第7章 コスモレンジャー×コスモレンジャー
小さかったひび割れが、徐々に大きくなっていった。まるで鳥のヒナが殻を破って出てくるかのように、何か大きなものが空のひび割れから出てくる。
「・・ま、まさか・・・衛月城(えいげつじょう)?」
雅美に支えられながら、空を見上げていた徹は信じられないというように声を上げた。悲鳴をあげる町を呆然と見つめていた真とカケル、明も空に視線を移した。
「・・?」「なんだ、ありゃ。」「・・城?」
ひび割れから出てきた大きなものは、カケルの言うとおり大きな城に見えた。
~♪
「・・・・?・・・!」
聞こえてきた耳慣れた、けれどもう懐かしいメロディーが護符チェンジャーから流れた。ほんの少しの間、不思議顔で首を傾げた徹は、しかしすぐに慌てたようにポケットを探る。
「も、もしもし、」
『徹!!徹、聞こえておるか?』
叫ぶように怒鳴るように聞こえてくる隣にいるミヤビちゃんとよく似た、少しばばくさい口調。「・・うん、うん、聞こえてる。聞こえてるよ、雅。」
『徹!おぬし、無事か?無事なのだな?』
うん、と短く告げるとはあっと安心したように、息を吐いたまま雅の声はしなくなって代わりに目の前で不思議そうな表情をしているカケルさんとよく似た、優しい声が笑う。
『よっくやったな、徹。とりあえず、ここまで一人で戦うなんて。』
「うん、けど、僕もう術気がないんです、翔。」
だから、式神が呼べないよ。謝るように言った言葉に翔は驚いたような声を出して、楽しそうにまた笑った。
『まったく、だらしないなあ。そんな絶対絶命なお前を迎えにきてやったぞ!』
あぁ、これは誠の声だ。空を見ていたアキラさんが、驚いたように大きな目をしてこっちを見ている。
「ありがと、誠。待ってた、」
待ってたよ、泣きそうになって慌てて堪える。よっしゃ、なんて誠が言って、それから低くて優しい声が、僕の名前を呼んだ。
『あとは、任せろ。』
「はい、お願いします。信さん、」
懐かしくて頼もしい仲間たちの声に、徹は小さく安堵の溜め息を吐いた。
大丈夫。
もう、これで大丈夫だ。
徹は隣りにいた雅美の手を、知らないうちにぎゅっと握りしめていた。
「おっし、タイムラグーン!徹を泣かせた仕返しだ!!」
「いや、ブラック。徹は泣いてなかったぞ。」
衛月城のコックピットに乗っていたブラックは、そんな声は聞こえないと護符チェンジャーをセットし、合体の印を結ぼうとした。
「待て、ブラック。今は、徹、イエローの式がおらぬ。」
「そうだ、あいつ、もう術気切れだって言ってたな。あの徹が術気切れとはなあ。」
コックピットにある大きな窓から、タイムラグーンを捉えながらレッドが笑う。
「そうじゃ、故に恒陽王(こうようおう)は呼べぬということじゃ。」
「えぇ?!じゃあ、どーすんだよ。衛月城で何とかすんの?」
「あとは、まあ、恒陽王になれなくても、式神単独で力を借りるとかかな。」
レッドが考えるように呟いて護符チェンジャーを取り出し、中心に小さなメダルをセットした。
同時に衛月城に向かってタイムラグーンがムチを伸ばしていた身体を、細い木の枝が縛る。
「こんなカンジにか?」
よく見れば、その枝は青い色をした美しい竜だった。ブルーは、ニヤリと笑うとレッドに視線を投げた。
「ま、そういうことだ。」
レッドも、取りだしていた護符チェンジャーに、術気を集中させる。指先で炎が弾けた。
「朱雀、召還!!」
すると、もあもあとタイムラグーンの周りに炎が巻き起こる。
「あつ、あついぎゃー!!」
「朱雀さん、いらはいましたー。」
楽しそうにブラックが言うと、今度は突然タイムラグーンの頭上に水がまるでバケツをひっくり返したかのように降り注いだ。
「冷たいぎゃー!!」
「あははっ、熱いっていうから、水をかけてやったんだろ。」
タイムラグーンの両脇には、いつの間にか朱色の朱雀と漆黒色の玄武がいた。
「おぬしら、あまり遊ぶでない。」
タイムラグーンは、傷だらけになりながらもなんとか青竜から逃れようと身体を動かす。
「ついでにホワイトも呼び出しちゃえば?どうせ、後で出さないといけなくなるんだしさ。この町のカンジだと。」
ブラックは楽しそうにそう言うと、しかしすぐに表情を変えた。何かを探るような見極めようとしているように首を傾げた。
「どうした?ブラック。」
ブルーの気が一瞬だけ、ブラックに向けられた。と、同時にタイムラグーンが隙をついて体ごと、青竜をすぐ横にいた玄武にぶつけた。
「あ!」「何!?」
ぐらり、と玄武が体を揺らし、青竜が衝撃でタイムラグーンから離れてしまった。起き上がったタイムラグーンが衛月城に向かって走り出すのが見えた。
「ばか者!!何をしておる!!」
「あぁ、すまない。油断した。」
慌てたようにブルーが言い、護符チェンジャーに術気を籠めようとした手をブラックが掴んだ。
「・・ブラック?」
「だめ。徹が術気切れになった理由がわかった。というか、よくこれでタイムラグーンが倒せたよ。」
「何?どういうこと?」
レッドの言葉が終わる前に、どんっと鈍い音と共に衛月城がぐらりと揺れた。タイムラグーンが体当たりしたのだ。
「何をしておる!やられるではないか!!」
ホワイトは怒鳴るように叫ぶと、護符チェンジャーに術気を籠め始めた。
「ホワイト、ストップ!」「ホワイト、待て!」
慌てて叫ぶブラックにただ事ではない何かを感じ取ったレッドだが、遅かった。
「だぎゃー!コスモレンジャーめええ!!」
もう一度、ムチを当てようとしたタイムラグーンの手を、ばくりと現れた白虎の口が食いちぎった。
「ああ、もうっ!」
ブラックは、焦れたように頭であるメットをがしがしと荒っぽく掻くと真っ直ぐ前を向いた。
「ブラック?」
「とにかく、早く決めればいい!・・と、思う。」
ブラックの言葉と同時に玄武が、タイムラグーンの残りのムチを、鋭い水の刃で切断した。
「ぎゃーっ!!ムチが、ムチがぎゃー!!」
狂ったように叫ぶタイムラグーンに向かい、空を飛んでいた朱雀が炎を吐いた。
「よし、これで・・うはっ、」
「ブラック!?おい、どうした?」
ガッツポーズをしたブラックは、突然カクンと膝から崩れ落ちた。ペタンと座りこみ、苦しそうに息を整えるとブラックは小さく笑った。
「やっぱだめだぁ・・もう、術気ヤバイ・・・ここ、術気が・・なくなる。」
「お前、そういうことは早く言えって。」
「だから、言おうとしたじゃん!!」
「あー、そうだったわ。あれ、そうだったのね。」
呆れたように頭を抱えると、レッドは下で今にも横になってしまいそうなブラックを見下ろし、溜め息をついた。
前を見れば、煙りの中からゆらりとタイムラグーンが出てくる。しかし、これ以上術気を小出しにしたところで良い事なんて一つもない。
「ホワイト、一気に決めたほうがいいみたい。」
「しかし、タイムラグーンはまだ動ける。どうやら術気が限りなく選び取りにくいこの世界であれを使うのは。」
「けど、このまま小出しにしても一緒だろ。」
衛月城には、一つ大きな必殺技がある。けれど、それには大量の術気が必要となるため今、この術気が限られた状態で使うのは非常に不安なのだ。
「・・外したら、もう手はないぞ。わかっておるか?」
「大丈夫、絶対に外さない。ブルー、奴の動きを封じてくれ。」
