壊れたラジオから内臓の蠢く音が聞こえる

はな

おはなし

 これは僕が小学生の頃のお話です。


 学校に通う僕を、母が毎朝起こしに来てくれていました。最初は、目覚まし時計を使っていたのですが、止めたあとにまた眠ってしまうので、しょうがなく母が起こしに来るようになったのです。


 母はとても優しい人で、怒ることは滅多にありませんでした。父は僕が小さい頃に亡くなってしまったので父のことはよく覚えていません。


 僕はそんな母の作る朝ごはんが大好きでした。朝ごはんは基本的にパンとベーコンの付いた目玉焼きで、飲み物は牛乳です。


 中でも大好きだったのがパンに塗る母特製の苺ジャムです。母はパンをナイフで食べやすいサイズに切ってくれました。


 そのナイフでしっかりとバターを付けてパンに塗る。僕はそのパンが大好きだったのです。


 ぺろりと平らげてしまった僕は、玄関から出て急いで学校へと向かいます。


 外は既に暗闇に包まれており、街灯が灯り始めていました。無理もないでしょう。既に時刻は午後の6時を回っていたのですから。


 僕は重いランドセルを背負って急いで学校へと向かいます。遅刻をすると先生に怒られてしまうので、それはなんとしても避けたかったのです。


 僕は息を切らしながら暗闇の中を走っていました。いつも歩いている道なのに、暗いせいかなかなか学校へとたどり着くことが出来ません。立ち止まるなんて出来るはずもなく、僕はただ走り続けました。


 気が付いたら僕は見知らぬ山の中に迷い込んでしまっていました。真っ暗な山の中はしんと静まり返っており、いつもの遊び場のはずなのに不気味な雰囲気が漂っていたのです。


 草木を踏む僕の足跡だけが山の中に響きます。辺りは真っ暗で何も見えません。何処から入ったのかも、何処が出口なのかも分からず、僕はついに泣き出してしまいました。


 そんな泣いている僕に声を掛けてくれたのが、香織ちゃんでした。友達と喧嘩して泣いて逃げてきた僕を励ましてくれるのですが、男の子として、ちょっと恥ずかしかったので、つい香織ちゃんには冷たい態度を取ってしまいます。


 それでも香織ちゃんはめげることもなく、僕に話しかけてきてくれます。そんな毎日を繰り返していくうちに、僕と香織ちゃんはいつの間にか一番の友達になっていました。


 そんな香織ちゃんと僕は近所のお祭りに行こうと約束をしたのです。前日、僕はなかなか寝付けずにいました。そのせいで次の日に目覚めたのはお昼になってしまいました。僕は急いで支度をします。香織ちゃんに会ったら謝ろう。そう思いながら玄関を飛び出しました。


 休むことなく走り続けたにも関わらず、学校についた頃には既に授業が始まっていました。僕は遅刻をしてしまったのです。案の定、僕は担任の先生に怒られてしまいました。


 家に帰ると、父と母が深刻そうな顔をして玄関で僕を待っていました。僕は何かあったのかな? と疑問に思い、父親に訳を聞きました。香織ちゃんは今日の午前中、近所のお祭りに向かう途中でトラックに轢かれて死亡してしまったそうなのです。見るも無残な光景で、足の皮膚が丸ごと剥がれ、筋肉や骨が見えてしまっているほどでした。あたりには大量の血が流れ、肉細工が散らかっていたようです。


 僕は信じられませんでした。さっきまで僕と香織ちゃんは一緒に祭りを見て回ったのです。お話だってしたし、金魚すくいも一緒にやりました。帰るときだって途中まで一緒だったんです。僕は両親にそんなはずはない、といくら説明しても信じてもらえませんでした。


 香織ちゃんを家に連れてきてどうにか信じてもらおうと、僕は再び家を飛び出しました。


 外は既に暗闇に包まれており、街灯が灯り始めていました。無理もないでしょう。既に時刻は午後の6時を回っていたのですから。


 僕は泣きながら音もしない、真っ暗な山の中を歩いていました。そんなとき、僕は棒のようなものに足を引っかけて転んでしまいました。一体何に足を引っかけてしまったのだろう、振り返って確認すると、そこには腐敗の進んだ中年男性の死体が地面に横たわっていたのです。


