第最終話 私にとっては、魔法だよ。

私はダイレクトボイチャで、緊張しているのが丸解りな感じで、目の前の彼に話しかけた。

「あ、あの、大丈夫でしたか?」


するとアンドロイドのキャラ姿の彼は、やや大袈裟なエモート感情表現機能で、身振り手振りでどれだけ危なかったのか説明しだす。

「いやー、危なかった。お目当てのポイズンソード諦≪あきら≫めて逃げようとしたけど、あと一撃で倒れてました。あ、俺はディオスって名前付けてます。あのー」


「は、はい。」


「良かったら、ID交換しませんか?今から1人で帰ろうにも、帰還用アイテムのワープドア持ってなくて、ははは」


まさかの展開で、まさかの提案だった。

フィオちゃんとジーナさんがシークレットボイチャで話しかけてくる。


「やったねみゃーちゃん!」


「これってまさか本当に魔法の効果?凄いじゃん!フレンドになりなよ!」


私落ち着いて返事をした。

「は、はい!よろしくお願いします!私はみゃーって言います。こっちの魔法使いの子が、ね…あフィオちゃんで、こっちはジーナさんです。」


フレンド登録メッセージに従って、フレンドになった。すると彼の頭上にディオスと名前が表示される?


「えーと、あ、フィオさんて言うんだ。ネアフィオかと思った。(笑)」


フィオちゃんが突っ込みを入れる。

「んもーみゃーちゃん、緊張しすぎ!」


「あ、あの、あの、私、私、雪の宮学園の生徒で、その、あの、アンドロイドのストラップ拾って、その、返したくて。持ってましたよね?ストラップ。」


彼は驚くと言うか、戸惑っていた。

「え?雪の宮学園の?あ、確かにストラップ無いけど、どうして……」


ジーナさんも慌てて突っ込む。

「ちょっとみゃーちゃん落ち着いて!明らかにおかしいよ!深呼吸深呼吸。」


「は、はい!落ち着いて、落ち着いて。」


「あの、何で俺のストラップを……」


「実は、貴方がいつも雪の宮学園の第1校舎の屋上で、クォンタムサーガをプレイしているベンチの、花壇を越えた後ろ向かいかのベンチに、私いつも座ってるんです。

気付いてもらえなかったけど。

それで貴方が教室に戻る途中でストラップを落としたのを、屋上で偶然拾ったんです。」


「あ、なるほど。ん?まさかずっと前から、後ろのベンチに?」


私はもうパニックになっていた。フィオちゃんもジーナさんの声も、頭に入ってるようで入って無かった。そして。

「リアルの私とも、お友達になって下さい!」


「えっ?」


ポカーンとした表情が想像出来る声だった。

でもこのチャンスは無駄にしたくない。その一心だった。

「私、私雪の宮の2年の宮沢雅です。よろしくお願いします!」


「あ、ははは。よろしく、宮沢さん。良かった、かなりあのストラップレア物だったから、ありがとう。じゃあ、俺もネタバレを。俺、佐藤って言います。宮沢さん、明日その屋上で会えますか?まずは友達からって事で。」


奇跡は、起きた。

「は、はい!」


シークレットボイチャで、笑いながらフィオちゃんとジーナさをが祝福する。


「あはは、もう、見てられなかったけど、みゃーちゃんらしいね。」


「あはは、本当にね。かなりハラハラしたよ!おめでとう!あの反応は脈ありだよ!」


こうして私は佐藤君とフレンドになった。私は明日告白しようと思う。泣け無しに勇気を総動員して。


フレンドになった後、私達はロビーに戻り、そこで彼は手を振ってログアウトした。

そして。


「良かった良かった。明日は勝負だね、みゃーちゃん!あ、それと今はジーナさんしか居ないし、ねむで良いよ。なんか三人の時はその方が良いかも、ふふふ。」



「ありがとう、ねむちゃん。」


「フィオちゃんねむちゃんって言うんだ、なんか可愛い名前だね。」


「えへへ。直に言われると恥ずいです。」


「あのね、ねむちゃん。」


「ん?なぁに?改まって。」


「私、ねむちゃんにスッゴい感謝してるよ。」


「ちょ、何、何、何、急に恥ずいって。どうしたのみゃーちゃん。」


「ねむちゃんの怪しげな魔法のおかげだよって、言いたいの。」


そう私が言うと、ねむちゃんは急にモジモジしだした。

「あ、あのね、みゃーちゃん。魔法って言うのは、その、私が初対面の人と仲良くなる為に、そう言っていると言うか。」


するとジーナさんが突っ込む。

「え、私は魔法と違うって言ったら怒りそうな勢いがあったから、突っ込まなかったけど、アッサリ否定するの?」


「立て続けにこんな奇跡が起きたら、なんか怖くなっちゃって。みゃーちゃんとはそんなに話せなかったから、私自身に勇気を持たせる為に魔法って言えば取っ掛かりとしては良いかな?って。」


「あー、なるほどね。やっぱりねむちゃんって可愛いね。ふふふ。」


「あははは…照れるから勘弁です。だからさ、みゃーちゃん自身が想いの強さでで引き寄せたんだよ。」


「ううん。本当に私は魔法だって思ったよ。私にとっては、魔法だよ。これからもよろしくね、ねむちゃん!」


ねむちゃんは照れながら魔法使いのキャラで、握手してくれた。

「もちろんだよ!」


「美しい友情だね〜学生時代に戻りたいよ。」


「ジーナさんは、とっくに友達だと思ってたんですけど……」


「あ、そう来るか〜私も照れるはそれ。」


私達は三人で照れくさそうに笑った。奇跡は起きた。この奇跡を無駄にしないようにしたい。

きっと大丈夫。本当の友達になった、不思議な魔法少女も付いてるからね。


おしまい。


<エピローグ>

次の日の放課後。第1校舎の屋上で、私は人生で初めての告白をした。結果は………OKだった。でも、今日は私はねむちゃんと帰る約束をした。


理由はいきなり一緒に帰るのが恥ずかしいのと、学園が終わった後、いつもいそいそと帰る彼女が、いったい何をやっているのか気になったからだ。


バスの中で、ねむちゃんは繰り返し本当に良かったの?と聞いて来た。もちろん良かったのだ。彼女を観察したら、もしかしたら普段も私は周りに対して普通に接する事が出来る気がしたから。


バスはいつもの駅に着く2駅前で、ねむちゃんは降りると言う。言われるまま降りて、それから繁華街へ、1度も来た事が無いからちょっ緊張する。


繁華街に入ってから5分程して、私の目に、派手な電飾看板が見えて来た。よく見ると、メイド喫茶&レストランって書いてある。まさか、ここ?


「みゃーちゃん、あれが私のバイト先だよ。あのビルの2階ね。」


ねむちゃんが指指した先は、5階建てのビルの2階、メイド喫茶&レストラン、プチアリスと書かれてあった。


促≪うなが≫されるままビルの中へ、エレベーターに入り、2階に上がり扉が開くと別世界が待っていた。

可愛いメイドの姿をした女の子が2人、笑顔で出迎えてくれる。


「お帰りなさいませ、お嬢様!」

「あ、フィオリンちゃん、今日ライブよろしくね。」

「うん!任せといて!


フィオリンちゃん?どうやらこの名前が、このお店でのねむちゃんのメイド名らしい。

と、それは置いといて。私は固まってしまった。初めてメイド喫茶なのもあるけど、彼女達は輝いていて、目を合わせられない…。

あれ?今ライブって、なんだろう?


「あの、ねむちゃん。ライブってなに?」

するとねむちゃんは、満面の笑みを浮かべる。

「ふふふ。さっ、ここに座って。目の前にステージがあるでしょ?私今日出番だから、ゆっくり見て行ってね。あと10分くらいで始まるからさ。ね。」


「バントとか?」


「お楽しみに〜!」

それだけ言うと、スタッフオンリーと書かれた扉に消えて行った。

あ、私1人になっちゃった。取り敢えずスマホを開く。スマホでゲームをしている間に、続々とお客さんが入って来る。みんなメイドさんの名前を口にしているから、常連様だろう。


ステージ開幕1分前、室内が暗くなり、アナウンスが流れる。

「お待たせいたしましたー!それでは本日のステージ開幕です!トップはプチアリスの元気印、フィオリンちゃんとメイちゃん、ラナちゃんにアマナちゃんだー!」


するとメイドの姿に着替えたねむちゃんが、3人のメイドさんと一緒にステージ上に現れ、マイクを手に取り勢いよく歌いだした。

「みんなー!今日は来てくれてありがとう〜!私達のステージ楽しんでってねー!」


スッゴイ元気な声だ。私は圧倒される。てか、その後の歌が、メチャクチャ上手かった。

お客さんもノリノリで、サイリウムと言う光るペンみたいなのを手に、オタ芸をして機敏な動きをしている。


「なるほど、ねむちゃんが元気なのって、ここでみんなに、元気をあげて、そして元気を貰ってたんだ。」


ステージ上のねむちゃんは輝いていた。私はなんだか彼女がうらやましくなった。私はまだまだだなって思えた。私もねむちゃんに負けてられない、そう思った。この出会いも多分奇跡。大事にして行きたい。そう心から思った。


ありがとう、私の、ううん、みんなの素敵な魔法使いさん!


<恋する少女と魔法?少女。>

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恋する少女と魔法?少女 ROI @roideena

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