それは模写のように……

三津凛

第1話

たとえば、ざわめきの中にいながらにして、そこから取り残されている。

人の間(あわい)にいながらにして、独りぼっちである。

そういうものを指して、孤独というのではないか。

いつまでも飲まれないままの、薄くなってゆくだけのアルコール。いつまでも食べられないで乾いてゆく、串から切り離されたままの焼き鳥。日付だけ書かれたままの、日記帳。

そういうものを、私は可哀想だと思う。

そして、人よりも聡くそのことに気づく自分も可哀想だと思う。

気紛れに普段は開かない文庫本を開いた時、ずっと探していた栞が見つかる。それが膝に落っこちた時、私はなんだか今日が良い日になりそうだと思う。

そして、そんな時には滅多に口をきかない人が私に話しかけてくる。そうして、思いもよらない出会いが花を咲かせて、それは未来に向かって花粉を飛ばしてゆくのだ。

トシヒロとミナコの出会いは、そんな風にして成った。



トシヒロは細々とバンド活動をしている男だった。大学を卒業してからずっと、煙草の煙のこもる狭い空間の中にトシヒロはいた。楽器も機材も安く、観客のガラだってよくない。

わざわざそんな所に行ったのは、会社の先輩から無理やり誘われたからだ。その人はもう30をとっくに過ぎているけれど彼氏の1人でもできたことがあるのか、とても怪しかった。

なんでも先輩はこういう無名の芽が出そうにないアマチュアバンドの追っかけをするのが趣味らしい。

私は氷ばかりで幾分アルコールの薄まった安酒を飲みながら、騒音にしか聞こえない音楽を聞いていた。先輩は奇声をあげて、はしゃぐ。

私は騒音が大きくなるほどに、虚しさを感じた。時折、ボーカルのトシヒロと目があった。好みではなかった。ただ、彼自身も今の境遇に膿んでいるのがありありと見えて、私はそこで初めてちゃんと音楽を聞こうかという気になった。

でも相変わらずそれはとても音楽には聞こえなかった。多分あの中で先輩だけがトシヒロの声を聞いていたのだ。

舞台がはねた後で、トシヒロの方から寄って来た。彼の態度は最悪で、「つまらねえ顔でこっち見てんじゃねえよ」と悪態をついてきた。

私もムキになって言い返した。

「あんた達の音楽はただの騒音だもの。ファンは喜ぶだろうけど、私には理解できない」

トシヒロはそこで固まった。

私は先輩を置いて、出口を目指した。煙草の煙が目にしみる。それがトシヒロには泣いているように見えたのか、慌てて追いかけて来た。

地上に出たところで、肩を掴まれた。

その掴み方が拍子抜けするほど優しく、私は不覚にもトシヒロに初めて好感を持ってしまった。気がつくとトシヒロは私のベッドに潜り込んでいた。





初めて寝たあとで、トシヒロは小難しい顔をした。

「セックスして、全部が終わったあとの枕ってまるで石みたいに硬くて冷たくなるんだよな。俺はこういう瞬間が一番虚しい……射精したあとよりもずっと、ずっと……」

私は半分寝ながらその戯言を聞いた。

男の言う孤独には、幾分自己陶酔が混じっていて、それだけ不純だと思った。初めから痛みもなく交われることは、それだけナルシズムを発酵させてしまうのだろうか。

「なあ、聞いてるか?」

「え、うん……」

「ほんとかよ」

私は宥めるように、なんとなくトシヒロのアンダーヘアーを指先で遊んだ。そのうち何本かがするりと抜ける。それを目の前に持っていって、しげしげと眺めた。それから、私は反対の手で無造作に自分のヘアーも抜いた。

