最終話 美麗と古河原家、俺と美麗
土曜日にあんなことがあったものの、日曜日は特に呼び出しがなかったので、美麗が回復したのか他に看病してくれる人がいたかなんかかなーとか思っていたが、月曜日の朝、玄関を開けても美麗は立っていなかった。朝ごはん食べてるときに一真がピンポンしてきて今日も美麗は休むということを聞かされていたし。
香月をはじめとするおなじみメンバーは少し心配していたが……
火曜日も来ない。
水曜日も来ない。
木曜日になっても来ないと、ずっと来ない美麗のことを日に日にみんなさらに心配していった。
でも香月がお見舞いに行くと普通にしゃべってくれたらしいので、そんな大騒動とかにはならなかったけどさ。
でも金曜日も来なかった。
これだけ来ないと隣に住んでる俺にもよく話を振られてくるんだが、俺は土曜日に行って以降特に古河原家には入ってないし、電話でしゃべったわけでもないのでよく知らなかった。
というか俺人生で学校のある日に一週間近く美麗の顔を見ない日なんて初めてだった。夏休みとか長い休みの期間ならちょいちょいあったとはいえ。
そりゃー俺だって心配さっ? でもまぁ、家族の人いるし。ほんとに俺必要だったらまた紗羽姉ちゃんとかからあんなふうにお願いしてくるだろうし。
土曜日。一日中家にいていたが、やっぱりなにもなし。電話もインターホンもない。こっちから電話しよっかなとかも少しは思ったが、なんかする気になれなかった。もし寝てるの起こしたーとかだったらあれだし。
日曜日。もう一週間は過ぎた。
ま、まぁ病院で入院とかだったらそれこそ紗羽姉ちゃん辺りが連絡してくるだろうから、おうちでゆっくり寝てるんだろううんうん。
朝ごはんを食べてのほほんしていたが、昼寝したい気分だったので寝ることにした。
美麗はちゃんと寝られてんのかな。
布団かぶって目を閉じれば美麗が俺にもたれてきた温かさを思い出す。
(むが~ふが~! 俺は、俺はまだこんなところで倒れるわけには~!)
「ん、んん~……」
悪魔軍の大軍勢にもみくちゃにされて超劣勢というか絶体絶命の大ピンチだったところで目が覚めた。
「たす、かった……」
目を開けると俺の部屋だった。
「今何時だ……?」
昼なのはわかるが、目覚まし時計をっと……。
「……ぁ?」
俺は振り返って目覚まし時計を取ろうとしたんだが……その振り返る途中に見えたもの……いや、人がっ。
「おはよう」
そこには、笑顔の美麗が座っていた。白いブラウス装備で髪さらさらの。
(ふぁ?! み、美麗!?)
「うあわあぁあ!!」
変な声叫んでもーた。
「うるさいわ」
「さーせん。じゃなくて美麗!? おい美麗なのか!?」
俺はベッドから飛び降りて、美麗の横に座った。スカートと靴下も白かった。
「ええ」
「美麗かー、元気になったのか!」
「おかげさまで」
おおお~! 美麗だ! 美麗がここにおる~!
「ったく一週間も休みっぱでみんな心配してたぞー?」
なんか美麗笑顔だな。
「雪」
「んだよ」
さらに笑顔になったな。え、ほんとに美麗だよな?
