第2話 行方不明殺人事件(前編)

相も変わらず、四方木は、

「あー、暇だ~。」

と、暇をもてあましていた。

「物理でもしーよやっ」

青色の本を取り出して、大学の入試問題を解いていた。

と、そこへ、

ドタドタドタ。ガチャ、バン。

「おーい、四方木元気かー。」

「煩い奴が来た。」

四方木が総合科学研究所に居た時、四方木に物の検査をよく頼んでいた、警部の佐々木である。

高校からの同級で、大学は同じだが、四方木は理学部、佐々木は法学部に進んだ。

そんな二人は共に真実の道に進んだ訳であるが、四方木は探偵になった。

「ある意味、同じ事を調べることになった訳だ。」

「僕は別に真実を求めるとは限らない。たとえ真実を求めても、逮捕はしないからな。」

「まあ、確かに。」

「ところで非番か?」

「ああ、まあな。」

「そうか。」

「スーツ着てないから分かるだろ?」

「まあ、たまに、私服警官の時もあるだろ?」

「めったにないからな。」

「そうか。」

「ところで、暇そうだな。相手してやるよ。」

「有難う?」

「金は貰うぞ。」

「鐘ならあるぞ。」

「まじか!どこで買った?」

「まぁ、京都だわな。」

「京都か。大阪から近いよな。3600秒で着く。」

「なんで、秒で言うかな。まあ、そうだけどさ。」

「何でって職業病?」

「少なくとも、秒の言う癖は理系職業ぐらいだろ?」

「そうだな。」

「そうだ。」

「これは?」

「画びょう。」

「これは?」

「霊びょう。」

「これは?」

「びょう写。」

「これは。」

「ガビョーン。」

「あはは。」

「ったく。」

「ところで、霊廟がなんでここにあるの?」

「さあ。」

「そうか。ところで・・・」

その時、ドアからノックの音が聞こえた。

「あの済みません、今大丈夫でしょうか?」

「あぁ、大丈夫ですよ。どうぞ入って下さい。」

「俺は帰るわ。じゃあな四方木。」

「あぁ。」

佐々木は帰り、二人は座った。

「あの、依頼とは。」

「えぇ、二日前から父を探しておりまして。」

「行方不明ですか?」

「はい。」

「それで、警察の方には?」

「いえ、警察には・・・」

「なぜ?」

「・・・。」

「分かりました。探しましょう。いつが、最後です?」

「はい、2日前、出かけると言って、それきりです。」

「それで、写真は?」

「これです。」

「これか。」

初老の風貌の男である。

「・・・。」

「・・・。」

「家に案内して宜しいでしょうか?」

「はい。分かりました。」

「その前にお名前は?」

「森田です。森田香奈。父は森田光輝。」

二人は森田の家に行った。

家の中を調べたが、

「特に、異常はありませんね。」

普通だった。特に、変わった痕跡は無かった。通帳、印鑑、パスポート、ある。

彼は普通に出て行ったことになる。

「さて、」

「どうですか?」

「よく立ち寄りそうな所分かります?」

「そうですね。本屋ですかね。」

確かに、本はいっぱいある。

「何処の本屋です?」

「確か近くの本屋さんです。」

「成る程、行ってみます。」

四方木は、近くの本屋に行った。

しかし、写真の男は居なかった。店員に見せたが、知らなさそうだった。

「これは、一度家に戻って立ち寄りそうな所を検討してみるか。」

というわけで、森田の家によって、考えてみた。

「どうでした、四方木さん?」

「居なかったので、もう少し手掛かりを探してみます。」

立ち寄りそうな所を家から、推理してみた。

「特にお金の減り具合は異常なし。」

博打の線は薄い。

「それから、ゴミ箱の中は、うわー、コンビニのレシートが多いな。」

しかし・・・

「しかし、近くのコンビニだな。時間は3時間後か。その間に・・・」

もし誘拐なら、身代金が普通だ。そうでないなら、なんだ?警察に言えない事、昔の仲間に連れ去られたとか?

う~ん、想像の域を出ない。

誘拐なら、必要だから、彼を連れて行ったんだろう。やはり、彼の過去を知るしかない。

と、思ったが、5年以前の記録がなかった。

「・・・何故だ?」

「どうかしましたか?」

「いや、その5年以前の写真だの、記録がないな~と思って。」

四方木は彼女をチラッと見たが、彼女は硬直していた。

「・・・。」

やはり、5年以前に警察に言えない何かがあるんだな。と、四方木は思った。

さて、どうしたもんかな、と思った。

「普通に出かけたと考えれば、誰かに連れ去られたと考えれば自然です。金目当てじゃない、何か。彼を必要とする誰かとなる。申し訳ないが、これ以上は分からない。」

「・・・、そうですか。」

や、と森田香奈は言ったが、それ以上言わなかった。

「分かりました。有難うございました。」

お金を貰って、四方木は帰った。

少し日が経って、ネットを見ていると、大阪市で絞殺遺体が発見された。

「何々、名前は森田光輝。なに?」

顔写真を見ると、顔写真は一致していた。

そう、探していた、森田光輝である。

「まさか・・・、そんな。」

ふと、以前の依頼がよぎった。

警察に言えない事。彼を必要とする誰か。今回の死体。

「やばい、彼女が。」

急いで、森田の家に行った。

ドンドンドン。

ドンドンドン。

「なんだい、騒々しい。」

隣の住人が出てきた。

「あの森田さんは?」

「知らないよ。」

ドアを捻ってみた。開いた。

「あれ、開いてる・・・。」

部屋の中を見て見ると、森田香奈の胸に刃物が刺さって、死んでいた。

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『探偵四方木理の推理事件簿』 峪明博 @sakoakihiro

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