「わかった。・・・・レッドに、任せる。」
「おう、んじゃあ、決めるとしますか!!」
レッドの言葉に頷いたブルーに青竜はぐるりとまたしても、タイムラグーンの体を捕らえる。両腕のムチを失くしたタイムラグーンはどんなにもがいてももう抜け出せない。
レッド、ブルー、ホワイト、そしてなんとか立ち上がったブラックがそれぞれ自分の前にあるコックピットに護符チェンジャーをセットした。右端にある黄色い旗の下を見つめ、ブルーが小さく呟いた。
「早くあいつを迎えに行かないと、な。」
「そうじゃな。」「おう!」
「あー・・もう、ただでさえ一人足りないのにい・・俺、限界。」
コックピットに半ばもたれ掛かるようにしてブラックが笑う。中心にある水晶に段々と色が満ちていく。
「う・・確かに、ちょっと、キツイな。」
「いつも術気を垂れ流しておる奴がいないからの。」
「よし、溜まったぞ!!」
水晶はまるで色水が満ちるように綺麗な四色になると同時に、レッドが叫ぶ。
「行くぞ、タイムラグーン!!」
四人の手が、同時に同じ形に印を結ぶ。
『ムーン・インパクト』
籠められた術気が、衛月城の中心から出た巨大な大砲から、タイムラグーンに向け発射された。
「放せ、はなすだ、ぎゃーっ!!ち、ちくしょーだぎゃああああ」
青竜に縛られ攻撃を正面から受け止めたタイムラグーンの身体から煙りが上がり、バチバチと火花を散らしながら倒れ、爆発した。
「妖魔、退散。」
四人は手で印を結び、小さくしかし声を揃え呟いた。
「す、すげえ。」「かっちょい。」「ヒーローみたい。」「あぁ。」
爆発したタイムラグーンとそれを見届けるように消えた、朱雀と玄武、青竜。そして、壊れた町の上空を跳ねるように動く白虎を見つめぽかんと口を開けている地上の五人に向かって衛月城から声が降ってきた。
『大丈夫だったか?徹・・あ、こら誠!!』
そんな少し慌てた雅の声がしたかと思うと、地上に着地した衛月城からばたばたと走ってくる人影がいくつか。
「どーん!!徹、泣くなってー・・ははは、あ、俺だ!!!」
「こら、誠!お前、人を指差して笑うな。」
徹にぶつかるように転がって、誠は楽しそうに殺人犯の明を指差して笑った。それをべちんと誠の頭にチョップをした翔がアイドルのカケルに笑いかけて手を上げて挨拶した。
「よう、俺のそっくりさん。元気?・・・なんて、あ、徹おまたせ。」
「あきら、かける。」
自分とそっくりなその姿にあんぐりと口を開けていた明だったが、すぐに誠とそっくりな顔をして笑いだした。
「すげー、そっくり!!」
「おぬしら、勝手に出て行きおって。置いてゆくぞ。」
「みやび、」
「大丈夫か?徹。」
「まことさん。」
ばばくさくて、スカートなんて絶対に穿かない雅が長いポニーテールを左右にパタパタと振りながら、徹に駆け寄った。後ろにいた信も小さく笑った。
「さ、殺人犯が、二人!?」
「え、殺人犯?え、何、俺殺人犯なの?」
「おい、アイドル。余計なこというなよ。」
「あ、ええ?俺なの?俺のほうがアイドルなの?うわー」
「うははっ、見たい!!翔のアイドルとかすげー見たい!!」
「おい、誠!!笑うな、俺の方が信じられないくらい恥ずかしいんだぞ。」
じゃれつくように笑う、翔と誠を見つめ、雅と信は溜め息を吐いた。それから、自分たちの目の前にいる自分たちを見た。
「・・なんじゃ、ひょっとするとわしは、女子の姿をしておればなかなか可愛いのではないか?」
「わ、わたし・・かわいくなんて・・・あ、でも、意外にポニーテールは似合う、かも。」
「そうじゃな、今度いめーじちぇんじ、とやらをしてみるかの?」
