第5話 忍者スタンピート
幼女は怒っている。
何故幼女が領主なのかを村人に聞いてみると、忍者集団が現れる前までは貴族や領主が優遇される異世界でありがちなテンプレ的な街であり、こそこそ小さい悪事を働くが至って普通の領主だった。
忍者集団は領主の不正を直ぐに見つけて突きつけ捕縛し、断罪したらしい。
断罪の内容は怖くて聞いてない。
幼女が領主だという事を鑑みると多分もうこの世にいないのだろう。
間接的に彼女から親を奪ってしまったのだろう。
地球なら裁判や刑務所があるがここは地球ではない、地球の常識は通じない。
「ごめん。君のお父さんやお母さん・・」
「何がじゃ?」
「え?何がって・・・」
「父上と母上なら館にいるけど?ワッチが領主を継がされたから領主として注意しに出てきただけじゃぞ?」
「へ?」
「ハッハッハッハッ神よ早とちりですな!彼女の親は死罪ではありませんぞ!悪政は働いていましたが、今廃するのは愚策ですからな!単純に彼女を傀儡にした方が便利ですからな!」
笑いながらとんでもない事を言う村人
「ちょ!本人の目の前で・・・」
「良いのじゃ、事実他の街とのいざこざも忍者だからという訳の分からない理由で無くなったのじゃ」
幼女が疲れたOLの様な顔をしている。
幼女には笑顔が似合うのはずなのにとんでもない哀愁が漂っている。
「それでワッチに何のようなのじゃ?宗教も忍者教?に改宗したし銅像も建てた。恥ずかしい看板も家にもぶら下げた。これ以上何もできないのじゃ・・・」
「おや?我々は神が他の街を見たいと言うので連れてきただけですぞ?」
「はっ!?そこの神の興味本位のせいでワッチは胃に穴が開く思いをしておるのか!?」
「すいませんすいませんすいませんすいませんすいませんすいませんすいませんすいませんすいませんすいませんすいません」
幼女に睨まれて幼女に謝る。リアカーに乗り亀甲縛りの状態で。
日本なら即通報、即逮捕の流れだ。
「もう好きにしてくれ・・。ワッチは疲れたのじゃ」
「好きにしてくれ?さっきから神が許しているからとはいえ、不敬ではないかな?」
忍者集団の目の色が一気に変わり武器を構える。辺りに尋常じゃない殺気が漏れ出す。
「ひっ!!ごめんなさいなのじゃ~!!」
幼女は腰を抜かし盛大に失禁した。
「ちょ!子供を虐めないで!お漏らししてるじゃないか!」
「ハッハッハッハッ神の前で汚物を見せるなど死罪にしますかな?」
「死罪にしますかな?じゃないよ!不敬じゃないから!幼女のお漏らしはある種の人達にはご褒美クラスだから!」
「神は幼い女の子が失禁される様が好きなのですかな?」
「違う!違う!僕は大人な女性が好きだよ!ある種の人達って言ったじゃないか!」
「ハッハッハッハッハッハッ」
村人達にからかわれるがそこに幼女のお漏らしと言う非日常がついている。
僕がオロオロとしていると館の方から走ってくる2人の人がいた。
忍者集団はシュバッて効果音が必ずつくから多分普通の人だろうなあと考えていると
「忍者教の方々!忍者の神様の前での娘の無礼をお許しください!まだ娘は修行中の身!どうかお慈悲を!」
腹がでっぷりとしているが、頬だけこけたザビエル頭のおっさんが土下座してくる。
「私の娘が粗相をしてすいません。神様どうかお許しを!」
巨乳、金髪の美人さんが、土下座をする。
胸が服から溢れそうで思わず凝視してしまう
「神も男ですな」