「てうわちょわっ?!」
そんな美麗が近づいてきたと思ったら、だ、だだ、抱き、抱きっ。
「おいおい美麗!?」
しかもめちゃぎゅーぎゅー締めつけてくるしっ。首は狙わないでくれよっ。
「ま、まじでなんだおいどうした美麗ぃ~!?」
美麗はちょっと顔を離した。けどそれは俺の肩らへんからの距離のことであって、俺の顔の前にやってきた美麗はめちゃくちゃ近かった。
「……会いたかったわ」
もうなんか、笑顔というかなんというか。
「はあ!? おい美麗まだ熱続いてんじゃね!?」
「本当よ」
いつもまっすぐ見てくる美麗だが、こんな近くで見られると……。
「で、でもさ、お盆のときとか、一週間くらい顔見ないときもたまにはあるし……さ?」
まだ美麗の腕は俺の肩に乗ったままで、首の後ろに手が回されたまま。
「……なぜかしら。この一週間はとてもさみしかったわ」
「いやいや家族いたっしょ」
「ええ。でも雪は来てくれなかったわ」
「いやいや家族いたっしょってばっ」
あれー。俺一週間以上前の美麗の記憶吹っ飛んでんのか? こんな表情したことあったっけ。
「それでも会いたかったわ」
「あ、お、おぅ」
ごりごり推してくる美麗。
「ま、でも元気になってよかったな」
「ええ。雪のおかげよ」
「いや俺初日だけだし」
「あの日来てくれたから、その後しんどくても頑張れたわ」
「なんだよ、やっぱその後もずっとしんどかったのかよ」
「もう平気よ」
「えがったえがった」
なんとかいつもどおりのテンションで言えてる気がするが、近い近い……。
「ありがとう、雪」
「……お、おうっ」
そんなまじめに、でも笑顔でお礼を言われちゃ、俺の調子も狂うってなもんだ。
「……この一週間で、よくわかったことがあるわ」
「よくわかったこと? 紅茶うまいとかか?」
ふむ、違うらしい。
「……わたくしの人生において、雪はとても必要な人、ということよ」
「お、おいおい」
ありがたいけど、またそれも堂々と言われるとてれると言いますかなんと言いますか。
「雪にとっては、わたくしは必要な人になれているのかしら」
「あたぼうよ。だから心配もしたし毎日一緒に登下校してるし毎年海に行きたいんだろ?」
美麗さらに笑った。
「それもそうね」
「わかればよろしい」
なんか今年は美麗スマイルをいっぱい見ている気がする。
「……雪」
「んだよ」
「今日、雪のお父さんとお母さんと三人で夜ごはんを食べに来てくれないかしら」
「夜ごはん? ああ、いいけど……美麗元気になりました発表会か?」
「ええ。雪や雪のお父さんとお母さんにも心配をかけてしまったわ」
「気にしすぎだろう。またかぜひいたら俺呼べ呼べ」
「ええ」
いつもよりちょっと声のトーンが高かった気がする。
「……雪」
「んだよ」
今日はえらく雪雪呼んでくるな。
「……本当に、ありがとう」
「わあたわあた。え、美麗そんなにこの一週間苦しかったのか?」
「……少し」
「おぉぅぃ美麗が大丈夫と言わないとか、それだいじょばなさすぎだろ!」
「もう平気よ」
「いやいや、寝ろ」
「よくなってからも寝ていたわ」
「いやいやいや、寝ろ」
ここは断固拒否!
「……ふふっ、わかったわ。でも今日の夜は来てほしいわ」
「じゃごはん食べたら寝ろ」
「わかったわ」
これでまた要望が多いとか言われるんだろうか。でも寝ろっ。
「雪……」
「んだよ」
何回呼んでくんねーん。
「……なんでもないわ」
「どんがらがっしゃーん!」
美麗がなんでもないわ攻撃を仕掛けてきただと!?
「ほんとに目の前にいるやつはだれなんだよ……ええそう美麗は一体どこにいったんや……」
「そんなにも変かしら」
「変」
「そう」
で笑うっしょ?
「雪」
「なんやねーん」
「大好きよ」
美麗がそのまま目を閉じて近づいてきたと思ったら、もう唇が触れ合っていた。
しばらくして美麗が離れた。目がきょろきょろしている。
「……夜ごはん、待っているわ」
「あ、ああ……って、さ、さっきの」
て、美麗が立ち上がった。
「帰るわ」
「うぇー!? なんかコメントくれよ!」
なんか、いきなりあんなこと、てか、うぇ、うぇー?!