その2つを見比べて、明らかな違いに溜息を吐く。床に落ちていたら、それは一目でわかるほどだった。

同じ寝床に包まって、どちらのものとも分からないほど体液が混ざり合っても、決して越えられないものがある。

私が堪らなく思う瞬間はこういう時だ。

決して私たちは芯までは融け合えない。それが孤独というものだ。

今日は勢いでコンドームはつけなかった。もしかすると妊娠するかもしれない。それがきっかけで、結婚するかもしれない。

それで、何年か経った頃にふと床に落ちるアンダーヘアーを見つけて、思うのだ。

2人の明確な断絶。決して私たちは融け合えない……。

「寝るわ」

トシヒロが背を向けた。

分かりやすい男、と私は思った。彼はきっと私を妊娠させたとしても後悔はしないだろう。眉ひとつ動かさずに、「堕ろせば」と言うかもしれない。

その時私は?

決して私たちは融け合えない。そういうのを、甘えなしの孤独だと思うのに、トシヒロは寝てしまった。

私も嫌になって、とりあえず寝た。




明け方頃、隣には誰もいなくて私はトシヒロが勝手に帰ったのだと狼狽えた。

私は裸のまま、そろそろと身を起こす。ベランダで気配を感じると、煙草の煙があけぼらけの中で見えた。

トシヒロは下着のまま、上は裸でぼんやり煙草を吹かしている。私はそれをガラスを通して眺めながら、無性に寂しいと思った。煙草の煙が、火葬場から昇る最期の一条の煙のようで悲しい。私は声をかけずにそれをただ見ていた。それはただ、孤独で美しかった。

トシヒロとは無言で朝ご飯を食べて、別れた。



トシヒロとはそれから定期的に会った。

避妊はしなかった。

会話はあまりなかった。時折、トシヒロがiPhoneで静かになにかのピアノ曲を流すくらいだった。それは静かで、悲しかった。

会わなくなってから、あれはショパンの雨だれ前奏曲だったと知った。

会うのは決まって夜で、トシヒロは当たり前のように私に夕飯を作らせて食べる。でも味わって食べるというのでもない。彼は酒に合うような、脂っこいものならなんでも良さそうだった。私もトシヒロも、そう若くはない。こんな食生活をしていたら早晩太るだろう。トシヒロは幾分整った顔立ちをしていた。でも素肌になれば分かる。下腹や顎の下には、日頃から溜め込んだ脂の残りがつきつつある。

私はぼんやりと、この人がこうして女に大きな顔をできるのはこれが最後なのかもしれないと思った。




「あんた、トシヒロと寝たでしょう」

唐突に先輩から言われて、つい反応が遅れた。

ふきだしをつけたら「やっぱり」と書けそうなど、先輩は呆れた顔をしてみせた。

「……えぇ、まあ」

私が真っ先に思ったのは、「この人と竿姉妹だったら嫌だな」程度のことだった。でも先輩は自分のことを話すわけでもなく、それ以上私に踏み込んでくることもなかった。意外なほどからりとした反応に、私は微かな確信を持った。

先輩はトシヒロとしていない。化粧っ気のない頰は同性に敵意を抱かせない雰囲気を出している。私は不思議な安堵にとらわれた。

「トシヒロはねぇ、もういいの。最近音楽もつまらないし」

先輩が再び会話を続けた。この人の話はいつも自己中心的で、唐突だ。音楽という割には、この人がアマチュアバンド以外のコンサートやライブに通っている話は聞かない。

「……あそこのライブハウスにね、最近すっごく変わった子がいるの。ミナコって名前の子なんだけど」

「そうなんですか」

「1人でピアノを弾くだけなんだけどね。なんかそれがすっごく凄いの」

私はちょっと鼻で笑った。深くものを考えたことのなさそうな、先輩の話ぶりがなんとなく哀れだった。

トシヒロと最後に会った日から、少し経っていた。連絡は一方的に途絶えていて、私は独りで寝る夜を持て余している。

「誘ったら、あんたも来る?」

そこで先輩はちょっと上目遣いになった。私は軽く顎を引いて、その視線の中に収まる。

「うん、いいですよ」




先輩に連れられるまま、私はトシヒロと出会ったあの地下の空間に立っていた。トシヒロのバンドは演奏することもなく、今ここで騒いでいる観客の誰も知らないようだった。

私はなんとなく白けて、壁に背をつけて次々と入れ替わる騒音に耳を傾けた。それはガラスの破片をぶつけ合うようで、これなら家でyoutubeの音楽を流し続ける方がよほどいいと思った。先輩も少し飽きたように欠伸をしている。私はその緊張の抜けた顔を、少しだけ可愛らしいと思った。

