第13話 効果前測定

九月の上旬、第一段階の学科が全て終わった。その後指導員にせかされるように効果前測定を受けた。そこそこ勉強し、まあ受かるだろうと思って受けた結果、40点で不合格だった。

 効果前測定は50点満点中45点以上で合格である。

 5点足りず、指導員には苦笑いされてその日は帰った。

 心の中では悔しさが溢れていた・・・わけでもない。

 あと5点足りなかった。

 ちょっと勉強不足だったじゃないかな?

 家に帰ってもう一度復習しておくか、と軽い気持ちで考えてさらに後日受ける。

 またしても40点で不合格。

 ・・・・もう、40点で合格で良くないか? と俺は思いつつ、爪の甘さを恥じながらその日は帰った。

 さらに後日、教本を精読し、もらった問題集も全部解いて万全の状態で効果前測定に挑む。

 結果は38点で不合格。

 指導員には「あれ? 下がっちゃったね~なんでなんで~?」

 と笑われた。

 「(・・・荒れ狂う海に飲まれて、死ね)」

 俺は無言でそそくさと教習所を後にした。

 ・・・とにかく、このままではいけないと思った。自分の勉強方法にどこか間違いがあるに違いないと確信し、さっそく自動車免許の練習問題集を買うために

教習所の近くの本屋へ直行。

 しかし、その本屋はとても小さい街の本屋で、資格のコーナーは外国語がらみの本だけ。

 なんとなくイラ付いていた俺は目に付いたガンダムで覚える英単語本に八つ当たり。

 けっ! これを書いた奴はガンダムの意味知ってるのか?

 俺は知ってるぜ!?

 ガンダムってのは機動戦士って意味なんだぜ?!

 俺は頭がいいから知ってますよ~だっ!! 

 おとといきやがれってんだいてやんでバーロちくしょい!!

 ・・・などと面白くも無いボケをかましつつ、一人でボソッと突っ込みを入れつつ、家に着く頃には深刻なほどに落ち込んでいる俺。

 勉強した、つもりだったんだけどな・・・。

 なんで駄目なんだろう。確かに難しいとは聞いていたけれど、勉強すればするほど点数が下がるなんて。

 もう、これ以上どうすればいいのか。愛の力で乗り越えようか。

 俺は莉来に頼んで問題を出してもらうことにした。

 とある日の平日の昼休み、愛のレッスンは始まった。俺達は人目の付きにくい休憩室の席に座った。

 莉来に問題を出してもらい、それに対して俺が答える形で勉強した。

 「徐行や停止をするときにも、合図をしなけれっばならない。丸かバツか」

 「バツ」

 「ぶー、不正解。答えは丸です」

 「畜生」

 「落ち着いて、今までの教習を思い出して」

 「ああ」

 「自動車を車道の左側端に停車していて発進しようとする場合の合図は、右折の場合と同じ要領でおこない安全確認をしなければならない。丸かバツか」

 「うーん、バツ」

 「ぶー、不正解。答えは丸です」

 「大型特殊免許で運転できるのは、大型特殊自動車、大型自動車、小型特殊自動車、原動機付自転車である。」

 「丸」

 「ぶー、バツ」

 「なんでだよ」

 「対向車のライトがまぶしいときは、視線をやや右前方に移して目がくらまないようにする。」

 「丸」

 「バツ」

 「畜生」

 「大丈夫、こうやって問題を解いていけばいずれできるようになるよ。問題ごと覚えちゃって次は正解できるようにすればだいじょうっぶだよ」

 そう言って、莉来はやさしく励ましてくれた。

 「仮運転免許では、練習又は路上試験を受ける場合のほかは路上で運転してはならない。」

 「うーん、バツ」

 「お、初めて正解だよ」

 「やった」

 その後も二人だけの愛のレッスンは続き、俺は大分正答率を上げてきた。やっぱりこの手の試験は問題を解きまくるに限るな。

 「歩行者や自転車のそばを通るときは、必ず徐行しなければならない。」

 「丸」

 「残念、バツです」

 「ぐむむ」

 そうこうしている内に昼休みは終わってしまった。俺は付き合ってくれた莉来に礼を言ってから職場に戻った。

とにかく今の俺に出来る事といえば問題を解きまくるしかないんだが。

 しかし、手元には問題集が無い。

 仕方なく、NETで何か問題が解けるようなサイトがあるかを物色したところ、学科無料問題集、なるHPを発見した。

 莉来はこのHPから問題を出していたようだ。

 それは個人情報は登録せず、ID・PWなどを最初に設定し、あとはログインするだけでひたすら学科の問題が解き放題という夢のようなHPだった。本当に無料なのか?

 規約などを調べたが、どうやら本当に無料らしい。

 ということで、俺は有り難く使わせてもらう事にした。

 俺に足りなかったもの。

 それはやはり問題を解く回数だったのだ。

 学科試験の問題は嫌らしい言い回しの設問が多く、

俺はそれにコロコロ引っかかってしまっていた。

 でも、それは沢山の問題を解いていくことで対応出来るようになるはず。

 大事なのはとにかく問題を解きまくる事なのだ。教本だけ精読して

 ちょろちょろ問題解いていた俺の勉強法は間違っていたのだ。

 それから俺は一日300問の問題をひたすら解き、それを3日ほど繰り返した。

 そして、後日の効果前測定に無事合格した。

 仮免学科試験は難しい。 

 まだ先だが、卒業前効果測定はもっと難しいらしい。

 でも、俺のやることは変わらない。

 学科で学んだ事を復習し、教本を精読し、あとはひたすら問題を解きまくる。ただそれだけのことさ!!

 「調子はどう」

 「ボチボチでんな」

 「一生懸命勉強してる?」

 「ああ、一日300問解きまくってるよ」

 「300問、それは凄いね」

 「凄いだろう」

 「頑張ってるね」

 「おう、絶対受かって見せるよ」

 「応援しています」

 「ありがとう」

 いざ仮免試験。


派生元作品はこちら

https://kakuyomu.jp/works/1177354054890338560/episodes/1177354054890338592

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