第4話

 しとしとと、雨のそぼ降る夜。

 綺羅星は、兄上様からお輿入こしいれのお話を承りました。

 次の星の日が来て、綺羅星が十八のめぐりを数えたとき、隣町のお屋敷に嫁ぐこと、と。

 それは綺羅星がお屋敷に生まれたときから定められていたことで、隣町への使者を仰せつかっていたのも、すべて兄上様のおはからいでした。

 綺羅星と隣町のお屋敷様との華燭かしょくは、瞬く間に知れ渡り、町は悦喜えっきに包まれました。隣町との縁が強くなることは、この町にとって喜ばしいことです。綺羅星に仕える者として知らせを受けた星屑も、このたびの華燭はたいへんに意義のあることと承知していました。

 その知らせは二人を離すものでありましたが、丘の上で生まれた綺羅星と、丘の下で生まれた星屑は、どんなに星神様の導きがあったとて、いつかは離れることになるのだと、お互いに十分存じていたからです。

 星屑が、綺羅星の前でひざまずき「おめでたいことでございます」と一礼をすれば、綺羅星も「今まで、よく仕えてくれました」と労いの言葉を返しました。

 綺羅星は隣町に嫁ぎ、星屑は馬遣いの跡取りとして町を離れることはできない。――それは、ふたりが星にさだめられた正しい道なのでありました。


 ときは流れるように過ぎ去るものです。

 やがて綺羅星は、絢爛けんらん華駕輿はながよに乗せられ、馴染みある道を後にしました。

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