元神の洗礼へ

アブは6歳になった。

エリックは7歳、ユリーナは9歳、ルーシーは11歳だ。

この世界の人間は6際になると教会に行き、

洗礼というものを受ける。

剣や魔法がある以上、決して治安もいいとは言えないこの世界で、6歳になれた事を神に感謝する。と言った行事だ。

洗礼を受けると同時に個体能力ステータスというものも確認できるようになる。


そしてバルト家一行は今から隣町の教会へと向かおうとしているところだった。


「アブくんはどんなステータスになるんだろうね〜」


「加護とかが貰えることがあるんでしたっけ」


「うん!私は武闘神の加護を貰ったのっ」


「脳筋神と言った方が適切なのでは?姉さんみたく」


そんな会話をしながら馬車へと乗り込みそろそろ出発しようかというところ。

今回同行するのは、両親、ユリーナ、護衛騎士10名だ。

どこかの街に貴族が訪れる場合、ある程度の人数で行かないとその街にお金が落ちないのだ。

金を稼ぐだけでなく、経済を回していくのも貴族の仕事らしい。


「じゃ、出発するぞーっ」


馬車の中でゆらりゆらりと揺られながら2時間ほど経ったところで草原を見つけ、休憩となった。

着いた頃にはアブはユリーナの肩で寝ていたらしいが。


「じゃあそろそろ昼飯にするか!」


父さんの一言で我慢していた空腹が一気に襲ってくる。

それはユリーナも同じだったのだろうか結構喜んでいるみたいだ。


昼食はパンとスープの予定だったが、ユリーナ姉さんが肉が欲しいと駄々を捏ねたため

急遽ホーンラビットの肉が追加されたらしい。兎肉と言うらしいがさっぱりした感じの肉だった。スープを飲み干すとユリーナ姉さんから声がかかった。


「「稽古しよ!」ですか……?」


見事に声が重なる。

ユリーナもこの言葉の意味がわかったのか

いつもの押し方に声を変える。


「やろうよぉ〜、1回だけだしさ〜」


「いっつも負けてるじゃないですか。それも末っ子に…」


でも日に日に腕が上がって言っているのは確かだ。

ユリーナなりに何かを掴んで自分の力とすることが出来ている証拠だ。

だが1歩及ばないあたりが弱いところなのだろう。


「じゃあいいですよ?1回だけなら。」


「ほんとっ!?やったっ!」


「でーすーが、これに負けたらもう二度と勝負をふっかけてこないと約束して貰えますか?」


「やっぱいい」


くそっ…これで上手く言質をとってやろうという完璧な作戦が…。


「はい、もう出発するよ?」


「「はーい」」


父さんから声がかかり馬車の方を見る。

父さんと母さんはもう既に馬車に乗って待機している。


「行こっか」


「うん」


そうして馬車に乗り、日も傾き始めた頃に隣町に着いた。






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