「うん、そうしよっかな。」
お互いの顔を、なんともいえずに見つめていた雅と雅美の後ろにいる信と真を見つめ、翔がほんの少し笑う。
「にしても、信だけずいぶんと歳が、」
「俺も、そう思っていた。」
「あ、そうそう。マコトさんはミヤビちゃんのお父さんなんだ。」
「お、とーさんっ!?」
思い出したように徹が、言えば、複雑な顔をした真と驚いたような顔をした信が見つめあう。それをまじまじと翔と誠は見つめ、雅はほうと関心したような表情を浮かべた。
「・・・う、うははは、はははっ、おと、おとうさん!!」
「だめだって、誠。笑っちゃ・・・ぐ、っくくく。」
「こらこら、あまり騒ぐとお父さんが怒るであろう。」
「み、みやび!!」
「う、ふふっ。おとうさん、ごめんなさーい。」「ごめんなさい!」
「俺は、お前らの父親じゃない。」
けらけらと楽しそうに、信のまわりでふざける翔と誠に珍しく雅までも加わった。その光景をまるで眩しいものでも見るように徹は見つめていた。
「そうじゃ、こんなことをして遊んでいる場合ではないのだ。白虎の錬金も終わったようじゃわしが戻せるのは、町の建造物だけじゃがの。」。
思い出したように雅が、白虎を呼び戻すといつの間にか、壊れていたはずの町は元に戻っていた。
「あ、そうだ。あのひび割れ、迷惑将軍が頑張ってくれてんだった。閉まる前に帰らないと戻れなくなるんだ。」
「ちょっと、それ早く言ってよ!!もう、ねえ、ちょっと小さくなってるよ!!大丈夫なの!?」
のほほんと大事なことを言った誠の言葉に慌ててひび割れを見れば、なんとなくさっきよりも小さくなっているように見えてくる。
「あー・・ちょっと、マズイかもね。早く帰ろっか。念のため。」
「うん、そうだな。んじゃ、帰るぞ。徹。」
ばいばい、と手を振りながら楽しそうに衛月城に向かう四人の背中を見つめ、徹はにこりと微笑むと雅美に手を差し出した。
「ありがとう、ミヤビちゃん。みんなも、嬉しかったよ。助けてくれて。」
差し出された手を見つめ、雅美が不安げに尋ねた。
「また、会える?とおるさん、」
「・・・たぶん、でも、今度会うのは、この世界の僕と、だよ。」
ぎゅっと握手を交わした手を見つめ、徹は笑った。雅美は少しの間俯いていたが、すぐに思い出したようにポケットから小さな羊の置物を取り出した。
「これ、とおるさんの服のポケットに。」
「あ、そうだった。洋服!!あぁ、いいや。ミヤビちゃんに全部あげるよ。って、いらないか。」
困ったように眉を下げて笑うと、徹はその羊の置物に触れた。と、めえめえと羊の鳴き声とともに置物から黄色い羊が飛び出した。
「うわ、お、黄(オウ)?な、何で?僕、術気もなにもしてないのに。」
黄は、ぴょんぴょんと徹の周りを跳ねると次々と増えていきあちこちに散らばるように駆けていく。
『目が覚めたら、悪い夢は終わっているよ。もう、何もかもを忘れているよ。おやすみ。』
衛月城に乗り込もうとしていた誠が、術気を感じ取り振り向いた。黄色い羊がもこもことあちこちに散らばり、人々を眠らせていく。その光景を驚いたように徹はあたふたと見ていた。
「・・・あ、あれ、黄じゃん。なんで?徹、もう術気切れなのに。」
「本当じゃ。・・・しかし、これで人々も何も覚えておらぬゆえ、全て元通りじゃ。」
「そうだな。この世界にとっては、さっきまでのことはなかったこと、なんだ。」
「それが、いいんだ。」
「ほれ、徹!!早く乗るのじゃ。空間の歪みが閉じてしまうぞ。」
「まぁ、こっちの世界にいたいなら別だけど、さ。」
「ね、おしとやかで女の子みたいな雅がいいっていうなら止めないよ。」