「もう伝えたわ。また後で会いましょう」
「おいぃぃい?!」
美麗は笑顔で、でもちょっとてれた表情で少し手を振って、ドアを閉めていった。
「おいぃぃ……」
俺は頭の中でさっきの声とさっきの感触が思い返されながら、ドアをぼーっと見届けることしかできなかった。
夜、湖原家三人は古河原家にやってきた。
この前のバックギャモン披露会場とは違い人数が多いので広間に集まった。今日はお鍋らしい。
「いやーお呼ばれしちゃっていいのかーい? 悪いねぇ~!」
「美麗が元気になれたのは雪くんのおかげだと聞いてね。元気になった姿を見せてあげないわけにはいかないし、お礼もしなければいけないしと思ってね」
「そんな気を遣わなくってもいいのよー?」
「みんなでごはんを食べるのも楽しいじゃありませんか」
「そーそ! ただのごはん食べる口実って思ってくれればいいのいいの!」
「兄ちゃん一緒に食べようぜ!」
「俺の戦場はそこだな、よし」
俺は右一真と左美麗の間に入った。これじゃ古河原家四人目のきょうだいみたいだな。
「美麗お姉さん?」
「なにかしら」
「なんでもありません」
美麗はとんすいとはしを取ってくれた。
「さんきゅ」
鍋おいち。俺たちはお鍋をおいしく食べた。いろんな具材とスープが絡み合う~。〆のラーメンもうま。
この一週間の美麗の様子を聞いた。初日こそ俺と紗羽姉ちゃんが担当したものの、二日目以降は主におばさんが看病したらしい。病院にはその二日目に連れてったが、入院するほどでもなかったとのこと。それでも苦しそうな状態が結構長く続いたが、金曜日の朝にはほとんど回復していたらしい。で、念には念を金曜日と土曜日も寝て、そして日曜日である今日のあれでこれである。
(寝起きだったんだから、あのことは夢と思っても間違いでもないような……)
「美麗が治ってよかったわー。あんなに苦しそうな美麗を毎日見るのはこっちも苦しかったわっ」
「バトンタッチするときめっちゃにこにこやったのに?」
「ほんとよほんと! 信じなさいっ」
「へい」
どのくらいのほんとレベルか知らないがほんとらしい。
「ま、オレは最初から姉ちゃんは治ると思ってたけどなっ」
「その割には空手の試合で散々だったって聞いたけどー?」
「そ、それは別に関係ないやい!」
美麗はおいしそうに〆のラーメンちゅるちゅるしている。お嬢様美麗なのにちゃんと音立ててラーメンすする潔さがたまらない。でも優雅。
「〆もうま?」
「おいしいわ」
本日も美麗さんのおいしいわ入りました。
「もうお口ふきふきしなくてもいいよな?」
冗談っぽく言ってみてもどうせ
「大丈夫よ」
普通に返ってくるだけだった。
と思ったら美麗はお口ふきふきして、立ち上がった。
「雪」
「ん?」
「大事なお話があるわ」
「おぉぅ、なんだ?」
美麗が立った状態で俺を見下ろしながらそう言ったもんだから、他のみんなの注目も集まっている。ぁ俺も立つべき? 俺も立った。
「この一週間……いえ、中学校、小学校、幼稚園、それより前から今まで雪と接してきて、よくわかったことがあるわ」
「お、おぅ」
みんなの注目浴びてるのによくへっちゃらだなおいっ。
「それは、わたくしの人生において、雪がとても必要な人だということよ」
「どっかで聞いたセリフだな」
美麗はちょこっとだけ笑った。
「わたくしは、雪が優しくしてくれるから頑張れるし、同じように雪が頑張ろうとすることを応援したい気持ちもあるわ」
「応援て、俺はただ美麗と楽しくわいわいしたいくらいしか思ってない……ぞ?」
「それでもいいわ。雪がわたくしに遊び相手を求めているのなら、わたくしも雪と遊びたいからちょうどいいわ」
「あー、おぅ、また遊ぼうぜ」
「ええ。でも……」
「でも?」
軽く手を重ねてる美麗の指ほっせ。
「……もっと特別な存在になりたいわ。雪からたくさんの気持ちをもらっているから、わたくしも恩返しをしたいわ」
「お、恩返してっ」
だぁらみんな注目してるってばーっ。
「だから……その……」
おいなんで紗羽姉ちゃんそんな目輝かせてんだよこら。
「雪……」
「あぃ」
ちょこっと視線が外れたが、またすぐ戻ってきた。
「わたくしは、雪と……お、おっ……」
おっおっ?
「……お付き合い、したいの。お願い、します……」
美麗は頭を下げながら…………え……?
父さん目と口開いてる!
母さん手で口押さえてる!
おじさん手組んで美麗見てる!
おばさん穏やかな笑顔で俺見てる!
一真視線が俺と美麗を行ったり来たりしてる!
紗羽姉ちゃんなんだその気合入った目と両こぶし。
(お、おおおお、おお、お、おおお俺、あの、あの他の男子からは全部ぶった斬りまくったあのあの美麗から、お、俺にはこ、告白されてんのかーーー!?)
しかもなんでこんな両家族そろい踏みの場面で!? ぁああいやいや場面は今どうでもいいや。いやよくないけどいいや。
(しょ、正直よくわかってないと思う、付き合うとかそういうの。でもさ。でもでもさ。でもさっ。美麗は俺がいいって、俺と一緒にいたいって、ことだし……俺も美麗と一緒にいるのは問題ないっつーかむしろ今までどおり楽しくなりそうっていうか……)
てかあれだよな?
(美麗様の命令は絶対ルールっ)
「……み、美麗っ」
さあ俺、返事を述べるのだ!
「……俺なんかでいいの?」
ちょっと間の抜けたトーンになってしまったっ。
「雪がいいのよ」
頭下げながらいつもに近いトーンでそんなこと言われて、つい笑みがこぼれてしまった。
「……わかった。さんきゅ、美麗。今日から俺とは彼氏彼女なっ。よろしく!」
うわ! なんか拍手が沸き起こったぞ!
「いよっ! おめでとーーー!!」
紗羽姉ちゃんうっせーよまったくっ!
美麗は頭を上げた。
(うわあぁなんだよその笑顔!!)
とてつもなくかわいい美麗が俺に笑顔を向けてくれていた。
「わたくしこそ、わたくしでいいのかしら」
「おい。今までどんだけの数の男子振ってきてそんなこと言ってんだっ」
「え!? ちょっとその話詳しく!」
「雪、そんなことここで言わないで……」
「ぁ、つい」
「ほう、お父さんもぜひ聴きたいな」
「お父さん」
「あ、いや、はは」
「雪作ー! 男になったな雪作よぉー!」
「青春って、いいわぁ~!」
「姉ちゃん! 付き合うってどんな感じだ!」
「まだよくわからないわっ」
あ、美麗座った。俺も座ろ。
(あぁぁ……なんなんだこの美麗……)
俺に向かってこんなに笑顔でいてくれてるなんて。
「美麗笑いすぎ」
「仕方ないわ。うれしいもの」
「今までたくさんの男子がそのうれしさを求めて美麗に」
「もうやめてっ」
「あ、す、すまん」
たくさんの男子のことを思うと本当に俺なんかが選ばれてよかったのかとちょっぴり思ったが、でも美麗自身が俺を選んでくれて……
「明日は学校に行くから、待っているわ」
「ああ。美麗と一週間ぶりに登校できるなっ」
こんな笑顔の美麗、俺だけが受け止めていいのかっ。じわじわと実感がやってきた感じかもしれない。
「いやぁ~今日はいろいろとごちそうさま!」
「ぜひまた来てほしい。娘の彼氏の親なのだからな、はっはっは」
「弓子ちゃん、またね!」
「波子さん、またいらしてね」
「ばいばい妹の彼氏ー!」
「じゃあな姉ちゃんの彼氏ー!」
「途端に彼氏彼氏言いやがって!」
俺たち湖原家は古河原家のみんなに見送られながら広間を出……ようとしたが、美麗がついてきた。お見送り?
