第11話

「じゃあ、話すわね。

今から話すのは私達双子の話なのだけど、代表して私が話すわ。

私達は双子の一卵性双生児。生まれた頃からそっくりで先に生まれた方が藍、後が茜と名付けられた。

両親は私達を分け隔てなく平等に愛してくれたわ。

ものを買ってくる時は必ず2つだったし、私たちの名前に合わせて文房具や持ち物の色を考えて買ってくれた。

そうして私達はすくすくと育っていったんだけど、あれは幼稚園の年長くらいのころかな?2人はちょっとしたイタズラを考えついたの。

それは入れ替わること。

私達が持ち物を完全に入れ替えたら誰もわからないのでは無いかと思ったの。

だから、特に考えることも無く夜の間に入れ替わったわ。

翌朝、両親は全く気づかなかった。

本当は、ほんの少しだけ気づいてくれるのではないかと期待してた。

幼稚園でも、先生や友達が気づくことは無かった。

会話で綻びが出ることも無かった。

私達双子はなんとなくお互いの考えがわかったし、目を見れば言いたいこともわかる。

それでも、いつか親や友達なら分かってくれるって、今思えばやけになっていたのかもしれない。

だから続けてしまった。

入れ替わって入れ替わって入れ替わって入れ替わった。

気がつけば私達はどちらがどちらなのか分からなくなっていた。

これがどれだけ恐ろしい事だったか今でも鮮明に覚えているわ。

2人で話し合って慰めあって、何とか心の平穏を保ったわ。

だから、私達は2人で2人の役を演じて生きてきた。

今更後悔なんてなかったし、私達はそれでいいと2人とも思っていた。

でも、あなたが現れて私達は揺れ始めた。」


そう言いながら彼女達は俺に1歩近づいた。


「私達はあなたのことが好き。

あなたのことが好きなのは茜でも、藍でもない。

演じている役じゃなくて、私達自信が好きなの。

こんなこと初めてで私達はどうすればいいかわからなかった。

あなたが茜を好きなのは分かってた。

だから、どっちが茜をするかで言い合いもした。

初めて茜でもなく藍でもなく私達が感情を持った。

戸惑いもした。

それでも私達はあなたのことをっ!」

2人の顔が感情的になった。

こんな顔初めて見た、と思った矢先

2人は電源を抜かれたテレビのように事切れて、同時に倒れた。

俺は今までの話で頭がパンク寸前だったが、無理にも冷静さを取り戻して、保健室に向けて駆け出すのだった。

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紫苑の人 ひまり @HIMAnaMARY

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