50話 (終話)私は人生を振り返り、そして旅立つ
あれから、どれ程の年月が経っただろう。
私も今年で90歳。
間もなく生を終えようとしている。
正直ほっとしている。
振り返ってみれば、今回の人生はとても……とても幸せな人生を生きれた、と断言できる。
もう転生を繰り返したいとは思わない。
もう人生に何も望む事はない。
だって、満ち足りて逝けるのだもの。
やっと逝けるわ。
アイリもダン兄様も待ってくれている筈。
私だけが頑張って残ってしまったから、愛する2人に会えるのはとても楽しみなの。
私はダン兄様の元に嫁いだ。
私は今回の人生で初めて、結婚生活と子育てを経験した。
ダン兄様はなんというか……凄かった。
私はすっかり女としてダン兄様の男に溺れてしまったわ。
今思えば、恋仲になってから結婚初夜までずっと我慢させていたのだと、しみじみ思う。
初めての夜は兎に角もの凄かったのだ。
一つ言えることは、超兄様モードは反則だ、という事。
それ以降もダン兄様は凄かったので、私は子宝に恵まれた。
3男5女は頑張り過ぎだと人から言われた。
だけど私はそうは思わない。
私とダン兄様の愛の結晶達。
ダン兄様ともっと愛し合って、もっともっと授かっても良かったわ。
兄様と私とでユニスリー家をより栄えさせた。
今ではユニスリー家は公爵家であり、王国の4大公爵家の中でもユニスリー家が随一と言われる程になった。
ユニスリー領の都市は王国第2の都市と呼ばれるくらいに栄えている。
そう言えば、兄様とトレーニ様は仲直りをした。
兄様の手助けもあり、リッシルト家は今も存続している。
またトレーニ様の奥様のご実家の影響は杞憂だった。
彼女はしっかりとトレーニ様の為にリッシルト家を盛り立てた良妻賢母だったのだ。
尚、兄様と私の長女がトレーニ様の息子の元に嫁ぎ、ユニスリー家とリッシルト家の仲は良好である。
アイリはシャルと共にアイドルとして王国のみならず世界にアイドル文化を発信した。
その功績はあまりに大きく、アイリ、シャルのみならずSFALDメンバーは全員、高等位に入ってすぐ聖女に内定した。
聖女に内定となってからも音楽活動で人々を元気づけた。
国内外に多くのアイドル達が生まれたけど、SFALDはトップに君臨し続けた。
高等位2年の時、アイリは第2王子と婚約した。
そして卒業と同時にシャルとアイリはそれぞれ婚姻。
王子2人とトップアイドルのダブル婚は王国を大いに盛り上げた。
婚姻後もSFALDは活動を続け、これもまたシャルとアイリのダブル妊娠で一時活動を休止したものの、解散はしなかった。
2人が子供を生んでからは、アイドル曲から方向を転換し、大人の恋愛や、人生観をテーマにした曲でまた大ブレイクを果たした。
今や王国は音楽の国と言われる程に音楽文化が充実し、最先端の音楽を求めて多くの観光客や留学しに来る若者で賑わう国となった。
私がアイリ達の活動に協力し続けたのは言うまでもない。
お姉ちゃんは、頑張った。
王国が音楽国家になったのも、シャルとアイリが王族でありながら聖女として活動出来たのも私が裏で色々と………うふふ。
また、私とダン兄様はこの音楽文化を活かし、ユニスリー領の都市にミュージカル専門の劇団を設立し、王都と一線を画した方向性の都市に位置づけた。
その試みは成功し、ユニスリー領は演劇の都市と言われ、王都に続き多くの観光客や留学生で賑わう都市となった。
アイリは20代の内に大聖女に就任した。
今まで王家の縁者は、聖女にならないのが慣例であった。
だから王太子妃になるシャル、第2王子妃になるアイリが聖女になるのですら異例のことなのに、聖女を纏める大聖女の役に就くのは異例中の異例と言える。
それだけ、シャルとアイリの功績は大きい。
シャルはやがて王妃となる為、大聖女にアイリが就く事になった。
私は私の誓いどおり、アイリを無事、大聖女に導けた。
その為に、お姉ちゃんはいろいろしました。
それはもう色々と。
念の為言えば、人を裏切ったり、貶めたり、違法な事はしていませんからね。
兎も角、王族の縁者が大聖女になる前例を作ってしまった。
しかし、王宮の聖女達はそもそも独立組織でなく、国家の庇護の元に活動する集団なのだから問題ないと思う。
そろそろ、お迎えが来たみたい。
だって天使が見えるから。
でもなぜだろう、私を迎えに来た3人の天使を何故か私は知っている気がするのよね。
意識が朦朧としてくる。
とても心地よい。
あぁ、全てが解き放たれていく………
私は多くの孫やひ孫達に見守られて旅立った。
ーーーーーーーーーーーーーーー
「神様」
「なんだいリリー君」
「これって修行でしょうか?」
「そうだよ。君には修行になって、僕は楽できる。お互いWin-Winだよね」
「でも、只の膝枕の様に思うのですけど」
「ま、騙されたと思って」
天に召された私の意識が覚醒した時、私は18歳当時のリリエナスタの姿になっていた。
そして目の前には神様がいた。
現在は神様の元で修行している?らしい。
?がつくのは、神様の世話ばかりしている気がするから。
今も天界の花畑の上で神様に膝枕をする修行?をしている。
「ミッチェル様はどう思う?」
私の頭の上に乗っている天使に話しかけた。
「単に神様が楽したいだけだと思うっス」
「ミッチェル君は判ってないなあ」
「こう見えても自分はリリーとの付き合い長いっスから。リリーの神格の変化も判るッスよ」
「ちぇ、ミッチェル君は大天使長にランクが上がってからどうにも厳しいね。リリー君の味方ばかりする」
「勿論っス。だって自分はリリーの頭の上に寝っ転がり続けて神格が上がったッスからね」
ミッチェル様の話では人でありながら神格をもつ私に触れ続けたことで、ミッチェル様の格が引き上げられ、裸眼で神様を見る事が出来るくらいにパワーアップしたらしい。
「ミッチェル様ごめんね。私ずっとミッチェル様の事忘れていたのよね」
「リリーは優しいから好きっス。気にする事無いっスよ」
様はつけなくていいとミッチェル様に散々言われたけど、私は修行の身だから呼び捨てなんて出来ない。
最近漸くミッチェル様のほうが諦めてくれた。
「はぁ、やれやれだね」
「そう言いつつも膝枕して貰ってるままじゃないっスか」
「だってさぁ、君やルコー君やキャペン君はずっとリリー君にくっついていたじゃない。僕は羨ましかったんだよね」
「神様大人気ないっス」
「えー、アイリ君やダンベル君だって甘えてるんだよ。神様だって甘えたいじゃない」
「ミッチェル様、許してあげて。神様が膝枕して欲しいならいくらでもしますから」
「リリーは優しすぎッス」
「さすがリリー君。じゃ、よろしく」
「ひでー神様ッスね」
「パワーアップばかりが修行じゃないって」
「ふふふ。神様って面白いですね」
なんてやり取りをしていたら、誰かが近づいてくるのを感じた。
「お姉様発見。神様ここにいたんですね」
「神様。急にリリーを連れて消えられては困ります」
やってきたのは、アイリとダン兄様だ。
アイリは大天使ルコー様を、ダン兄様は大天使キャペン様を連れている。
「あーミッチェル様ずるい」
「先輩、ずるいですよ」
「ずるいも何も昔っからここが自分の場所っス」
「やれやれ、リリー君のいる所に君たち在りだね」
私は神様の元で、次代の神となるべく修行している。
アイリは私の補助神として、ダン兄様は私とアイリを護衛する武神として取り立てられて一緒に修行している。
因みにアイリの姿は12歳くらい、ダン兄様は26歳位の時の姿である。
2人の年齢設定は私の好みによるものらしい。
確かに12歳時の甘えるアイリはものすごく可愛いかった。
兄様も26歳の時が一番凛々しく素敵だった。
私は次代の神様の候補の一人として、異世界からスカウトされた。
慈愛属性属性の持ち主として神格を得て転生した為、最有力候補だったみたい。
しかし、1回目の聖女としての人生では、人間としての経験が足りず2回目の人生で再度経験を積む事になった。
兄様を愛し愛される人生を送り、私の人間としての修行は完了したのだという。
アイリは世界の歌姫、また大聖女として人々を平和に導き、神格を得た。
私との相性も良いので私のサポートをする為、補助神となるべく一緒に修行をしている。
ダン兄様は前人未到の馬上槍試合1276連勝無敗を樹立。
武神としての資質を持ち、私と肌を重ねた事で神格を得た。
また、兄様も元は転生者であり、候補者の一人だった。
超兄様モードは一時的に神格化状態になるモードで、神格を得れば神になれる器なのだった。
愛する2人とまた一緒なのは非情に嬉しい。
「神様、ずるいー!私のお姉様ですよ」
「神様、リリーは僕の妹でかつ妻ですよ」
「いいじゃん、減るものじゃないし。2人も後で膝枕してもらえばいいじゃないの」
3人がやり取りしている内に、ルコーとキャペンがそれぞれ私の肩に乗って寝転がった。
「はー、落ち着く。やっぱここが一番よねー」
「ほんとほんと、ここが一番だよ」
「ふふふ。ルコー様とキャペン様もお帰りなさい。アイリとダン兄様も愛しているわ。だから少し待ってね」
結局いつも賑やかになってしまう。
修行は始まったばかり。
前途多難だ。
でも、みんなが一緒だから大丈夫。
だから……
お姉ちゃん頑張るわね!
終わり
妹が可愛すぎるので絶対聖女にならせて見せます。 丁太郎。 @tyohtaroh
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