第107話 美月の手紙

あなたのタマは、違った、あなたの美月は元気です。

朝起きたら朝ごはんとお弁当を作って、お昼は学校でお弁当を食べて、夜は晩ごはんを作ってお風呂に入って寝ます。

規則正しい生活をしていると、何故か男子が寄ってきます。

男の気配が消えた、憂いの美少女などと言われるのは本意ではありません。

が、あなたは嫉妬するがいいです。

孝介さん、あなたは私に、でっかい借りがあるのですから。

借りで思い出しましたが、みゃーはあのキスを思い出してはニヤけてます。

ムカつきますが、その度にあなたの借りは増えていくものとご承知おきください。

ただ、不意に落ち込んだりニヤけたりを繰り返しているので、みゃーの男子からの人気は落ちたようです。

ついでに成績も落としたようなので、何とかしてください。


追伸 バレンタインのチョコは、取りに来るなら渡すつもりでしたが、来られなかったのでみゃーといろはさんとで食べました。

                        二月十五日 美月



春めいてきましたね。

暖かくなると、気持ちも股も緩んでしまいそうです。

……下ネタは、文字に起こすと恥ずかしいものだと気付きました。

ところで、チョーカーの鈴が落ちてしまいました。

新しいのを買ってください。

それから、新幹線の回数券を送っていただきましたが、あんな高いものを買うなら指輪のための貯金でもしろと。

でも、ゴールデンウィークには使わせてもらいます。

みゃーが田植えを手伝うと言ってますが、私は見ておくだけにします。

あなたの美月は元気です。

                       四月十日 美月



もうすぐ夏休みです。

アパートにゴキブリが出ました。

退治しに来てください。

……わがまま言ってごめんなさい。

夏休みに入ったら、あなたの美月はあなたに会いに行きます。

                            七月十二日 美月



あなたの美月は怒ってます。

先日、第四十八回乙女会議が行われました。

そこで、いろはさんが、こっそりあなたと連絡を取り合っていたことが明るみに出たのです。

道理で私が熱を出したときや、みゃーとすれ違いがあったとき、それから、落ち込んでいるときなど、絶妙なタイミングで電話がかかってくるはずです。

ええ、判っていますとも。

あなたにしろ、いろはさんにしろ、私達のために連絡を取り合っていたことくらい。

ですが、私達の知らないところで他の女性と連絡を取り合っていたという事実は揺るがないのです。

謝罪のキスを要求します。

                            九月二十一日 美月



あなたの美月はあなたを愛してます。

誕生日プレゼントが届きました。

一体、いつの間に指のサイズを知ったのですか?

このぶんだと胸のサイズもウエストもヒップも知られているに違いありません。

一週間後、みゃーにも同じ指輪が届くのでしょうけど、今だけは、私が正妻なのです。

ところで、私は十八歳になったわけですので、卒業まで待たずとも、いつでもカモンです。

私の部屋の合鍵を使って、いつでもそのみなぎった欲望を私にぶちまけに来るがいいです。

                            十月二十日 美月



昨日はごめんなさい。

あなたの美月は反省しています。

せっかくの冬休みなのに、受験勉強を優先することになってイライラしていました。

成績のいいみゃーはあなたに会いに行って、私が居残り勉強することは自分で決めたことなのに……。

電話だと素直になれません。

でも会えば甘えてしまうでしょう。

みゃーと楽しんでください。

良いお年を。

                            十二月二十六日 美月



不安で仕方ありません。

落ちたらどうしよう?

一人の部屋はさみしいです。

でも、春になれば。

あなたの美月はちょっぴりナーバスです。

でも心配ありません。

あなたの美月は強い子ですから。

                            一月十一日 美月



電話でも言いましたが、もう一度言います。

合格しました!

頭を撫でてください。

いえ、今度会ったときでいいのです。

私は学習しました。

ヘタに弱さを見せたり、何かを要求したりすると、あなたは本当にこっちまで来てしまうおバカさんであることを。

しかも軽トラで。

でも、もういいのです。

もうすぐ私は、あなたのところへ行くのですから。

あなたの美月はあなたのものです。

                            三月八日 美月

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