Act23.声優 御堂姉妹の副業 Part2
中には沢山の封筒や、プレゼントと思われる包装された箱が幾つもある。
封筒を見ると宛名が御堂永遠となっている。
「これは朱理さん宛てに届いたものです。正直、同じ期間で比べると、刹那に来た量より多いんです」
好恵が満面の微笑みを浮かべるが、刹那は少しへこんだ顔をしている。
そう言えば、朱理がアークソサエティから身を隠すため、御堂刹那の妹としてイベントに参加したと聞いている。
「単刀直入に言います、朱理さんをブレイブに預けていただけませんか?」
「えぇッ?」
こういう話になるとは想像していなかった。こんな事なら、思考を読んでおけば良かった。
「せっかくのご提案ですが、ご存知の通り朱理は修行中ですので……」
「はい、存じております。ですから、期間限定の活動を考えています。先ず冬休みはいかがでしょう。もちろん、勉学に支障が来さないよう、スケジュールは調整します」
「と、言われても……」
「当面はあたしと一緒に、声優見習いとして活動します。それなら舞台上でも、永遠……朱理さんも安心だと思います」
「遙香さん、念のため申し上げますが、ブレーブは所属タレントを守ります。枕営業などは絶対にさせません」
遙香は困って、弟に視線を向けた。
「中川社長、御堂と一緒に活動と言う事は、副業もやらせるという事ですか?」
「さすが鬼多見さん、こっちの考えはお見通しね」
遙香は内心舌打ちした。本当に験力を使っていれば良かった。この社長、相当のタヌキだ。
「残念だけど、それはさせられない。朱理の験力は御堂より強いが、まだまだ不安定だ。先月協力させたのは、あくまで非常事態の特例です」
「悠輝、中川さんは、あんたも専属アドバイザーとして同行させるつもりよ」
「え? ってか姉貴、社長の考えを読んだのか?」
「ええ。あたしは早紀ちゃんに謝罪しに来たはずなのに、いつの間にか朱理のスカウトに変わっている。これ以上、振り回されるのは御免よ」
「驚かせるつもりは無かったのですが」
好恵は申し訳なさそうな顔をする。
「それはウソ、相当楽しんでますよね」
「かないませんね、貴女には」
そこで好恵は真顔に戻った。
「もし、朱理さんをお預かり出来るのでしたら、刹那の妹としてデビューさせます。つまり、私の姪として特別扱いをします。ギャラも歩合制ではありません。これをやると荒木がいい顔をしないんですけどね」
「当然です、他のタレントに示しがつきません」
でも、内心は口で言っているほど反対していない。
朱理本人はどう思っているのか。
考えが読めない、これも修行の成果だ。無理やり読む事も可能だが、本人の口から言わせよう。
遙香は振り向いて朱理を見た。
「わたし……やり……たい。ううん、やりますッ。
だから、いいでしょ? お母さん」
驚いた、人見知りの激しい娘が人前に出る事をしたがるなんて。
「私からもお願いします、遙香先輩」
「あたしも、朱理さんともう一度仕事を、もう一度姉妹になりたいです」
早紀と刹那も頭を下げる。
「責任は私が持ちますので、どうか御検討願います」
好恵も深々と頭を下げた。
悠輝が溜息を吐いた。
「どうする、姉貴?」
「あんたはどうしたいの?」
「正直、乗り気じゃない。でも、朱理が験力の修行以外で、積極性を見せるのは久しぶりだ。
副業の方は、ギャラ次第だな」
「ビジネスを忘れないですね?」
「生活が苦しいので、どさくさ紛れにギャラを減らされると困るんです」
もう答えは出ているか。
「わかりました。中川社長、早紀ちゃん、そして刹那さん、娘をよろしくお願いします」
今度は娘のことで遙香は再び頭を下げた。
「はい」
「先輩、ありがとうございます」
早紀が礼を言い終わらないうちに、刹那が飛び出して、朱理を抱きしめた。
「よかったね、永遠! これからも姉妹よッ」
「うん。姉さん、改めてよろしく」
娘と刹那が笑っている、それを見て早紀も笑顔になっている。
ふと、自分の心が軽くなっているのに遙香は気が付いた。
英明と紫織、そして法眼がこの事を聞いたら何と言うだろう。
紫織はともかく、男性二人が反対したら、今度は自分が説得しなければならない。
一難去ってまた一難か。
そう言えば、刹那が朱理の姉という事は、自分は刹那の母という事なのだろうか?
刹那の妹だから、むしろ朱理が娘ではないという事になるのか。それはそれで淋しい。
だが、精一杯応援してやろう。自分とは違う人生を朱理に歩ませるために。
― 終 ―
声優 御堂刹那の副業 大河原洋 @okawara_hiroshi
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