ニヤリと笑いながら僕の肩を叩いてくる村人
「べっ別に?みみてないし?」
「わかってますぞ、わかってますぞ神!」
物凄くうざい、失禁した娘の前でお前の母ちゃん胸見られてるぞってはっきり言われたのだ。
「神はワッチの母の胸が好きなのか?神も子供よの」
失禁している幼女にまでいじられる。
僕はパニック状態になった。
「私の胸で許されるならお好きにしてくださいまし!でも心は旦那様の物です!心だけはご容赦を!」
「いや!触りませんから!こんな格好ですから説得力無いですけど大丈夫ですから!」
「ぐぬぬぬぬ」
「あっあの大丈夫ですからね?あの本当に何もしませんから」
「ぐぬぬぬぬ!我が妻の胸に魅力がないと!?」
「そっちに、ぐぬぬぬってしてたのかよ!?それはそれでどうかと思うよ!?」
「私の胸は魅力がないなんて・・」
よよよっと崩れる幼女母
「魅力的ですよ!?だけど触らないから!!」
「ぐぬぬぬ魅力的だと!?やはり妻の胸が!」
「あ~!!村人とは違うめんどくささだ!伝わらないのがもどかしい!」
領主の館は領主親と忍者集団のせいで大騒ぎになっている。
「ワッワッチはどうしたら!?」
その光景を見て狼狽える失禁幼女。
シュバッと言う効果音と共に僕の背後に現れる村人。
「神、モンスターの群れが街に迫っていると報告が上がっております。如何いたしますか?」
「モンスター?ゴブリンとか?」
「いえ。オーガですが?」
「オーガ?何匹?」
「100は超えるかと、このままでは街は壊滅ですなハッハッハッハッ」
「街が・・ワッチ領主になったばかりなのに・・ワッチの街が」
領主達は顔面蒼白になり項垂れている。
「オーガって僕見た事無いんだけど、本とかだと1匹でもやばい奴だよね?」
「ハッハッハッハッそうですなあ。1匹でCランク冒険者が束になって向かっていく感じですかな?我々が体術のみで戦うなら苦戦する数ですな」
「へ?体術のみって何で?」
「いわゆる縛りプレイですな、神もお好きでしょう?」
「イヤイヤイヤイヤ時と場合を考えて!」
「では神が戦ってくれますかな?糸はほどきますゆえ」
「戦うのはいいよ。不本意とは言え僕のせいで街がめちゃくちゃになってしまった訳だし
「我等が神が単身でオーガの群れを討伐するとのお達しだー!街中に知らせろー!誰も近づけるんじゃないぞー!」
えっちょ!?1人!?嘘でしょ!?皆んなで行く感じじゃないの!?」
「さあ神を応援するぞ!」
「「「「ニーンジャ!ニーンジャ!アッソレ!ニーンジャ!」」」」
久しぶりの忍者コールが始まる。明らかに街の人を扇動して巻き込んでいる。
領主親子まで忍者コールをしている。
憮然としている僕に村人が囁いてくる。
「神ここで忍びライダーに変身ですぞ!」
「は?」
「ですからそっと変身して、モンスターを蹴散らすんですぞ!」
「えっ普通に倒しに行った方が良くない?」
「忍びライダー、一択ですな!」
「神よ、教官から贈り物がありますよ?何でも神の世界の黒い鉄の馬だそうですよ!忍びライダーになるならあげますよ?ならないならあげません。絶対に」
ニヤリと笑う村人
「えっバイク!?ヘーパイストスさん作ってくれたの?」
「どうしますかな?忍びライダーになって頂けますかな?」
バイクは欲しいけど、忍びライダーには絶対なりたくない。でもバイクは欲しい。
(一瞬変身して向こうで変身解けばいいんじゃないか!?これ明暗だ!)
「ちなみに監視はしてますからな、神の武勇は記録しますからな、向こうで変身を解くと黒い鉄の馬は永久に封印しますからね」
「ひっ酷い!!くっくそー!」
僕はヤケクソになりながら変身した。
『ゴットローブモードチェンジ!変身!忍びライダー!』
背後に爆破演出をきちんとつけポーズを決めて変身をした。
「「「「忍びライダー!忍びライダー!忍びライダー!忍びライダー!」」」」
村人のテンションはうなぎ登りだった。
「ささっこの黒い鉄の馬に乗ってください!」
村人が押してきた物は、黒のボディで前輪後輪を装甲でカバーし、フロントには 神と漢字で書かれたバイクだった。
『これが!我が相棒!』
「神曰くThe Faceless Godと言う名前らしいです」
『日本語で無貌の神か我が相棒に相応しい名前だ!』
僕がバイクに跨ると金色のラインが光り輝く
『では行くぞ!無垢なる民を護る為!忍びライダー出陣だ!』
重厚なマフラー音を鳴らしオーガが迫る方向に走り出す。
物凄いスピードで大地を疾走しあっという間にオーガ達の目の前に躍り出る。
『下賎な鬼達よ!我が名は忍びライダー!民の守護者だ!ここは通さんぞ!トウッ!』
僕はバイクの上に立ち
『忍法、嵐遁 暴風波!!』
嵐の膨大なエネルギーを一方方向に収束し放つ。極太のビームみたいな感じになる。
オーガ達の群れに風穴を開ける。
だがオーガ達怯まない、投石をしてくる者や威嚇しながらこちらに進行してくる者がいる。
『火遁、火龍炎舞!』
炎の龍を出しオーガ達を焼き殺していく。辺りにオーガー達の焦げた匂いが充満しだす。
『雷遁 大蛇舞!』
雷の大蛇が地を這い感電させてオーガ達を殺していく。
『最高にハイッて奴だぜー!!汚物は消毒だー!!』
久しぶりに暴れてるからか忍びライダーになった時の全能感からか僕は調子に乗りまくっていた。
「「「「ニーンジャ!ニーンジャ!アッソレ!ニーンジャ!」」」」「「「「忍びライダー!忍びライダー!忍びライダー!忍びライダー!」」」」
相変わらず村人達は僕を応援をしている。手伝う気は微塵も感じられない。
不意に身体に衝撃をうける。
『ぐうっ!何奴!石をぶつけるなんて痛いじゃないか!』
3本の角、8つの眼、赤黒い体躯。まさにオーガの王と呼ぶべき存在が目の前に現れる。
《ぎざま!人間!ゆうじゃが!魔王軍鬼人部隊の我が同胞をごろじまぐりやがっでゆるざんぞ!》
『勇者?勇者だと笑わせるな!!私は民を護る忍び。忍びライダーだ!覚えておけ!』
《じのびライダー?このへんだいが!ごろずごろずごろーず!!》
『デュランダル力を貸してくれ!』
デュランダルを取り出しオーガの王へ向けて横薙ぎに振るう。
ただかっこつけて振るっただけだった。
オーガの王の上半身と下半身が何故かサヨナラバイバイしていた。
『へっ?』
思わずすに戻ってしまう程の衝撃。これから魔王軍の幹部的な雰囲気の敵と死闘を繰り広げたり、激戦の末撤退させたりとか、ライバル関係になったりとか、物語にありがちな濃密なバトルが繰り広げられるはずだったのにまさかの一撃。
鬼達が来た方向にある森まで斬れている。
『あっあっ悪は去った!!さらばだトウッ!!』
僕は変身を解き体育座りになり呆然としていた。
血湧き肉躍る戦いがなかった。初めは3回忍術をぶっ放しハイになっていた、その後剣を横薙ぎに振るっただけでオーガの王や残りのオーガを一撃で斬り伏せてしまった。
「忍術いらないじゃん・・・デュランダル振り回してれば勝手に斬れて終わるじゃん・・」
「「「「ニーンジャ!ニーンジャ!アッソレ!ニーンジャ!」」」」
村人達の声が聞こえてくる。
耳を塞いでも聞こえてくる。
僕は理不尽な異世界の大地で泣いた。
「もう嫌・・」
巻き込まれた凡人にはスキルの恩恵無し!? 貝人 @kaihito12
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