「雪、少ししゃべりたいわ」
「ん? なんだ?」
「じゃあお母さんたちは先に戻ってるわね」
玄関まで来て、父さんと母さんは先に出ていった。
美麗の部屋までやってきて、電気がつけられた。ぱち。
勉強机前にある勉強イスに座った美麗。もはや俺が勝手に操作することが多くなった追加イスを美麗の横に設置、俺も座った。
夜にここに来るってのはめったにないな。
「なんだ? 話って」
早速切り出してみる。
「てうわっ」
そして美麗も早速と言わんばかりに俺に抱きついてきた。
「なんだよ美麗、そんなこと今まで全然してくれなかったくせにー」
「……雪がしてくれなかったからよ」
「は?」
いや、あの美麗様に対して抱きつくとか、ねぇ?
「我慢できなくなったわ」
「……は!?」
「……告白も、してくれなかったわ」
「は?!」
ぬぁ!?
「し、してくれなかったわって、で、でもさぁ」
「……ふふっ。なんでもいいわ。雪がわたくしを選んでくれて、うれしいわ」
ぎゅーぎゅーしすぎっ。
「だから、どちらかってーと俺じゃなく美麗が選ばれる側で、俺だれからも女子から告白されたことなんてなかったし」
「そうなの!?」
「うあぁっ、そ、そんな驚くことか? てか美麗なんでそんなに驚いてんだよ!」
あの古河原美麗が驚く顔を見せた……だと!?
「どうしてかしら……こんなに優しいし、わたくしにはあれほど告白があったから、雪にはもっとあるものだと思っていたわ……」
なんて反応したらいいんスかぁぁぁ!!
「俺のげた箱に手紙入ってたの見たか?! 俺が帰るときに知らん女子から呼び出しくらったのを見たか?! ぁん?!」
美麗おめめぱちぱち。
「……見ていないわ……」
「そーゆーこっちゃウッウッ!」
これぞ一般ピーポーと美麗様との差。
「だったら、もっと早く告白してくれてもよかったのに。わたくしからしてしまったわ」
「おいおいっ」
あーうん、まあ、そうなのか……な?
「……わたくしはこれから雪に尽くすわ。わたくしにできることがあったら言うのよ」
「今まででも充分だと思うのに、さらにってなんかあっかなぁ」
「もうわたくしは……あ、あなたの彼女、よ。優しくしてくれるのはうれしいけど、遠慮はしないでほしいわ」
「わ、わあたわあた」
こんなきれいでかわいい人が、彼女……? 俺の?
「美麗だって俺に遠慮せず……その、ばんばんしゃべりかけてくるとか、思ったこと言ってくれるとか、なんかまぁ俺と一緒に盛り上がりたいことしてくとか、なんでも、どうぞ」
うぇ、さらにぎゅーぎゅー強まった。
「わかったわ」
てかずっとぎゅーぎゅーされっぱなしってのもあれだな。俺も美麗の背中に腕回してぎゅっとすることにしよう。
「……大切にしてね」
「任せろっ」
美麗は俺の胸から顔を離してこっち見てきた。
「……まだ雪から聴いていないわ」
「ぁ? なんのこと?」
脈絡ってもんがありますでしょ?
「わたくしからは言ったのに、まだ雪からは聴いていないわ」
「だぁらなんのことでい」
うーん? 美麗は答えを教えてくれないところを見ると、どうしても俺が一人で導き出さないといけない感じだなこれ。俺にクイズとか振られてもなぁ。
「雪は、義務でわたくしとお付き合いをするのかしら」
「んなことあるかいっ」
「じゃあ……言葉を、欲しい、わ」
んぁー。えーと、なにを言えばいいんだー。
(……なんでもいっか?)
「どれが正解か知らねーけど、じゃこの言葉で」
美麗はこっちをきらきらおめめで見ている。
「いつもずっと、愛してるぞ、美麗」
俺は思いっきりぎゅってしながら美麗の唇へ重ねにいった。
(……そろそろ?)
離してみた。目閉じてる美麗かわいい。あ、目開いた。
「……その言葉でも、いいわ」
「なんっだよ正解これじゃないんかい!」
笑ってる美麗かわいい。
「ふふっ、もういいわ。大好きよ、雪」
この日、というか俺人生において一番の愛情で美麗からぎゅってされた瞬間だった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます