第71話 ─閑話─ 乙女会議

「それでは、第二十……何回だっけ?」

「二十五回」

「第二十五回、乙女会議を行います。今日は特別ゲストに、いろはちゃんをお呼びしています。パチパチパチ」

「どもども。て言うか、あんたら二十五回もこんな会議してるんだ」

「まあ三人なので、色々と取り決めやらありまして」

「童貞には、いきなりさんぴーはハードルが高いので、綿密な計画を立てないと」

「あはは、最近、多摩さんのイメージ変わったっすわ」

「本日いろはちゃんを呼んだのは、この間の文化祭でこーすけ君と接触した感想を聞かせてもらい、今後の参考にしようと考えてるんだけど、実際どうだった?」

「まあ、ぶっちゃけ抱かれてもいい──ウソ、嘘です! 多摩さん座って!」

「いろはさん、道具で処女を散らしたくなったら私にご相談を」

「もうタマちゃん、今日は遠慮無く本音を語ってもらうんだから脅しちゃ駄目」

「……失礼。続きをどうぞ」

「いやぁ、まあ、何て言うか、エロ目線が皆無だったなぁ、って言うのが最も印象深いかな」

「マジで?」

「隠すのが上手いだけかもです」

「うーん、あたしはほら、胸が大きい方だから」

「くっ!」

「ちっ!」

「えっと、続けていい?」

「どうぞ」

「聞きましょう」

「やっぱり判るんだよね、男子とかのそういう視線」

「くっ!」

「ちっ!」

「……」

「あ、ごめん! 気にしないで続けて?」

「う、うん。えーっと、それで、あの人はそういう視線が一切無くて、正直、同性愛者かと勘繰るくらい」

「でも、抱きたいって言ってくれたよね?」

「ええ、抱きたいと言ってました」

「あんたら、そんな話までしてんのかよ」

「因みに、彼の抱きたい女一位は私です」

「ちょ、タマちゃん! こーすけ君そんなこと言ってない!」

「目が言ってた」

「言ってない!」

「まあまあ、二人とも落ち着いて」

「それで、孝介さんの性癖はともかく、いろはさん的には何か思うところはありましたか?」

「うん、そのエロ目線が皆無なのに、女の子扱いしてくれて優しいこととか」

「だよね!」

「あの天然スケコマシが」

「ちょっと頼りない感じがあるのに、なんか包んでくれるようなおおらかさがあると言うか」

「判る!」

「ちっ、あの軟弱優柔不断男が」

「気さくで話し掛けやすいし、細かいところもちゃんと見ててくれたりとか」

「そうそう!」

「けっ、人の顔色ばかり窺う小心者が」

「……えっと、多摩さん?」

「何ですか?」

「孝介センパイのこと、嫌いなんすか?」

「孝介……センパイ?」

「ちょ、ちょっと待った! 呼び方が気に入らないなら改めるから! シャーペンは下ろして!?」

「不安要素はことごとく排除するタイプですのでよろしく」

「り、了解であります!」

「もう、タマちゃん、脅したら駄目って言ったでしょ」

「脅したのではなく、これは警告よ、みゃー」

「えっと、多摩さん、その、孝介サンにもそんな姿を見せてるんすか?」

「当たり前です。彼は私の毒舌も下ネタも、全て受け入れてます」

「へー、愛されてるんすねぇ」

「ふ、ふふ、まあ、それほどでもありますけどね」

「タマちゃん、顔がめっちゃ嬉しそうだよ」

「べ、別にそんなことないから」

「もしかして、孝介サンはMなんすかね?」

「彼は私にだけMなの。私が右の頬を叩けば彼は左の頬を差し出すわ。ののしれば涙を流して喜ぶ下僕よ。私のケツを舐めろと言えば──」

「タマちゃんタマちゃん、妄想入ってるよ?」

「……私の、お尻?」

「いや、言葉遣いの問題じゃなくて」

「とにかく、きっと、たぶん、恐らく……」

「何?」

「なんすか?」

「私がお願いしたら、何でもしてくれるもん……」

「か、可愛いー!」

「多摩さんが語尾にもんを!」

「う、うるさいです!」

「うるさいもん」

「愛されてるもん」

「くっ、屈辱です!」

「まあまあ、孝介サンだって、今の多摩さん見たらメロメロっすよ」

「見せちゃ駄目だからね!」

「……そっか、女の武器は身体だけじゃないんだ」

「いや、あざといのは駄目っすよ」

「ふん、私のあざとさを童貞が見抜けるかしら」

「タマちゃんタマちゃん、私達も未経験だし、人生経験でいえは向こうが上だよ?」

「でも、キャラ変えないと頭撫でてもらえないし」

「え、タマちゃん頭ナデナデしてほしいの?」

「だって、いつも叩かれてばかりなんだもん」

「もん」

「だもん」

「う、うるさい!」

「まあ何だかんだ言っても、あたしら子供っすから、甘えたいよねー」

「うん……」

「あたしも年上に甘えたいなぁ」

「誰に?」

「え? ちょ、美矢、目が怖いって!」

「抱かれたい、センパイ呼び、二度は許したけど、三度目は無いよ?」

「ある意味、多摩さんより怖いって!」

「みゃーが本性出したところで、そろそろお開きにしましょうか」

「うふふ、本性だなんて嫌だなぁタマちゃん。いろはちゃんもありがと! また呼ぶね!」

「もう結構っす!」




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