第56話 7月29日 3
旅館の部屋で少し休憩した後、俺たちはさっそく海へ行くことにした。
ビーチ近くに設置されたプレハブ小屋のような更衣室で、水着に着替える。
先に着替え終わった俺は、男子更衣室を出て沙空乃と陽奈希を待っていた。
「二人はどんな水着を着てくるんだろうな……」
旅行の何日か前に水着を買いに行ったこと自体は知っているが、その場に俺はいなかった。
どんなデザインか興味はあったのでそれとなく聞いてみたが、当日までのお楽しみだとはぐらかされてしまった。
……実際、想像を膨らませて楽しみにしている俺がいるんだけど。
沙空乃は綺麗系の水着を選ぶイメージがある。
陽奈希はどちらかと言えばかわいい系の水着だろうか。
この日に備えてしっかり体を絞ってきた、なんてことを言っていたので、そこそこ露出多めな水着を選んでくる可能性が高い。
……まあ、どんな水着だろうと沙空乃と陽奈希の容姿なら注目を浴びるのは間違いないだろう。
「お待たせしました」
「お待たせー」
そうこうしている内に女子更衣室から出てきた二人に、俺は思わず見惚れてしまった。
沙空乃はフリルがあしらわれたかわいらしい空色の水着を着ている。
一方、陽奈希はすらっとしたシンプルなデザインの黒いビキニを着ていた。
どちらも体のラインがはっきりと分かるセパレートタイプの水着だが、二人とも素材が最上級なので見事に着こなしている。
「二人ともよく似合ってる……けどイメージと真逆の水着だな?」
沙空乃と陽奈希、逆の水着を着ていた方が、個人的にはしっくりくる。
大体どんな水着でも似合ってしまうのは、さすがの美少女ぶりだけど。
「さすが渉、よく分かってるね」
「実は直前で、お互いが買ってきた水着を着ることにしたんです」
「なるほど、そういうことか」
「フリフリした沙空乃もかわいいでしょ?」
「確かに」
視線を向けると、沙空乃は照れ臭そうに目を逸らした。
フリルではなく迫力のある胸元に視線が吸い寄せられそうになるが、我慢する。
……ここで興奮してしまったら一目でバレるからな。
「でも、沙空乃は案外平然としてるな」
最愛の妹の水着を着るとか嬉しいシチュエーションじゃないのか。
その割に興奮していないな。
暗にそう問いかけると、沙空乃にも意味が伝わったらしい。
「だって、これ新品ですからね」
「……なるほど」
妙に納得してしまった。
「でも陽奈希が選んでくれた水着を着るのは、とても素敵だと思います」
「わたしも、沙空乃が選んだ水着を着るのはいつもと少し違う感じがして新鮮だよ?」
多分、陽奈希は最初から交換するつもりだったんだろうな。
○
叔父が運営する海の家でパラソルを借り、ビーチにやってきた。
予想通りではあるが、沙空乃と陽奈希は他の海水浴客から男女問わず注目を浴びていた。
人の彼女にあまり不躾な視線を向けるなと言いたいところだが、本人たちはあまり気にしていない様子だ。
他人からの視線には慣れている、ということだろうか。
むしろ人目が気になるのは俺の方だ。
周囲の人々……主に男性の客から「あいつはあの美少女二人とどういう関係なんだ」という刺さるような視線が向けられている気がする。
……俺の方も、慣れるしかないか。
俺は砂浜にパラソルを設置し、レジャーシートを敷いて自分たちの場所を確保する。
作業を終えて一息つくため、レジャーシートに腰を下ろす。
「さて、渉くん」
「どうした、沙空乃」
「私たちに日焼け止めを塗ってください」
「……マジか」
俺は呆然と水着姿の沙空乃と陽奈希を見上げた。
「私たちは双子なので、お互いに塗り合ってもよかったのですが……」
「渉にも、楽しみを残しておいた方がいいかなと思って」
「陽奈希に塗る栄誉を特別に譲ってあげるので、感謝してくださいね」
自分から頼んでおきながら妙に恩着せがましくないですか、沙空乃さん。
「わたしたち、肌が白くて日差しには弱いから、入念に塗ってね?」
大胆なことを言いながら、陽奈希は持ってきたバッグから日焼け止めを差し出してきた。
……恋人たちにここまでお膳立てをされて、断る男がどこにいるだろうか。
俺は陽奈希から日焼け止めを受け取った。
その後、俺は理性を保つのに必死だった。
二人に日焼け止めを塗ったが、感触はよく覚えていない。
◇◇◇◇◇
どうもりんどーです。
前回から少し間が空いてしまいすみません。
次回も水着回になると思います。
今週の日曜に更新できたらいいなと思っていますが、来週にズレるかもしれません。
また、別件となってしまい恐縮ですが、最近新しいラブコメを始めたのでこちらもぜひどうぞ。
「異世界転生」「両片思い」「学園ラブコメ」がテーマですがファンタジー要素はほぼないです。
「異世界貴族に転生して15年、犬猿の仲のクラスメイトが婚約者に転生していた事実に気づきました」
https://kakuyomu.jp/works/16817330651442575319/episodes/16817330651442750363
間違えて好きな人の双子の妹に告白したら付き合うことになりました りんどー @rindo2go
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。間違えて好きな人の双子の妹に告白したら付き合うことになりましたの最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
同じコレクションの次の小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます