第21話 自主経路

 今回は自主経路について語ろうと思う。

 初めての自主経路。

 指導員は姉御風の女性指導員だった。

 第一段階と第二段階の駐車と停車でお世話になっている。

お姫様のような容貌で、髪の毛は長く、カールがかかっていて綺麗にそろえられている。

 俺は彼女にピーチという愛称をつけた。

 一応第一段階と第二段階の駐車と停車でお世話になっている。

はじめての自主経路ということで、簡単な説明を受ける。

 自主経路と言っても完全にフリー走行ではないので、

その辺は安心した。

 自主経路は目的のコースのスタート地点からゴール地点までが設定されており、そのコース間を右左折一回以上で自主的に走行するものらしい。

 「じゃああたい何も言わないから、

 一時間ずっと自由に走り続けてね」

 とか言われたらどうしようかと思っていたが。

 さっそくいつものように大通りを50キロで爆走し、指導員の指示に従って左折する。

 左折した先の道路は大通りよりも細く、速度標識もない。

 俺は何も考えず、無難に50キロほどで走行を続ける。

 と、おもむろに俺の名を呼ぶピーチ。

 何事かと彼女の方を向く俺。

 「段さん、一つだけ、いいかしら」

 「なんですか?」

 「ここ、60キロ道路なの」

 「な、なんだってー!!」

 そっそんな馬鹿な、標識が無いのに・・・

 「速度標示がないところは60キロで走るのよ」

 「な、なんだってー!!」

 おっおそるべし交通社会。

 そんなこんなでスタート地点に到着。

 第二段階の学科「自主経路」でもらった地図を頼りにゴール地点までの経路を探す。

 ・・・とはいっても道は単純で、左折して大通りに出て右折するだけであった。あれ、楽勝じゃね?と思いつつ自主的に走行。難なくゴール。かなり時間を余らせてしまった。

 と、そこへまた指導員が僕に話しかけてくる。

 「ここ卒業検定用コースだったんだけど、廃止されたの。」

 「な、なんだってー!!」

 教習所によるのかもしれないが、ここの自主経路は基本的に卒業検定コースを走るそうだ。

 そして、俺の自主経路体験、本当の戦いはまさにここから始まったのである。


 危険予測ディスカッション後、二度目の自主経路へ。

 「いいかい。自主経路っているのはね、

 全ての教習の総仕上げだからね。もちろん危ないときは指示を出すけれど、基本的には段さんが自主的に運転していってほしいんだよね。この段階まできて、指導員に補助されるようでは駄目だよ。だから主体的に運転していってね。」

 と、初対面の強面のおっさん指導員にやたら可愛らしい声で捲くし立てられた。

 そっそんなこと言われなくてもわかってらあい! と思いつつ、やはり自主経路は緊張する。

 とはいっても前回と同じく、コースのスタート地点に着くまでは指導員の指示に従って運転し、スタート地点直前で停車してルートを確認、指導員にルートを伝える。

 右左折一回以上でゴール。

 自主経路成功のコツは明確な目印を見つけること。指導員曰く、カーブは地図上でも明確に分かり、走行中も体感できるもっとも分かりやすい目印なのだそうだ。

 今回の自主経路コースにもカーブがあったので、さっそく目印にして走り出す。しかし、さすがに

危険予測のあとの運転は体に堪えるな。

 疲労と、精神状態は運転に大きく影響する。

 これは前回の3時間乗車ですでに身を持って実感してる。

 あのときも最後の所内は完全に意識が飛んでた。

 運転するときは健康状態にも気を配り、運転のことだけに集中しないと本当に危ない!!!

 そう、今回も危なかったシーンがあった。

 右折するときに前方車が進んだので、ボーとしていた俺は何も考えず、あっ行っていいんだ!と思ってつい信号を見落として進んでしまい、

補助ブレーキ踏まれたりとか・・・。見えづらい信号を見落としてしまい、ブレーキ踏まれたりとか・・。

 「路上は生き物で、常に動いているのだから自分の目線で見えるところだけ見てはいけない!」 

 と叱責を受けてしまった・・。

 いろんなところに気を配りながら運転をしなければいけなんだな、と再認識。

 路上の恐怖感は大分無くなったし、運転操作にも慣れてきたのだが、いまだに自分の運転には自信がもてない。

 このままだと免許とってもいつか人をはねそうで怖い。

 自分が死ぬ分には問題ないが、人様に迷惑をかけるのだけは何としても避けなければ・・!

