第七話 火龍
天下人 豊臣秀吉は今わの際に至るまで織田信長の描いた覇道を
「広秀!お前はこの茶番に関わるんやない!」
着流しの襟を乱し声を荒げる惺窩の進言に広秀は耳を貸さない。
「惺窩さん暫しの間この獅子王を預かっていただけませんか?」
「お前はいつも大事な話を
「家康さんのお話は大変楽しいものでした。しかし私には護るべきものがあります故、どうかお引き取りを」
流浪に身を置く惺窩は続ける言葉を失い、それが広秀と惺窩の今生の別れとなった。
義に生きた赤松広秀は盟友 石田三成率いる豊臣方の西軍に就き、大義に生きた徳川家康は東軍を率いた。
広秀は西軍の軍計から細川幽斎が立て籠る丹後田辺城(京都府舞鶴市)を包囲する軍に名を連ねこれを開城させた。しかしその二日後に関ヶ原で火蓋の切られた本戦では西軍の小早川秀秋が東軍に寝返り戦局を歪めると、
このとき確かに徳川家康は時代に選ばれたが、この一局 家康布石の一手は石田三成が着座する遥か昔に盤面の外から打たれていた。
関ヶ原以後も反徳川の残り火が諸国に
その竹田城に豊臣家と袂を分かち関ヶ原では徳川に
堅牢な鳥取城の籠城に万策尽きた亀井茲矩は広秀の到着を見計らうと城下に火を放ち狂気の焔で地獄絵図を
しかし広秀には亀井が己を利用するであろうことが見えていた。亀井茲矩が赤松広秀を知るように、赤松広秀もまた亀井茲矩を知っていた。亀井の使者が竹田城に駆け付けたとき広秀は時代に課された己の役回りを悟り、鳥取の町が狂火に焼かれるその様を己が
そして赤松広秀に徳川家康から切腹の沙汰が下される。
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