「いやいや、誠。雅は一応女の子だから。みたいじゃなくてそうなんだって。」
「おぬしら・・」
「冗談だって。雅、怒るなよ。」
ぎゃいのぎゃいのと騒ぐ仲間たちの声に徹は困ったように苦笑し、雅美の手を放した。
「さようなら、この世界の仲間たち。」
そう告げて、手を振ると徹は衛月城に向かって駆け出した。
「ごめん、心配をおかけしました。」
「いや、誰も心配してないから、安心しろって。」
「えぇ!?」
「嘘に決まってんだろ。」
「そうじゃ、早く帰るぞ。あとで迷惑将軍になんと言われるか。」
楽しそうに笑うと、もう一度手を大きく振り、衛月城に乗り込んだ五人は、きたときよりも少しだけ小さくなった歪みにきたときと同じように衛月城で入り、消えていった。空は何事もなかったように晴れているだけだった。
「・・なんか、おもしろかったね。あの羊も、なんか薄くなってきたし。」
さっきまで色濃く見えていた黄色の羊たちも、いつの間にか空気に溶けるように薄れている。眠っている人々が目を覚ますのもあと少しだという気がした。
「不思議な時間だったけど、本当のことなんだな。」
「うん。ちゃんと、羊の置物はあるので。」
「そうだな。」
四人はじっと雅美の手の上にある小さな羊の置物を見つめた。
「・・・さてと、帰るかな。家に。」
その沈黙を破るように、明がやけに大きく言った。それを聞いてカケルは驚いたように明を見つめ、
「帰るって、お前・・・家には、、警察が・・いるだろ。」
会ったばかりだというのに、嫌悪していたはずなのに、なぜか今はカケルは明ともう少し一緒にいたいと思っていた。
「なーんかさ、刑務所も楽しそうじゃん。つまんなかったら、脱獄すればいいんだし。俺、こう見えて結構すごいんだから。それくらいらくしょーでしょ。」
「お前・・・ちゃんと、出て来いよ。そしたら、会いに行ってやるから。」
「・・・何、迎えにきてくれんの?」
「・・・ちゃんと、脱獄しないで出てくるならな。」
明は驚いたように目を大きくして、けれどすぐに嬉しそうに顔を綻ばせた。今までの笑顔とは違う子どものような笑顔だった。
「ふふ、なんかありがとね。」
明は何かを言いたそうな真と雅に笑顔を向けると、バイバイと手を振り歩きだした。スキップをしそうなほど軽やかな足取りだ。
「出てこれるのかな。明さん、人をたくさん・・」
「さあ、出て来れないなら仕方ないだろ。・・・死ぬ前に、会いに行くよ。・・さて、俺も帰るかな。番組あるし、仕事あるし。じゃあね、ホワイトにブルー・・なんちゃって。」
にこり、いたずらっ子のように舌を出して笑うとカケルはくるりと向きを変え、明とは反対の方向に歩きだした。
「さよなら、レッド。」「じゃあな。」
はーいと、カケルは振り向かずに手を上げて答えた。
「・・・俺たちも、帰るか。雅美、」
残された真と雅美は、しばらく遠くなる二人の背中を見つめて、思い出したように呟いた。
「うん、そうだね。帰ろうか。」
雅美は手の中の羊を見つめた。
まだ、彼の温もりが残っている気がしてそっと握りしめた。
「帰ろうか、お父さん。」
「!」
雅美は、小さく笑うと驚いた顔をしている真の手をとり、徹たちが消えて行った空に背を向けて歩き出した。町の人たちが少しだけ動き出し始めた。
「今日のご飯は私が作るよ。何がいい?」
「・・そうだな、」
空はもう、夕焼けに染まっていた。世界中の人たちが、ほんの少し切なくなる時間。
コスモレンジャー 霜月 風雅 @chalice
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