それから少し休憩を挟んで、いつもより照明が落とされた。床に散らばった紙質の悪いチケットや、アルコールの飲みこぼし、食べかすなんかがよく目についた。

「ほら、あの子よ」

先輩の声が瑞々しくなった。

ステージの袖から億劫そうになにかを運ぶ音がした。ピアノだ。それをひょろっとした女の子が眺めている。アップライトピアノがまるで聞き分けのない像のように見えてくる。苦労してステージにピアノを上げている何人かの背中に見覚えがあって、それはトシヒロだった。私はこの狭い空間の中で目まぐるしく変わっていく人間に、無性に胸を掻かれる思いがした。

ようやくピアノが納まって、ミナコがピアノ椅子に座った。椅子の高さをなれた手つきで調整して、なんの説明もせずに弾きだした。

「ベートーヴェンの月光」

隣の先輩がこそっと呟いた。

それから、ミナコは暗い曲ばかり続けて演奏した。私は憂鬱になって、汚れた床に目を落としながら聞いた。

何曲か弾いた後に、しばらく無音になった。私はようやく終わったのかと顔を上げた。弱った月灯りほどしかない狭いステージに向かって、埃が渦を巻いているのが見えた。

それまで猫背気味だったミナコが、わずかに顔を上げて、背筋を伸ばした。それから、聞き覚えのあるメロディーを弾きだした。それはこれまでの曲とは一変して昼間のように明るく強かった。

ベートーヴェンの「歓びの歌」だ。

音楽の教科書から出てきたそれは大きく伸びて、すぐにこの空間いっぱいに広がって唐突に終わった。

ぱらぱらと拍手が起きて、ミナコはすぐに袖へと引っ込んだ。

地上へ出ると、ステージに出ていた何人かがサインをしたりCDを売っていた。先輩はその中の何人かに声をかけて、CDを買うようだった。私はその間ぼんやりとさっきの女の子のことを思い出した。

しばらくすると、あの女の子も疲れたように出てきた。持ち物は何もない。孤独な狼のようで、その場にいた着飾った誰よりも不思議と目を引いた。

意外なことに何人かが群がって、愛想よく話をしたりサインをしたりしている。先輩も遅れてその群れに加わる。騒めきがひと段落した後で、私はそろそろと近づいた。

「……ああいう構成に、何か意味はあるの?」

不躾だと思いながら、聞いた。

近くで見ると、まだ若くて幼い顔つきに安心したからかもしれない。

ミナコはとても冷たい目をしていた。それは私の肌を通り抜けて、もっとずっと遠くのものに深く絶望しているように見えた。

ミナコは静かにiPhoneを取り出して、音楽を目一杯のボリュームで再生した。それは交響楽で、とんでもない不協和音だった。すぐ後に地底を這うように弦楽器が続く。

「ベートーヴェンの第9番終楽章の冒頭に何か意味はあると思う?」

「……え?」

「あなたの質問も、同じくらい意味不明ってこと」

音楽は無遠慮に続いていく。

私は混乱して、黙った。ミナコは少しだけ笑った。馬鹿にする風でもなく、憐れむ風でもなく、ただ笑った。

私はその笑い方が忘れられなかった。




先輩とは何度か一緒にミナコを聞きに行った。

ミナコのステージは確かに変わっていた。最初に弾くに2、3曲は暗い曲で毎回違った。でも最後に弾くのは決まってベートーヴェンの交響曲9番の「歓びの歌」だった。

何度目かそのステージを観たあとで、ミナコの方から声をかけてきた。

「一度、あなたの家に行ってみたい」

男をあげるよりかは抵抗がないと、私は素直に頷いた。トシヒロとはやっと、昨日会って寝たばかりだったけれどすぐに忘れた。




ミナコとは、トシヒロ以上に軽いセックスだった。無駄な肉がついていないせいか、暗がりで見るミナコの裸はちょっと男っぽかった。無駄毛のざらつきがない肌を撫でながら、やっぱりこの人は女なのだと実感する。

初めからコンドームの要らないセックスは呆気なく始まって、気がつくと終わっていた。

枕に頭を落ち着けると、自然とトシヒロの言葉がよみがえる。

セックスが終わった後の、石のように冷たく硬い枕。昨日も同じ枕を下にして、同じようなことをした。

私は自然と舌が滑らかになる。それは自分と同じ濡れた分泌液を舐めたせいではないだろう。

「こんなことをしても、私は誰とも溶け合えないって思うの。あなたはどう思うの?」

ミナコが私の方を向いた。私も同じようにミナコの方を向いた。

私と同じ身体のはずなのに、やはりそうではない。ミナコが笑って、自分の中指を私の唇に持っていく。そこを舐めると、私がいる。その後で、私は自分の中指を舐めてみる。

やっぱり違う。

同じ寝床に包まって、どちらのものとも分からないほど体液が混ざり合っても、決して越えられないものがある。

私が堪らなく思う瞬間はこういう時だ。

決して私たちは芯までは融け合えない。それが孤独というものだ。

「男としたって、女としたって、結局一つにはなれないってこと?あなたって、結構軽く誘われるでしょ?」

ミナコが呟いた。うん、と頷く。

「あなたって、そんなオーラが出てる。安っぽくて狡いね……」

私は動かないミナコの瞳を眺め続けた。夜明けの凪いだ海のように、それは広がる。

背中に手を回されて、肩甲骨の在処を確かめられるように撫でられる。

「ねぇ、私たちにとってセックスって簡単じゃない。誰としたって……でも、本当に必要なものは誰としたって、どんなことをしたって与えられないのよ。だから、孤独なのよね」

ミナコは笑って伸びをする。私のことは見ていなかった。そして、うつ伏せになると暗闇の中でiPhoneを探り出して音楽を流した。いつもミナコがステージの最後に弾くベートーヴェンの第9番だ。電子の放つ灯りは美しい銀色に見える。

「……ベートーヴェンの不協和音には、どんな意味があるとあなたは思うの?」

今度は逆に聞いてみた。

「強烈な自己否定」

ミナコは目を閉じた。

私は黙って、静かに手をミナコの腹の下に置いた。それを2回目の合図だと思ったのか、ミナコは微かに甘く笑った。

同じ寝床に包まって、どちらのものとも分からないほど体液が混ざり合っても、決して越えられない。決して私たちは芯までは融け合えない。

「私も、あなたと一緒でただ寂しいだけなんだわ。音楽はただの口実よ、私にとっては芸術なんてものじゃない。それを餌にして、あなたみたいな人をおびき寄せるだけ……。ベートーヴェンがなんて歌ってるか、知ってる?」

ちょうど、コーラスが始まった頃合いだった。

知らない、と呟く。

「あなたは再び一つにするであろう。厳しく隔てられた人々を。神の翼が安らぐところで、我らはみな一つになる」

ミナコは流暢に話した。

「私たちは結局独りぼっちなのよ。でもベートーヴェンはずっとこうやって歌うのよ、『みんな一つになる』ってね。あなたは信じる?私は心の底からは信じられない。でもそういう希望を……なぞることはできるでしょう。模写をするように、そうするしかない。そうやって、騙しながら生き続けるのよ」

私はぐるぐる考えて、やっぱりこの人のことは分からないとだけ思った。

そして、ふと現実に戻ることを思い出した。もう、生理が予定日よりも2週間ほど来ていないことを。




私は本当にできていたら、どうしようとぐずぐずした。トシヒロとは再び音信不通になっていた。ミナコのステージを何度か聞いたけれど、身が入らなかった。

しばらく先輩とも話さず、会社へ行って帰って寝るだけの生活を繰り返した。それから更に1週間ほどして、私は再びあのスタジオを一人で訪ねた。直接トシヒロに会ってみようと思ったのだ。

だがそこは空きテナントになっていて、人どころか看板すら黒塗りにされていた。

もう誰も来ない。誰にも会えない。

私はそこで再び、なにかが沁みてくるのを実感した。




私は独りで横になって、トシヒロの言葉を思い出した。


「セックスして、全部が終わったあとの枕ってまるで石みたいに硬くて冷たくなるんだよな。俺はこういう瞬間が一番虚しい……射精したあとよりもずっと、ずっと……」



あの地下の空間はもうない。

だから、もう会えないだろうと思った。これからもう二度と会えないことは、これまであったことすべてを無にしてしまうことと同じだ。

トシヒロなんて、初めからいなかった男なのかもしれない。ミナコなんて女の子もいたのだろうか。

凍えた子宮と、物言わぬ精子。

私はそれから、ミナコの言葉を思い出した。



「私たちは結局独りぼっちなのよ。でもベートーヴェンはずっとこうやって歌うのよ、『みんな一つになる』ってね。あなたは信じる?私は心の底からは信じられない。でもそういう希望を……なぞることはできるでしょう。まるで模写でもするように、そうするしかない。そうやって、騙しながら生き続けるのよ」



不意に下腹部が重く痛くなった。ついで、なにか生温かいものが広がった。

起き上がってトイレに向かうと、生理が来ていた。力が抜けて、そのまま便器に座り込んだ。これはなにかの悪戯なのだろうか。黙り込んだ濁った血がまたすうっと、身体の奥から流れ出る。

妊娠なんてしていなかった。心から、その事実に安堵した。

あの地下の空間は無くなってしまった。

トシヒロとミナコに会わせてくれた先輩も、気がつくと挨拶もせずに会社を辞めていた。大学時代から付き合っていた彼氏と結婚して、なんの未練もなくあっさりと辞めていたのだ。


明け方に吹かされていた煙草を思った。

それから、ベートーヴェンの歓び。

股の間に挟まれたナプキンに不快感を抱きながら、私はベートーヴェンを流した。よく聞くと、それは大きな物語のように壮麗だ。合唱が輪をかけるように私の背中を包んでいく。


我らはみな一つになる。

でも決して私たちは芯まで融け合えないでいる。

我らはみな一つになる

でも決して私たちは芯まで融け合えないでいる。



「セックスして、全部が終わったあとの枕ってまるで石みたいに硬くて冷たくなるんだよな。俺はこういう瞬間が一番虚しい……射精したあとよりもずっと、ずっと……」


「私たちは結局独りぼっちなのよ。でもベートーヴェンはずっとこうやって歌うのよ、『みんな一つになる』ってね。あなたは信じる?私は心の底からは信じられない。でもそういう希望を……なぞることはできるでしょう。まるで模写でもするように、そうするしかない。そうやって、騙しながら生き続けるのよ」


たとえば、ざわめきの中にいながらにして、そこから取り残されている。

人の間(あわい)にいながらにして、独りぼっちである。

色んな人の記憶を抱えながら、いつまでも独りきりで眠ろうとすること……。

まるで模写をするように、束の間浮かぶ人の間で、ようやく私はまだ生きていることを実感していたのだ。

それがとても痛くて、怖くて、私は独りのまま微笑んだ。

まるで模写でもするように、初めからそうであったように……。

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