鶴の吐く息ほの白し霜の声

【読み】

 つるのはくいきほのじろししものこゑ


【季語】

 霜の声(三冬)


【語釈】

 霜の声――「霜の降りた夜の、冷たくさえてしんしんと更けゆく様子をいう語」(デジタル大辞泉)。


【大意】

 しんしんと霜が冴えて更けていく夜に、鶴の吐く息がほのかに見えるのであった。


【附記】

 鶴、息、霜と白いものを3つ、また息と声と肉体を想起させるものを2つ配合した。わが子を思う親の心の厚い者をいう「焼け野の雉夜の鶴」はここでは特に関係ない。


 なお、「鶴」「息白し」も三冬の季語とされる由。


【例句】

 粟飯の焦て匂ふや霜の声 其角きかく


 梅白し昨日きのふやつるを盗まれし 芭蕉

 鶴の声菊七尺のながめかな 嵐雪らんせつ

 日の春をさすがに鶴の歩み哉 其角きかく

 吹井ふきいより鶴を招かん時雨しぐれかな 同

 青陽せいやうの空に鶴咲き花の声 鬼貫おにつら

 鳴渡る鶴の高さよ霜の月 卯七うしち

 ろふそくの涙氷るや夜の鶴 蕪村

 はるの海鶴のあゆみに動きけり 青蘿せいら

 さのの小春和哥わかの浦辺は鶴あらん 同

 雛恋ふる親のこころや夜の鶴 同

 ゆく月や国なきかたに田鶴たづの声 几董きとう

 白浜や鶴たつあとのおぼろ月 梅室ばいしつ

 梅散りて鶴の子寒き二月かな 内藤鳴雪

 元日や朝日に鶴の羽つくろひ 正岡子規

 鶴一羽いね刈るあとの夕日哉 同

 夕陽せきやうや刈田に長き鶴の影 同


 海暮れて鴨のこゑほのかに白し 芭蕉


 暁や鯨のゆる霜の海 暁台きょうたい

 はつ霜や野わたしにのる馬の息 几董

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る