第7話

「おかえり」

帰宅すると優介がキッチンで何か作っていた。

「ただいま。何作ってるの?」

「他人丼。いろはみたいに上手には作れないけど」

「珍しいね。いつももっといいもの作るのに」

「他人丼だって美味しいよ。ちょうど出来たとこなんだ。テーブルに運ぶね」

「ありがとう」


美味しいね。

そう言ってからは2人とも無言で食べ続けた。

本当に、他人みたい。

いつからこうなってしまったのだろう。

悲しい気持ちで、そっと優介の顔を見てみると涙を流していた。

私は驚いた。

「どうしたの?」

優介は首を横に振った。

「何でもない」

彼女と何かあったんだ。

「彼女と何かあったの?」

「え?」

一言言うと止まらなくなった。

「知ってるんだよ、全部。毎週日曜日は彼女と会ってるんでしょう?知らないとでも思った?」

優介は困ったような顔をした。

何であなたが困るのよ。

こっちはもうずっと眠れなくて困ってるのよ。

「いつから?」

「そんな事聞いて何になるの?あるのはあなたが不倫しているっていう事実だけよ」

私は席を立って玄関へ向かった。

「こんな時間にどこ行くんだ」

「あなたのいない所よ」

私は部屋を出た。


私は行くあてもなく夜の道を歩いた。

朝が来るまで。

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雨のち晴れ ひろ @hirose0308

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