エピローグ

 一週間休んでから受けた期末試験の結果は散々だった。

 担任は、インフルエンザじゃ仕方ない、と言ってくれたが、結局赤点補習組の一員として、冬休みの数日を返上して学校に来ていた。


「お前も災難だったな。こんなタイミングでインフルエンザなんて」

 友人が慰めの言葉をかけてくれた。一番最初に俺の偽物を見つけた奴だ。

「まあ、仕方ないさ。おかげで開き直って補習は集中できたし」

 心配事がなくなったことで勉強に集中できるようになった。補習組の中では断トツの成績を収めた。本番でこの点数が取れていれば学年全体でも上位に入れる点数だ。

「ふーん、ま、たしかにすっきりした顔してるよな」

 偽物を見つける前、俺はほとんどの記憶を吸い取られ、抜け殻のようになっていた。自分がどこを歩いているのか、なぜ歩いているのかも分かっていなかった。あのとき偽物の方から現れなければもう戻れなかっただろう。


 友人と補習終了記念にファストフード店に寄って、ボックス席でハンバーガーとポテトを貪る。友人がトイレに行っている間、なんとなく窓から外を見ていた。

 たくさんの人が行き交う。窓には反射した俺の姿も映っている。

 反射した俺の姿に人影が近づく。友人が戻ってきたのか。窓越しには顔がよく見えない。人影は席には座らず、僕の肩に手を置いて言った。


『見つけた』

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自分探し 暗藤 来河 @999-666

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