エピローグ 今日もやっぱりいつものお嬢様
「いってきまーす」
「いってらっしゃーい」
学ラン装備の俺は靴履いて玄関を飛び出した。
いつものところで、いつものように、いつもな優雅さで立ってる紺セーラー美麗。
「おはー」
「おはよう」
まぁ、前より少し笑顔な気がする。いつものタイミングで一緒に歩き出す。
「美麗ちゃんと寝たか?」
「あまり眠れなかったわ」
「おいぃ~またかぜぶり返したらどーすんだ」
「仕方がないわ。朝雪に会えるのが待ち遠しかったのだから」
あまりに昨日の出来事が夢っぽすぎたからほんとに夢かもしれないという可能性を捨てきれていなかったが、美麗のセリフからしてどうやら昨日のことは本当らしい。
「またまた美麗はそーやってよいしょするー」
「思ったことを言っただけよ」
そーやってよけーに追い打ちかけてくるー。
「あ。なぁ美麗」
「なに?」
「幼稚園のときに美麗をプリンセスずっといつもとか言って、それへの美麗の返事教えてくれっ!」
ずっと引っかかってるこれ!
「どうしようかしら」
「なんだよ尽くすとか言ってたのはやっぱ夢だったのかよー」
「それとこれとは別よ」
「ちぇー」
美麗ちょっと笑った。
「……でも、わたくしは雪に甘いから、教えてあげるわ」
「さっすが美麗様!」
神様仏様美麗様~!
「雪が『みれいがんばった。ずっとぼくのぷりんせす。いつもずっと』と言ったことに対して、わたくしが言った言葉は」
どきどきわくわく。
「『ぷりんせすってなに?』よ」
「ぶはあっ!! そりゃ笑うわぶくくっ」
だってそのセリフを言ったのが美麗ってんだからなぁ!
「そのころからすでにわたくしより雪の方が博識だったのね」
「だーらマンガアニメ絵本知識を美麗の習い事と並べんなっつーのっ」
美麗笑ってる。
「でも、これには続きがあるのよ」
「は? 続き?」
「ええ。雪はすぐぷりんせすとは何かを教えてくれたわ」
「『お姫様じゃい!』か?」
あれ、首横に振ったぞ。おい当時の俺の知識も雑だなおい。まぁ俺だしなうんうん。
「じゃなんて説明したんだ?」
美麗は俺を見ながら歩いてる。電信柱があったら危ないぞ。
「『ぼくがいっしょうたいせつする』よ」
まっっったく覚えてねぇ。
「そ、それは説明になってんのか?」
「そう想ってくれたことがうれしかったわ」
「でもさぁ幼稚園児だぞ幼稚園児!」
「ならなおさら純粋に想ってくれていたようでうれしいわ」
くぅ~。
「ぇ、じゃあまさか……美麗、俺のこと……す、すきぃ~、になったのって、まさかまさかの幼稚園から……?」
あ、美麗さらに笑った。
「ええ」
「ぬおぉ~」
俺は登校中だがひざと手を地面についた。
「美麗こそ早く言えよぉぉ……何年経ってっと思ってんだぁぁ……」
んじゃなにか? 小一からすでに付き合えてたとかそんなん? まぁ小一とか付き合うってことすら知らなかったろうけど。てか今でもあんまわかってないんスけどね?!
「わたくしのことを大切にすると言い出したのは雪からよ」
「覚えてねぇよぉぉ」
頭なでてくるし。
「わたくしはその言葉をずっと信じていたのに、忘れていた雪の方がひどいわ」
「無茶言うなよおおっ」
あーもう美麗笑ってるから許してやるけどさ!! フンッ!
「でも……今、わたくしを選んでくれたから、うれしいわ」
「ぐぬぬぅ」
学校に着くとみんなが寄ってきて、美麗は元気になりました報告を行っていた。津山のポーズが一段と輝いてたように見えた。
美麗が一週間休んでいたことは後輩たちにも伝わっていたようで、給食の時間や掃除の時間などでも後輩たちが寄ってきていた。
午後の授業が終わって、やっぱり一緒に帰る俺たち。
毎日一緒に登下校してることは知れ渡っているので、まさかお付き合いを始めたとはばれておるまい。美麗はやっぱりいつもの美麗だったし。
「どうだ? 久々の学校は」
「まだ調子が戻っていない感じがするわ」
「寝ろ」
「そうね」
はたから見てる分には充分いつもの美麗だったと思うんだが。
「……あ。そういやさ美麗」
「なに?」
「まだ海のときのなんでも美麗を命令ゲフゴホお願いできます権利、使ってないよな」
「決まったのかしら」
ん~。
「決まったというかなんというか……」
「どういうことかしら」
「それ、有効期限とかあるか?」
「特にないわ」
ほー。
「五年十年先でもおっけ?」
「構わないわ」
うーんなんて便利な権利なんだ。
「……じゃ、時が来たら使うぞっ」
温存しまくりだが、やはり大事に大事に取っておかねばなっ。
「待っているわ」
それまで美麗とけんかとかしないようにしなきゃなぁ。
「じゃ、それはそれとしてー」
「こらっ……」
あーさらさら。ちょーさらさら。
「だめ?」
「だめじゃないけど……」
「じゃさらさら」
「もうっ……」
美麗の頭をなでなでしながら髪さらっさら感を堪能。
「そんなに気に入ったのかしら」
「そりゃ美麗だもん。好きに決まってるっ」
うぉーつやつやすべすべ。あ、好きとか言っちゃった。
(てかまたそーやってかわいい表情するー)
ただでさえきれいでかわいいのにそんなてれてれうへへな表情するとか反則すぎー!
「……うれしいっ」
右手をほおに当てて、てれながら上目遣いに見てくる美麗。これってやっぱ、俺が隣の家に住んでてずっと仲良くできた特権のおかげかな?
(ま、彼氏特権のおかげかな!)
俺はかわいい美麗の頭を優しくなでていた。
数あるお嬢様との特権 ~完~
数あるお嬢様との特権 帝王Tsuyamasama @TeiohAoyamacho
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
同じコレクションの次の小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます