夕顔やあるじなき家の夕明かり

【読み】

 ゆふがほやあるじなきやのゆふあかり


【季語】

 夕顔(晩夏)


【大意】

 あるじのない家に夕明かりして、夕顔が咲いていることである。


【附記】

 珍妙なことをいうと、こうした句を詠むことで「無い」という状態(数学的にいうと「0」)を表現しようとしているのかもしれない。


 別案、「夕顔や人ありと見えて留守の家」。どちらを採るか迷いもするが、字余りもなくすっきりしている分、現行案が良いかと判断した。現行案には「夕」の字が重複する瑕があるものの、ヤ行の音が良い塩梅に配されているとも思う。


【例句】

 夕顔や酔うて顔出す窓の穴 芭蕉

 夕顔の屋根に桶干す雫かな 尚白しょうはく

 夕顔や白き鶏垣根より 其角きかく

 夕顔に筆耕書ひつかうかきの机かな 牧童ぼくどう

 夕顔の花噛む猫や余所よそごころ 蕪村

 ゆふがほや竹焼く寺の薄煙 同

 夕顔の中より出づる主かな 樗良ちょら

 夕顔の花踏むめくらすずめかな 暁台きょうたい

 夕顔や馬洗ひ居る武士の妻 内藤鳴雪

 淋しくもまた夕顔のさかりかな 夏目漱石

 夕顔に車寄せたる垣根かな 正岡子規

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る