世界一高い山に棲まう、人の咎を喰らう怪物。
神に遣わされし彼が常に口にするのは、理性無き狂った咎人―――であるはずだった。
淡々とした、それでいて緻密で硬質な文章はまるで神話か御伽噺を読み聞かせられているような心地よさがある。
けしてライトな文体ではないが、それ故にこの物語には相応しく、どっぷりと雰囲気に浸かれることだろう。
また、ひとこと紹介で書いたが、この物語を読んだ時に私が考えたのは愛についてである。
愛には様々な形があるが、全てが愛し恋しだけではない。
友愛、主従愛、家族愛…そして、言葉には言い表せられないが『愛』としか表現できなもの。
中には歪んでいたり、欠けているものもあるだろう。
それらを含んだ上で、この物語には多くの愛の形が登場するように私には思う。
怪物と咎の少女、そして彼ら彼女らを取り巻く儚い泡沫のような物語を読み、そしてどうかラストの余韻に浸ってほしい。