星に願いを、貴方に愛を

東雲 彼方

催涙雨

 もしもしー?


 はいはいもしもし。


 や、元気?


 んー、ぼちぼち?


 なんだその微妙な反応は。


 特段良くも悪くも無いからぼちぼちっていう。いつも通りだよ。


 あー。なるほどね。私は低気圧にやられて死にそう。


 梅雨だからな、仕方ない。


 うん。


 にしても今日は雨酷いな。そっちはどんな感じ?


 こっちも結構雨酷いよ。今夜は雨かな。


 かもなぁ。


 そういや七夕の雨って催涙雨って言うんだね。


 知らなかったのか。


 だからこの前初めて聞いた時、催涙雨って言われると催涙スプレーの中身が降ってくるみたいな気がしてすげぇ危ないな、って弟と話してたわ。


 会話のレベルの低さよ。


 それは君も人のこと言えないでしょうよ。


 俺はいいんだよ。


 なんでだよ?! ところで話変わるんだけれども、


 はい?


 雨ですね。


 雨ですね。さっきその話したよな?


 今日は何の日ですか。


 なんかあったっけ。


 あー、七夕なのに雨とか萎えるわー。


 あ、そういや七夕か。つーかここ最近七夕に雨降らなかったことってあったっけ。


 いや、無い気がする。ずっと雨。天の川とはなんぞやってレベル。


 だな。


 そういやさ、


 ん?


 この前小さい子たちが短冊に書いてて。


 おう。


「大きくなったらお花屋さんになりたいです」みたいなこととか書いてて可愛いなぁって思ったんだよね。


 ほう。


 だからついでに一緒に私も書いてきた。


 マジか。ていうかついでとは。


 まぁそれは置いといて。


 置いとくのかよ。因みになんて?


 本当は三つくらい書きたかったんだけど、


 書いてないだろうな?


 辛うじて残ってた良心に引き止められて流石にそれはやめたんだけれども、


 そうしてくれ。


 まぁなんといいますか。


 はい。


 君に会いたいなって。


 おお……。


 聞いといてなんだその反応は。


 これは照れますわ。


 てへ。


 ちょっと悪寒が。


 拗ねるぞ。


 ごめんって。


 あい。


 短冊ね……最後に書いたの小学生の頃とかだわ。


 ほう、どんなの書いたの?


 確か好きだった漫画の値段下げろって。


 ふふっ、君らしいっちゃ君らしい。


 だろ。


 うん。まぁ私もシュークリーム食べたいとかそんなことしか書いてなかったけどね。


 お互い様じゃん。


 まあね。


 うー、あー、うーん……悩ましい。


 何さ。


 やっぱ違うの書いてくれば良かったなかなーと思いまして。


 ほう、どんな?


 突如15万降ってきますようにーって書くか、


 がめついな。


 15万あったら君に会いに行ってデートも出来るし他にも美味しいご飯食べたりとか色々やれるじゃないですか。


 それでもちょっと余るくらいじゃないかね。


 そしたら貯金するけどさ。で、あともう一つと迷ってたのよ。


 夢叶いますようにって?


 そんなん短冊に書くことじゃないね。夢を叶えるのは私の中で確定事項だから。


 そうですか。


 君の苗字さっさと寄越せってね。


 え。


 いやまぁそれに関しては半分くらい冗談というか、むしろ今までの話の8割くらい冗談なわけだけれども。


 おい。


 えへ。


 え、どこまでが本当のこと?


 短冊に書いたってとこまで。


 おいこら結構冗談じゃねぇか。


 だから8割って言ったじゃん。


 くっ。


 結局書いたのは君が幸せに暮らせますようにってね。


 おお……。


 そんで端っこに小さく、そしてあわよくば幸せに暮らしている君のそばに私も居させてください、ってね。


 うん。


 まぁそのうちね。そのうち。今はまだお金も無いし。


 うん。


 というわけで私の願い事叶えろください。


 は? 日本語喋って?


 まあそのなんだ、


 うん?


 幸せに過ごしてろってことよ。


 はいはい。


 幸せになってなかったら許さん。


 もう十分幸せだわ。


 もっとだもっと。体千切れるくらい。


 それは幸せなんだろうか……。


 細かいことは気にしないの。


 はい。


 んじゃそろそろ用事もあるのでまた今度ね。


 んな、勝手に電話掛けてきといて唐突な。


 私の可愛さに免じて許してくれ。


 愛してるよ。


 ……すぐそうやって小っ恥ずかしいこと言うの良くないと思うよ。


 あれ、言ってくれないんだ。


 今隣に親いるんだよ!言うかボケ、大好きだよバカ、じゃあね!!


 ふっ、結局言うのかよ、じゃあまたね。


 もう自分から電話かけるのやめよう……。


 えっ。


 またね!


 あっ。

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