いちごのゴム
@53hamachi
第1話 姉が死んだ
お姉ちゃんらしいなぁ、と思った。
新聞紙を敷いて、その上にビニールシートを敷いて、畳を汚さないように、首を吊った。
次の日は、大家さんが家賃を取りに来る日だったらしく、台所の窓を細く開け、中が見えるようにしていたのも、自分の死体を早く見つけてもらうようにと、お姉ちゃんの気遣いだろう。
お姉ちゃんの部屋には、何も無かった。
必要最低限の家具や日用品だけ。
テーブルには通帳や印鑑、遺書は無かった。
「ご両親に連絡した方がええんちゃうか」
泣きじゃくる私に、大家さんが心配そうに声をかけてきた。
「親なんてもん、遠の昔におらんよ」
「おばちゃん…1人ぼっちで死んだの?」
「そうだよ」
娘の沙羅の目が赤い。
私の目も真っ赤だろう。
お姉ちゃんの遺骨を、沙羅が拭き掃除した棚の上に置いた。
「おばちゃん、かわいそう…」
鼻を啜りながら、骨箱を撫でる。
「沙羅は、おばちゃんの事大好きだったもんね」
「……うん」
私に抱きついて、声を出して泣き出した。
そのまま、泣き疲れて眠った沙羅を布団に戻し、冷蔵庫からビールを2本取り出して、骨箱の前に1本置いた。
お姉ちゃん…
何があったん?
ビールを一口飲んだ。
いつもより苦く、二口目は飲めなかった。
いちごのゴム @53hamachi
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