 顔は茶色に汚れており、表情が不気味に歪んでいたのを今でも覚えています。僕は背筋に冷たいものが走り、今すぐここから立ち去った方がいい、そう心の中で何かが告げていたのです。僕は急いでその場から離れようと立ち上がります。しかし、走り出そうと力を込めた足を何者かに掴まれてしまいました。僕は再び地面に倒れ込んでしまいます。その時の僕は、わけも分からず、涙や土で顔がぐしゃぐしゃだったと思います。


 そんな僕の体を揺する感覚を背中で感じ、僕は目を覚まします。そうです。母が毎朝起こしに来てくれていました。最初は、目覚まし時計を使っていたのですが、止めたあとにまた眠ってしまうので、しょうがなく母が起こしに来るようになったのです。


 僕は着替えをすませると、2階から降りて朝食を取ろうと1階へと向かいます。


 階段を降りると、そこには少女だったものが横たわっていました。それは見るも無残な光景で、足の皮膚が丸ごと剥がれ、筋肉や骨が見えてしまっているほどでした。


 僕は、急いで朝食を取ることにしました。遅刻をすると先生に怒られてしまうので、それはなんとしても避けたかったのです。


 慣れないナイフとフォークを使って、僕は目の前にある香織ちゃんを食べます。僕はそんな母の作る朝ごはんが大好きでした。


 ぺろりと平らげてしまった僕は、玄関から出て急いで学校へと向かいます。


 学校へと向かう途中、僕は香織ちゃんとばったり出会ってしまいました。女の子と登校するのは、男の子として、ちょっと恥ずかしかったので、つい香織ちゃんには冷たい態度を取ってしまいます。


 それでも香織ちゃんはめげることもなく、僕に話しかけてきてくれます。そんな毎日を繰り返していくうちに、僕はいい加減疎ましく思ってきて、持っているナイフで香織ちゃんを刺し殺してしまいました。


 あたりには大量の血が流れ、ナイフにもべっとりと赤黒い血が付いています。そのナイフでしっかりとバターを付けてパンに塗る。僕はそのパンが大好きだったのです。


 僕は人を殺してしまったのです。逃げなきゃ捕まる。そんな恐怖に駆られ、僕は逃げることにします。


 僕は息を切らしながら暗闇の中を走っていました。立ち止まるなんて出来るはずもなく、僕はただ走り続けました。息も切れて限界を感じ始めた僕がようやく辿り着いたのは、放課後によく遊んでいた公園でした。


 公園はしんと静まり返っており、いつもの遊び場のはずなのに不気味な雰囲気が漂っていたのです。風もないのに揺れていたブランコに僕は座り、次の日、香織ちゃんに会ったら謝ろう。そう思いながら玄関を飛び出しました。


 家に帰ると、父と母が深刻そうな顔をして玄関で僕を待っていました。僕は何かあったのかな? と疑問に思い、父親に訳を聞きました。香織ちゃんは今日の午前中、学校に向かう途中でトラックに轢かれて死亡してしまったそうなのです。見るも無残な光景で、足の皮膚が丸ごと剥がれ、筋肉や骨が見えてしまっているほどでした。あたりには大量の血が流れ、肉細工が散らかっていたようです。


 無理もないでしょう。僕が轢き殺してしまったのですから。僕はそのことを両親に話しました。なのに、両親は泣きながらそんなはずはない、といくら説明しても信じてもらえませんでした。


 僕は重いトラックを運転して学校へと向かいます。遅刻をすると先生に怒られてしまうので、それはなんとしても避けたかったのです。


 急いでいたからでしょうか、前方にいる人間に気付かず、僕は人を轢いてしまいました。急いでトラックから出て確認すると、そこには腐敗の進んだ中年男性の死体が地面に横たわっていたのです。


 それが父の亡くなった交通事故でした。


 顔は茶色に汚れており、表情が不気味に歪んでいたのを今でも覚えています。僕は背筋に冷たいものが走り、今すぐここから立ち去った方がいい、そう心の中で何かが告げていたのです。僕は急いでその場から離れようと立ち上がります。


 走るのに疲れ切った僕は、家に帰ることにしました。家には明かりが灯っており、母が仕事から帰って来ているようです。


 家に入ると、ちょうど母が晩御飯の支度をしているところでした。台所からはカレーの匂いが漂ってきています。母は僕が家に帰ってきたことに気が付くと、門限を過ぎて帰ってきたことに対して激しく怒り始めました。


 次第に怒りの炎が激しくなってきた母は、煮込んでいたカレーの鍋を僕に向かって投げつけてきます。中身がこぼれ、熱いカレーが僕の身に降りかかり、僕はついに泣き出してしまいました。


 火傷を負った僕は、病院へと連れて行かれました。母は泣きながらごめんね、ごめんねと何度も繰り返していました。痛みはそれほど感じませんでしたが、僕の体には火傷の痕が大きく残ってしまいました。


 それからです。僕が学校で虐められるようになったのは。虐めは陰湿なもので、火傷の痕のことをからかったり、物を隠されたりしました。次第に虐めはエスカレートしていき、みんなが僕を無視するまでになっていってしまったのです。


 僕は香織ちゃんが好きでした。そんな香織ちゃんまでも無視するようになってしまったのです。


 僕は泣きながら家に帰っていました。母に泣いていることが見つかるのは嫌だったので、仕方がなく公園で時間を潰すことにしました。


 公園はしんと静まり返っており、いつもの遊び場のはずなのに不気味な雰囲気が漂っていたのです。風もないのに揺れていたブランコに僕は座り、時間を潰していると、空はいつの間にか暗くなってきていました。


 家に帰ると、母は晩御飯の支度をしているところでした。台所からはあの時のようにカレーの匂いが漂ってきています。母はまだ僕が家に帰ってきたことに気がついていません。


 僕は炊飯ジャーに付いているコードを取り外し、僕は母の後ろから静かに近づいて、そのコードで母の首を絞めつけます。母は苦しそうな顔をして、泣きながらごめんね、ごめんねと何度も繰り返していました。心の痛みはそれほど感じませんでしたが、僕の体には火傷の痕が大きく残ってしまいました。


 母はとても優しい人で、怒ることは滅多にありませんでした。


 学校に通う僕を、母が毎朝起こしに来てくれていました。最初は、母を使っていたのですが、止めたあとにまた眠ってしまうので、しょうがなく眠ることにしました。


 朝ごはんは基本的にパンとベーコンの付いた目玉焼きで、飲み物は牛乳です。


 中でも大好きだったのがパンに塗る母特製の母ジャムです。僕は母をナイフで食べやすいサイズに切って食べます。


 そのナイフでしっかりと血を付けてパンに塗る。僕はそのパンが大好きだったのです。


 ぺろりと平らげてしまった僕は、玄関から出て急いで山へと向かいます。


 外は既に暗闇に包まれており、街灯が灯り始めていました。無理もないでしょう。既に時刻は午後の6時を回っていたのですから。


 僕は重いランドセルを背負って急いで学校へと向かいます。


 僕は息を切らしながら暗闇の中を走っていました。いつも歩いている道なのに、暗いせいかなかなか墓場へとたどり着くことが出来ません。立ち止まるなんて出来るはずもなく、僕はただ走り続けました。


 気が付いたら僕は見知らぬ山の中に迷い込んでしまっていました。真っ暗な山の中はしんと静まり返っており、いつもの遊び場のはずなのに不気味な雰囲気が漂っていたのです。


 草木を踏む僕の足跡だけが山の中に響きます。辺りは真っ暗で何も見えません。何処から入ったのかも、何処が出口なのかも分からず、僕はついに泣き出してしまいました。


 僕は泣きながら音もしない、真っ暗な山の中を歩いていました。そんなとき、僕は棒のようなものに足を引っかけて転んでしまいました。一体何に足を引っかけてしまったのだろう、振り返って確認すると、そこには僕が殺した人たちが転がっていました。


 顔は茶色に汚れており、表情が不気味に歪んでいたのを今でも覚えています。僕は背筋に冷たいものが走り、今すぐこ・こ・か・ら・立ち去った方がいい、そう心の中で何かが告げていたのです。僕は急いでその場から離れようと立ち上がります。


 どれだけ歩いたのでしょうか。僕は山のかなり高いところまで登って来ていました。遠くに町の光が見えます。僕はそこで穴を掘り、ランドセルから頭部や骨を取り出して、その穴に埋めます。その時の僕はわけも分からず、涙や土で顔がぐしゃぐしゃだったと思います。


 休むことなく走り続けたにも関わらず、学校についた頃には既に授業が始まっていました。僕は遅刻をしてしまったのです。案の定、僕は担任の先生に怒られてしまいました。


 だから僕は頭の中から骨が砕ける音が聞こえてきました。うるさかったです。

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