第4話 最終話・・・平和になってほしい・・・

 だめか・・・


 飼育員さんも、軍人のおじさんたちも残念そうな表情でそう言った。


 軍人のおじさんたちは、


 飼育員さんを後ろにどかし


 僕に向けて銃を構えた。


 一斉に数十発の銃弾が僕にめがけて放たれた。


 僕の、皮膚は硬く、そう簡単には傷つかない。


 しかし、数十センチ先から放たれた銃弾は


 僕の硬い皮膚を押しのけ刺さっていく。


 血が流れる。


 たくさん流れる。


 今まで流した事が無い量である。


 もちろん心臓にまでは銃弾は届かない。


 しかし、流れすぎた血は


 僕の足の自由を奪い、巨体を倒すには充分であった。


 飼育員さんは、駆け寄り泣きつく


 泣きついたように見えた。


 泣きついてほしいと思ったのかもしれない。


 飼育員さんは、銃弾でも死ねなかった僕の口をこじ開け


 バケツの中身を一つずつ入れていく。


 さっきは、抵抗できたが


 今はもう、抵抗する力もない。


 いつもは、おいしい果物や野菜が


 すべて苦い・・・


 吐きそうになるが、どんどん詰め込んでくるから吐けない。


 だんだん意識が薄れていった。


 これで、戦争で逃げて被害を出さなくて済む。


 そこにいた、飼育員さんや軍人の人たちが口々に言い


 喜んでいた。


 そう、戦争でおりが壊れたら逃げて人に被害を与えると思われたらしい。


 薄れゆく意識で空を見上げる。


 空のB29は、


 まだ雨のように爆弾を落としていた。


 その爆弾が、僕たちがいる場所にも落ちてくる。


 飼育員さんも軍人さんも逃げるが既に間に合わないのを見ながら


 僕は息を引きとった。


 戦争が無ければまだ生きられたのだろうか。


 飼育員さんとまだ楽しく暮らせたのだろうか。


 次は、いい世の中に生き返れればいいな。



 いい世の中に・・・。

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ゾウになった僕 mosurapapa @mosurapapa

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