夕立ちや七尾のきつね子をはらむ

【読み】

 ゆふだちやしちびのきつねこをはらむ


【季語】

 夕立(晩夏)


【大意】

 夕立ちの降る空で、七尾のきつねが子を身ごもるのであった。


【附記】

 日照り雨(天気雨)を「きつねの嫁入り」と称すると聞き及ぶ。そしてこの国では虹が七色から成るとされる。


【例歌】

 おほひえやをひえの雲のめぐり来て夕立すなり粟津野の原 賀茂真淵


【例句】

 夕立にやけ石寒し浅間山 素堂そどう

 夕だつや石山寺の銭のおと 同

 夕立の山や目覚た枕もと 土芳とほう

 夕立や法華かけこむあみだ堂 其角きかく

 夕立や田を三囲みめぐりの神ならば 同

 夕立にはしり下るや竹の蟻 丈草じょうそう

 白雨ゆふだちや鐘ききはづす日の夕 史邦ふみくに

 夕立の跡の薫る日陰哉 北枝ほくし

 夕立や智恵さまざまの冠物かぶりもの 乙由おつゆう

 白雨や山伏里に入りかかる 万乎まんこ

 夕立や海を涼しく飛ぶいなご 亀柳

 夕立や遠目に馬もぬれ鼠 存義ぞんぎ

 夕立のはれゆく声や上の町 太祇たいぎ

 夕だちや草葉をつかむむら雀 蕪村

 夕立やたけく鳴来る竹林 嘯山しょうざん

 ゆふだちや市の中ゆくささら波 召波しょうは

 君王のゆふだち誉るうてなかな 同

 ゆふだちのはるるにつれて月夜かな 樗良ちょら

 夕立や鼠巣に死ぬ茶の木原 暁台きょうたい

 夕立や百姓門に出てながむ 蝶夢ちょうむ

 夕だちやけふのあゆみも未申ひつじさる 几董きとう

 白雨や水晶の数珠ずずのきるる音 同

 夕立や耳の底なる鶏のこゑ 成美せいび

 夕立が始る海のはづれ哉 一茶

 夕立やほつりほつりと石の上 森鴎外

 夕立や虎の尾怒る河の渦 幸田露伴

 見てをれば夕立わたる湖水哉 正岡子規

 水鳥の夢驚かす驟雨しうう哉 寺田寅彦

 夕立や菱の上飛ぶ水馬 松藤夏山

 夕立の来べき空なり蓮の花 芥川龍之介

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