イジメられる方に原因がある

血の繋がった家族であるお祖父ちゃんお祖母ちゃんの前では大人しくしてるのに、二人が見てないところでは、弟をはじめとした小さい子達に理不尽な態度をとるモモカちゃんに僕が注意とかしても、それはまた僕の前でやらなくなるだけだと思う。そして、僕の見てないところで同じようなことをするんだ。


僕が子供の頃にもそういう子はいた。口煩い大人の前では良い子のふりをしてるのに、大人が見てないところでは他の子をイジメるって子が。モモカちゃんの姿は、その子にそっくりだった。その子の場合は、両親がすごく厳しい人だった。授業参観とかで学校に来た時も、ちょっとしたことでその子のことを怒鳴って場を凍らせることが多かった。


その子が後で何をしたのかも、僕は知ってる。中学の時に同級生をイジメて自殺未遂にまで追い込むっていう事件を起こしたんだ。しかもその子のお母さんはPTAの役員をしてて、その子自身も教師とかの前では真面目な良い子のふりをしてて、それで結局、『イジメられる方に原因がある』ってことでうやむやにされた。


確かにイジメられてた子も、よく宿題を忘れてきたり授業中にノートに落書きをして担任に叱られてることがある子だった。でもだからって階段から突きとばしたりしていい訳じゃない筈だ。


それって、大人なら<暴行傷害>や<殺人未遂>で逮捕されてもおかしくないよね? なのに、子供だからって、学校の中でのことだからって、<子供同士の喧嘩>で済まされてたんだ。


他にも、いきなり飛び蹴りをしたり、教科書を窓から捨てたり、上靴をゴミ箱に捨てたりってことをしてた。なのに、そのどれもこれもが『イジメられた子が原因を作ったのが悪い』って話にされたんだ。


これってどういうこと? 子供のすることだから許されるべきだってこと? 暴行も傷害も窃盗も、少年法で守られてる子供だからやってもいいってこと?


僕はそうは思わない。『イジメられる方に原因があるからイジメても許される』なんて思わない。でもその子は、そう思ってたんだろうな。


『自分は些細なことで親から殴られたり怒鳴られたりするんだから、不真面目な奴には何したって良い』


みたいなことを。


モモカちゃんは、大人を信用してない。その態度を見てれば分かる。目を見れば分かる。美智果が僕を見る目とは全く違うんだ。モモカちゃんのそれは、『煩いこと言ってくるから、今だけ言うこと聞いてるふりしとけばいいか』っていう目だった。


モモカちゃんからそう思われてる僕が何を言ったって彼女には届かないってことを知ってるんだ。


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