 とにかく後ろの車に安易についていかない。

 前の車が動いていても信号を確認してから発進する。

 というか、前の車、あれ信号無視だったんじゃね? 

 本当に最近マナーの悪いドライバーが多くて困る。

 個人的に1秒以上同じところを見ないように今まで以上に意識して実践していこうと思った。

 つねに視線を多方面に展開させないと、路上は危ない。

 あと、疲れているときは運転しない。

 やはりコレが一番大事だな。今回は本当に痛感させられた。

 教習期限が迫っているはいえ、無茶はしないようにしよう。


 三回目の自主経路。

 踏み切りをとおって大通りへ。

 しかし、道中の交差点ど真ん中、横断歩道を踏みつけてドラックが止まっていやがった。

 「なんでそんなところにトラック止まってんだよお!!」

 っと思わず叫びつつ、俺はそのまま後ろに停車した。

 さっそく指導員に注意を受ける。

 「大型のトラックが止まっているので、その真後ろに付くと前方が見えなくなってしまいます。なのでこの場合は右により気味にして前方が視認できる状態にして止まるべきです」

 なのだそうだ。

 都内の路上は過酷すぎる・・・。

 こんな違法駐車とかのせいで

運転にも益々気を使わなければいけない。

 踏み切りは問題なく突破。事前のイメトレが役に立ったかしら。

 だがしかし、路上の過酷さを改めて思い知らされた、そんな自主経路三回目だった。

 自主経路四回目。

 その日は指導員が余っていたらしく、

 なぜか後ろにも指導員さんが乗ってきた。

 人を後ろに乗せて運転するのはこれで三回目。

 正直緊張するが、なんとか上手くやるしかない。

 路上にも大分慣れてきた俺は、指導員さんに注意されることもなくひたすら言われたとおりに道を爆走していく。

 指導員さんよりも早く、信号の無い横断歩道を渡りたがっている歩行者にも気づく事が出来るようになった。

この点は見事だと指導員さんにも褒められた。まあ、散々歩行者保護はやったから・・。いやでも歩行者には敏感に反応するようになるさ。

 しかし今回の自主経路最大の収穫はそんな事ではない。

 教習中、指導員さんに、ときどき俺が前かがみになっているときがある、と指摘されたことだ。

 これまで他の指導員さんには一度も言われた事が無かったのだが、どういうことだろうか。

 「その座り方では視野が狭くなってしまいますよ。もっと奥に腰掛けて、上半身を背もたれに預ける感じで座った方がいいです。」

 さっそく言われた通りに踏ん反りかえる。すると・・・見える・・・!

 これはどういうことだ!!!

 今まではちょっと屈みがちにならないと見えなかったものがふんぞり返るだけで全然見える。

 歩行者も! 信号も!! 信じられない!! 

 まるで何か魔法にかけられたようにあらゆるものは見える。

 俺の視野は一気に広がった。

 運転もとてもよくなった。

 座り方一つでこんなにも運転が変わるなんて、・・・嘘みたいだ・・。

 もっもしかして、これまで駄目だったのは、座り方がおかしかったから、というのもあるのかしら。

 こんな基本的なところ、今までどの指導員さんにも指摘されなかったのに・・彼らの目が節穴だったのか、それともこの指導員さんが鋭かったのか。

 いや、ほんとに助かった。これは凄い。

 姿勢一つでこんなにも運転が変わるなんて驚きだ。

 これからは運転姿勢に常に気をつけていこうと思った。

 残り少ない教習で、この踏ん反りかえり運転姿勢を体にしみこませようと思う。

 これで残りは高速教習、自主経路一回と所内教習、見極めを残すのみ。

 その後はいよいよ、・・・・卒業検定!!!

 ついにここまできた。ついにここまできた。


派生元作品はこちら

https://kakuyomu.jp/works/1177354054890338560/episodes/1177354054890338592

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る