「ここが教会……」
教会は真っ白な建物で派手過ぎず質素過ぎずを微妙に派手にしたような感じだ。
不思議と嫌いではない風貌をしている。
「やぁ、司祭殿。1年振りかな?前はエリックの時だったからね」
「えぇ、ご無沙汰しております。本日はアブスタール坊っちゃまの洗礼にございますかな?」
「あぁ、そうだ。アブ、この方はここの教会の司祭、ミルドレッド殿だ。
「アブスタール・バルトと申します。本日はよろしくお願いします」
「こりゃどうも、6歳とはとても思えない落ち着きっぷり、こちらこそ今日はよろしくお願いしますね」
そう言うと司祭はくるりと反対側を向き、教会内部へと案内する。
一番奥には階段があり、その上には3つ、何かが並んでいる。
「あの3つあるやつは?」
「あれは、この国のテルスコール教が崇める3神、左から傍観神テラムノス、創造主アムル、破壊神ユラピアス達の像です。」
そういう事か、ちょっと複雑だな。
だってどれも全然似てないんだから。
ていうかこんな所で崇められていたなんて初耳だ。
「てっきりメドゥーサにでもやられてしまっていたのかと」
変に空いた間を誤魔化すために適当なことを言うが、それが面白かったのか、司祭とマルクス父さんはずっと笑っていた。
「では、洗礼を始めます。」
「はい」
所作は事前に教えて貰っていた。
あとはそれを実行するのみ。
敷かれた絨毯を真っ直ぐ進み、階段を上がって3神の像の前で片膝をつき右手を心の臓あたりに添え顔を下げる。
「我らが崇める3神よ、アブスタール・バルトの6歳を祝い、洗礼を与えよ!」
司祭がそう言うと像がぼぉぉっと光り、少しして消える。
どうやらこれで終わりらしい。
そうしてまた、宿に戻される。
「アブ、ステータス見ようよ!」
ユリーナ姉さんに急かすように言われるが、ここで見せて果たして良いものか。
さっきユリーナ姉さんのステータスを見た時に【称号】というものがあった。
きっと自分が何者かそこに書いてあるはずだ。まだ確認できていないから余計に怖い。
自分が元神で、その上創造主だとバレたら教会に連れていかれる可能性だってある。
挙句一生教会や国の管理下に置かれ、死ぬ。
今度王都で開催されるパーティーとやらに出ることも出来なくなる。
ここの人達なら他言はしないだろうが、これまでと接し方が違ってくるのは火を見るより明らかだ。
だがもうどうしようもない。
さっきからユリーナ姉さんがずっと肩に手を置き離さない。
「どうしたの?アブ、大丈夫?」
察せ、バカ。
多分今、私の顔は真っ青だろう。
さすがにこんな所で偽装をすることも出来ない。
いっその事バラしてしまうか……?
「アブー、ユリーナ、もう晩御飯よ」
まずい。非常にまずい。
このまま行けばどうなるか。
夕食を食べる。すると、父さんからステータスを見せるよう言われる。母さんからも急かされ逃げることが出来なくなる。そして見せる。その後は想像出来ない。
もう仕方がない。諦めよう。
そしてユリーナ姉さんとダイニングに行き、
夕食をとる。
「アブ、ステータスを見せてくれるかな」
「えぇ、そうね、気になるわ」
完全に予想通りだ。私も遂にここまでなのか………
すると、
「父さん、母さん、アブさっきから顔も青いし具合が悪そうなんだけど……」
ユリーナ姉さんが急に入ってきてくれた。
しかも助ける方向で。
「んー、確かにそうだね、アブ、大丈夫かい?」
「いや、かなり……限界………。」
もう助けてもらうしかない。
「早く横になってきなさい、ユリーナ、連れて行ってあげて。」
「うん、アブ、大丈夫?」
「ありがとう」
そしてユリーナと寝室へ向かう。
「アブ、なんかあるんでしょ?ステータスの件で」
「え、え?何も無いけど。」
「嘘、だから助けてあげたのに」
「ごめん、姉さん。ありがと」
この人やっぱりいい人だった。
そしてユリーナはアブの頭を少し撫でたあと、部屋を出ていった。
アブはそのタイミングを見計らい、ステータスを確認する。
「【
魔力を込めて唱えると、目の前にステータスが表示される。
――――――――――――――――――――
【名前】アブスタール・バルト
【種族】人間族 神族
【性別】男
【年齢】6歳
【称号】子爵家次男 創造主 太陽の神
【レベル】286
【体力】2.958.000/2.958.000
【魔力】∞/∞
【武力】198.000
【能力】SSS+
【固有魔力】創造・固有魔力複写(幻影、感情吸収)
【適正魔法】火属性・水属性・風属性・土属性・氷属性・雷属性・無属性・自然属性・光属性・聖属性・闇属性・時空間属性
【スキル】
・魔力耐性Lv.30
・物理耐性Lv.30
・魔法能力Lv.30
・攻撃能力Lv.30
・鑑定
・アイテムボックスLv.30
【特殊魔力】
・創造主(魔力で大体のものを創造出来る)
・狙撃(あらゆる攻撃が必中する)
・経験値取得ボーナス(経験値取得時1000倍)
・Lv上昇率ボーナス(経験値反映率200倍)
・禁忌代償無効(禁術の代償を受けない)
・神族の呪い(洗脳を受けない)
・天界の覇者(他の神族、女神属からの攻撃を無効化)
・魔法攻撃反射(自分の致命ダメージを超過した魔法攻撃を全反射)
・変装(自身の思い通りの姿に変えられる)
【加護】
・
(炎と闇を司る神)
・
(土と無を司る神)
・
(光と聖を司る神)
・
(自然を司る神)
・
(水を司る神)
・
(雷を司る神)
・
(氷を司る神)
・
(時間を司る神)
・
(亜空を司る神)
・
(魔法を司る神)
・
(武術を司る神)
――――――――――――――――――――
こんなものか。
じゃない、ほんとに危なかった。
かなり強くないか?これは。
危うくマジで国の管理下に置かれるところだった。
というかいつの間にこんなにLvが上がっているんだ?
「もしかしてこの特殊魔力の2つのせいか?
1000倍して200倍すると、20万倍という事か。それならこのレベルでもおかしくない。」
はぁ、と溜息をつき、偽装工作を始める。
終わった頃には夜も更けていた。
だがいい感じに偽装できたので問題はなさそうだ。
ユリーナ姉さんには何か礼を求められるかと思うが、仕方の無いことだろう。
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