第20話 危険予測ディスカッション
前回に続き、今回もセット教習だ。
今回は危険予測ディスカッションという項目だ。
他の教習生と一緒に運転しあい、お互いの運転の良いところ悪いところ、運転していて危険を感じた部分などを話し合う。
は、初めて人を後部座席に乗せるのか・・・・。
なんか緊張するなあ、とおもいつつ教習所へ向かう。
その日の指導員は大変綺麗な女性の方・・・というか一段階目から散々お世話になってきたライダー様だった。
というかその日は本当にライダー姿だった。
指導員は二輪も教えなくちゃいけないからな。大変な仕事だな。
その日のセット教習の教習生は自分以外皆女性。
しかも二人とも10代。さらに指導員も女性と、最悪の環境。
何、牧野さんと莉来の二人も十代だし、二人のおかげで十代のあしらいは上手くなっている。
でもなんかはぶられた気分だ。女の子三人キャピキャピ言い合ってた。
若いって、いいよね・・・。
危険予測、一時間目はシュミュレーターを使った模擬教習。
はい、事故りました。すいません。
シュミュレーターの方が操作難しくね?。辛くね??
続く二時間目は実際に外に出る。
車を見てビックリ、なんとAT車だった。
そうか、他の二人の娘はAT限定だからか。
MT免許の人間もこのセット教習はATで路上に出るらしく、久しぶり、というか実に3ヶ月ぶりのAT操作に最初は手間取った。
2時間目は定められた区間を三人で交代して運転していく。
順番はジャンケンで決め、僕は二番目を選んだ。
しかし一番大変なコースだった。
ところが運転してみると、ATは楽だなあとつくづく感じる。
MT車だったらちょっとてこずってそうな下り坂、細い道、歩行者の多い道、ありとあらゆる場面が、ATだとすごく簡単に走れるのだ。
途中恐ろしい構造の右折路で少々てんぱってしまったが、それ以外は落ち着いて運転できたと思う。
免許取ったら、多分俺もATしか乗らないようになるのかな・・・。
なんてちょっと思ってしまった。いやそれは無いな。
俺はMT車を買うつもりだから。
何事も無く自分の運転を終え、三番目にバトンタッチした後はボーっと外の景色を眺めていた。さすがにこの段階までくると教習生の運転でも安心して乗っていられる。
と、おもっていた。
上り坂に差し掛かるまでは。
三番目の娘が上り坂に入ってしばらくした後、指導員のライダーさんが、
「じゃあここはギアをセカンドに変えてみましょうか」
と教習生に伝える。
へえ、AT車でも運転中にギアチェンジすることなんてあるんだ、とATのことをよく知らない俺は思っていた。
運転中の教習生は、言われた通りにギアを変えようと左手で操作をしようとする。
ちょうどカーブに差し掛かっていた。
次の瞬間!!!!
なんと車がカーブ側の壁に突っ込みそうなった!!
俺はその瞬間、はっきりと死を覚悟した。
とっさにライダーさんが「危ない!」とハンドルを真っ直ぐに修正したので激突は免れたが、心臓が止まるかとおもった。
教習生がギア操作に集中しすぎて、ハンドルを手にした右手が左半身に連動して動いてしまったらしい・・・・。
AT車の人は、走行中にギア操作なんて滅多にしないから、運転中に両半身を別々に動かすというのはのは、なかなか難しいとおもう。
教習中だから練習の為にさせたのだとおもうけど、死ぬかと思った。
MT免許の人は、第二段階に入る頃には自然と手の感覚だけでギア操作する事ができるようになっている、はず。
なので左手と右手の動きが連動してしまうようなことはまず無いが、AT限定の人は右半身しか使わないからね。
ライダーさんの話では、AT車にもセカンドというギアがあり、坂道などでも状況によってはギアチェンジした方が走りやすくなるらしい。
AT車のギアには一応ストッパーが付いているので力一杯ギアを上げたり下ろしたりしても、一回ではLやRまでには入らない構造になっているそうだが・・。
とにかく本当に死ぬかとおもった。
それにしても、このライダー姿の女性指導員さんは綺麗な顔して恐ろしく肝が据わっている。
このときも顔色一つ変えずに颯爽と危機回避していた。
MT車も巧みに操作するし、正直、こういうカッコいい女っていいな、と思った。
男に思わずカッコイイ! と思わせる女なんてもの凄い貴重種だろうが、世の中にはいるんだな。
実車教習が終り、三時間目はディスカッション。
同乗車から見た自分の運転の良い点、改善点などを話し合った。
その日は路上を走る自転車が多く、俺らは路上を走る自転車にいかに注意を払うべきかを話し合った。
自転車の扱いは現実の世界ではとても難しい。
車を運転する人間からすれば車道を爆走する自転車は危険に感じるし、できれば車道を走るのは控えて欲しいのだが、歩行者からすれば歩道を我が物顔で走る自転車にヒヤリとさせられることも多いので、できるだけ歩道は走らないで欲しいと考えている。
欧米では歩道と車道の間に自転車専用の道が整備されている国が多いが、この点は日本は本当に遅れている。
道路交通法では自転車は軽車両扱いなので本来は車道を走るべきなのだが、サイクリストの俺から言わせれば出来るだけ走りたくない。
実際車道を走っていて後ろから轢かれたこともあるので。
そういえば一部の地域で自転車専用道路というのが路上の端に設置されているらしいが、駐車車両が多くて機能していないとニュースで取り上げられていた。
俺が轢かれた時も端っこを走っていたのだが駐車していた大型トラックを避けようとして車道の中央付近に強制的に出させられて轢かれたんだったな。
歩行者と自転車と車の関係か。
サイクリストの俺としては考えなければいけないだろうな。
結局、三時間目の後半は殆ど自転車の話しになっていた。
交差点をフリーダムにナナメ走行する自転車!
思いっきり車と一緒に車道を走っている自転車!!
自転車はバイクなんかよりも遥かに俊敏性に優れているから本当に目が離せなくて、運転する側としてはかなり気を使うのだ。
車道から消えたと思っていたら、歩道を爆走してていきなりまた車道に戻ってきたりとか・・・本当にフリーダムで危ない場面を沢山見た。
世間では自動車事故ばかり話題になっているが自転車と歩行者の接触事故も実はかなり多いのだ。
しかも自転車はアジリティがあるし、車のようにナンバープレートも無いから、
ひき逃げしやすいし、犯人も捕まりづらい。次回、いよいよ高速教習となった。
自主経路でもいろいろあったおかげで路上でのMT車の運転が負担に感じることもなくなってきた。
俺の教習所体験もいよいよ最終段階に入ってきたようだ。
派生元作品はこちら
https://kakuyomu.jp/works/1177354054890338560/episodes/1177354054890338592
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