ちるはな
まぐ
第1話
だるい毎日だ。学校は遠くて、気温は高くて、湿度まで高い。だいたい、夏休みの補修なんか誰が真面目に行くんだよ。もう夏休みなんだよ!?学校なんか行きたいわけないだろ。そう思って足を速め、暑さから逃げるようにブロック塀の角を曲がろうとしたとき。
「おはよ」
彼女の、声がした。柔らかくて温かい声。「おはよう」ときちんと発音はしないけど、それでも誠実さが伝わるような丸みを帯びた声。
「あ、おはよう…」
低い声でかえす。
「どしたのー?髪の毛ぼさぼさだよ!」
いや、どしたのー?じゃないよ。補修が嫌じゃないのか!
「髪は…学校で直すよ」
もうどしたのー?には触れないでおこう。
「せっかく綺麗な髪なんだからちゃんとしなねー」
「…うん」
みつばちゃんの方が綺麗じゃないか。色素が薄くて、先にいくほどぱさぱさして、細くなって、やわらかくなる髪。前髪がちょっと内巻きなのは、家でこてあてたんだろうな。いいな、可愛い子に生まれたかった。
「あ、がっこう!」
もう着くよ、と言いたげだ。こっちは着きたくないのに。
…その「着きたくない」が、補修が嫌だからなのか、もっとみつばちゃんと一緒にいたかったからなのか、この時の私はまだ知らない。
ちるはな まぐ @nenesama
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。ちるはなの最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます