第81話 ─閑話─ 第二十七回乙女会議

「それでは、第二十七回乙女会議を開催します。パチパチパチ~」

「なんであたし、また参加しちゃってるんだろ……」

「いろはちゃんはオブザーバーとして有用だよ」

「いろはさんは監視対象として重要ですよ」

「ちょ、ちょ、あたし、完全に第三者だし」

ジロリ。

「先日の朝、校門前でセンパイと呼び、肘で小突いたりしたことをもう忘れたと?」

「い、嫌だなぁ、あんなの顔見知りの挨拶じゃん」

「あれが顔見知りの挨拶なら、親しくなれば校門前で合体するんじゃないかしら」

「ちょっと何言ってるのか判んないっす」

「カマトトぶって。はっ!? まさか校門繋がりで合体は肛門?」

「多摩さんがなんか怖いっす!」

「ところでタマちゃん、私、生えてないのバレちゃった」

「!?」

ガタン!

「ちょ、タマちゃん、落ち着いて。立つ意味無いからね?」

「あたしは第三者、あたしは第三者……」

「バレるってことは、見せたってことじゃないの?」

「見せたんじゃなくて見られたの」

「見られたってことは、裸になった、もしくは裸にされた!?」

ガタン!

「ちょ、タマちゃん、座って」

「あたしは第三者、路傍ろぼうの石……」

「どういうこと? 説明次第によっては私も脱ぐわ!」

チラリ。

「ここで脱いでも意味無いっすよ?」

「お母さんが酔っ払って、私の裸の画像、こーすけ君に見せちゃったんだもん」

「これだから第三者は!」

ドンっ!

「ひっ! あたしは路傍の石ですって」

「タマちゃん、机を叩かない」

「……で、彼の反応は?」

「うーん、まあ普通に? 特に問題なく? 受け入れるみたいな?」

「まあ毛が無いくらいで拒否する男性なんていないか」

「つーか美矢、まだ生えてなかったんだ?」

「いろはちゃん、知ってたの?」

「だって一年の時、プールの着替えでみんなから可愛いーって散々からかわれてたっしょ?」

「……」

「男子にも広まったんじゃないかなぁ」

「いったい何億匹の稚魚が無駄に放たれたのかしら」

「稚魚っすか?」

「鋭い指摘ですね、いろはさん。判りました。オタマジャクシに訂正します」

「ちょっとマジで意味判んないっす」

「……まあ、噂は噂で、実際を知ってる男性はこーすけ君ただ一人ってことで」

ジロリ。

「そこはかとなくムカつくわね」

「でもまあ、画像見たときも、特別喜んでる様子は無かったんだよねぇ……」

「あー、あたしも先日、コンビニ前で会社帰りの孝介センパ……サンと偶然会ってパンツ見られたけど、何か普通だったわ」

ジロリ。

「どういうこと?」

「いや、コンビニ前でヤンキー座りっつーかM字開脚? してたら孝介サンがやってきて、パンツ見えてるぞって頭をポンと叩かれて、なんか大人の余裕っつーか、爽やかに叱られちゃった、みたいな──」

ガタン!

ガタン!

「ちょ、待って! 二人とも座って?」

「どうする? タマちゃん」

「どうするも何も、二度とパンツを見せられない身体にするしか」

「何か判んないっすけど怖いっす!」

「それで、その後は何も無かったの?」

「えっと、肉まん奢ってくれました」

「肉まん!?」

ガタン!

「奢られた!?」

ガタン!

「ひっ!」

「どうする? タマちゃん」

「どうするも何も、二度と肉まんを食べられない身体にするしか」

「自分の身体がどうなるのか判んないとこが怖いっす!」

「それにしても、身近にこんなことが起きてるなら、私達の知らないところで何が起きてるか判ったものじゃ無いよね」

「あー、でも」

「何? いろはちゃん」

「先日、多摩さんが孝介さんと手を繋いで歩いていたのが衝撃っした」

「え?」

ギクリ。

「タマちゃん?」

「あらあらあら、いろはさんったら」

「ちょっと、タマちゃん! 聞いてないよ!」

「みゃー、落ち着いて。裸を見られたあなたと、これでおあいこよ?」

「どっちから?」

「な、何が?」

「どっちから繋いだの!」

「……最初は、彼から」

キッ!

「でも、それは何かとうるさい私を黙らせるのが目的で……」

「うん、それで?」

「か、帰り道は私が、お、お願いしたの」

「タマちゃん、それ、規約違反だよね? 頭ナデナデは想定してたけど、タマちゃんが自らおてて繋いでを要求するなんて!」

「ご、ごめん」

ペコリ。

「ごめんで済んだら私だってあんなことやこんなことも!」

プンスカ。

「あたしは第三者、あたしは第三者……」

「でも、孝介さんが素直になっていいって言ったんだもん……」

「私は言われてないよ~!」

ショボン。

「そう言えば、あたしもコンビニで何か欲しいものあるかって訊かれて、いいですって遠慮したら、素直になれって言われて肉まんを。てへ」

キッ!

「いろはちゃん」

「な、何?」

「私、いろはちゃんのアヘ顔画像、持ってるんだけど」

「なっ!? 生娘きむすめの私がアヘ顔とな!?」

「ほら」

「!? バカな! アヘってる!」

「体育祭でいろはちゃんが走っている時に、タマちゃんが動画を撮ってたんだけど、けた瞬間を切り取ってみれば、あーら不思議、白目をいてイっちゃってる顔に」

ニヤリ。

「ちょ、多摩さん、何でダブルピースしてんすか!」

「敵の弱味になるようなことは、常に捕捉しておかないと」

「そんな顔見られたら、お嫁に行けないっす」

「孝介さんなら笑いながら、まあ可愛いじゃん、とか言いそうな気もするけど」

「あ、有り得る」

「それでもいやぁ!」

「じゃあ、そろそろお開きにしよっか。いろはちゃんも、またね」

ニッコリ。

「もう来ないもん!」

「もんだって、可愛いー!」

「可愛い……」

ポッ。

「ほ、褒めたって、もう来ませんからっ!」






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