6月20日(木)

 翌日。「良い子」はもう、どこにもいなかった。




 クラス中の「頼み事」を全て放棄し、文化祭をサボる宣言を声高々に掲げ、机事件の主犯格である女子達にビンタをかまし、放課後は美術部で絵を描く、天邪鬼がそこにいた。

 



 あの夜、淳子の家に向かうと彼女は紐を持って立ち尽くしていた。


 僕はとにかく後ろから抱きしめ、無言のまましばらく離さなかった。


 ここでは言えないような事も、ちょっぴりだけ行い、恥ずかしい言葉も言った。



 そして、お互いもう嘘はつかないと約束をして、今に至る。



 僕の方はというと、佐々木に訳と全ての顛末を真摯に説明し、黄色い百合が出てくるアニメのブルーレイボックスをおごるという事で、許しを得る事ができた。



 僕らの秘密は、この日を境に全部なくなった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

頼み事 ルム @lmu_poplife

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