第2話 勉強を教えて欲しいんだよ

4月8日


今日は課題テスト。

テストと言っても、国語、英語、数学の3教科。

俺は国語が一番得意だが、最近は英語を頑張っている。

しかし、もっと頑張りたい教科……それは数学。

俺は中学生の時から文系で、国語ではいつもクラス1位を取っていた。

それに比べ数学は苦手で、いつも平均前後。


高校2年生の文理選択ではもちろん文系を選んだが、俺は国立の大学を目指しているので数学もやらなければならない。


今日の数学の課題テストのために、昨日はかなり数学の勉強をした。

もちろん、他の2教科も勉強した。

これで成績が上がってくれるといいんだけどな…。


どきどきしながら、最終確認をしていると

予鈴のチャイムが鳴る。

各々が自分の席に座る。

そわそわしているやつ、めんどくせぇと思っていそうなやつ、寝てるやつ。

色々なやつがいるが、俺は後ろの席の人に意識が行っていた。


七星夜空だ。

今日も、綺麗でさらさらな黒髪。今日は眼鏡をしている。おしゃれな丸い形をしている眼鏡で、よく似合っている。

そんなに後ろばかりをちらちら見ていると、変に思われる。


見たいという気持ちを抑え、前を向いた。

テスト開始まであと2分。

そこでテスト用紙が配られる。

1限目は国語。得意教科だから90点は取りたい。

初めてのテストって訳でもないのにすごく緊張している。

緊張を押し殺そうと深呼吸をする。

少し落ち着いてくると、いいタイミングで本鈴が鳴る。

俺はすぐにシャーペンを持って、問題を解き始めた。


✐✲✐✲✐✲✐✲✐


2限目の英語のテストが終わる。

今のところ、分からなかったところがなく、すごく順調だ。

次は数学。さらに心臓がうるさくなる。

俺は確認するのも兼ねて、昨日やった問題を開ける。

そこには昨日の努力が見える。

夜更かしするのは良くないので、早く寝るが勉強量は他の人にも負けていないと思う。

負けたくない、その強い気持ちがさらに強くなった。


燃える俺の目線には、七星楓が入った。

相変わらず、短めスカートで、もう友達を作ったらしい。

その友達と楽しそうに喋っている。

余裕なのか、諦めているのか分からないが、

なぜか自信に溢れているような顔をしている。

もしかしたら、頭がいいのかもしれない。

俺は静かに闘志を燃やしていた。


✐✲✐✲✐✲✐✲✐


数学のテストが終わる。

いつもより手応えがある。

勉強したかいがあった、と嬉しく思う。

他のやつは「終わったぁぁ~」と嬉しそうに伸びをしたり、「死んだ…」と絶望的な顔をしていたり。


智貴が俺のところに来る。

見るからに「絶望的だ…」という顔をしていた。

俺はわかりやすすぎて笑ってしまった。

すると

「いいよなぁ~、頭のいいやつは!!俺はもう無理だ…」

と智貴に言われた。

中学生の時は智貴も同じくらいの頭の良さだった。

今ではその面影もないが…。


「お前だって、勉強したら出来るようになるだろ。少しは勉強したらどうだ?」

俺がアドバイスすると、智貴は面倒くさそうな顔をした。

全く、せっかく人がアドバイスしてやったのに…。


とりあえず俺は、帰りの準備をした。

今日も早帰り。

智貴は今日も7時まで部活らしく、嘆いている。

「頑張れよ」と一言、励まし、俺は教室を出た。


☆✲☆✲☆✲☆✲☆


学校の正門を出て、少しすると後ろからこちらに

走ってくる音が聞こえる。

外周か?大変だな、と同情した時、どんっと背中にぶつかった感覚がした。

びっくりしてぶつかった相手の顔を見ると、

七星楓だった。


「あ!戸塚くん!?…だよね。あ、えと、ぶつかってごめん!あのさ、頼みがあるんだけどいいかな!?」


勢いよく喋る七星楓に圧倒され、俺は「おう」と

返事をしてしまった。

七星楓はそれを「頼み事をしてもいい」という意味で捉えたらしく、「やったー!」と嬉しがっている。

七星楓は「じゃあ、勉強教えて欲しいの!3時に市立図書館で待ち合わせね!入ってすぐの所で待っててね!よろしく!」

と言ってからすぐ立ち去ってしまった。

俺は何も言えなかった。


やってしまった。俺はあまり女子と喋らない。

別に、女子が苦手、という訳でもない。

ただ、女子との縁がなく生きていただけ。

好きな人も出来たことがなかったし、告白されたこともなかった。

告白らしきことはされたけど…。


七星楓の連絡先を知っている訳でもないし、これから何か用事がある訳でもないので、七星楓の頼みに乗ることにした。


☼✲☼✲☼✲☼✲☼


2時55分、俺は市立図書館の入ったすぐ、受付カウンターの所にいた。

七星楓が「入ってすぐのところでまってて!」と言っていたから、ここだろう。

まだ来ないし、暇なのでスマホを取り出した時、

視界が真っ暗になった。

誰かに両目を隠されている。

誰か知り合いがいたのか、と思い「誰だ?」と

言おうとしたら


「だーれだ!」


聞いたことのある、高めの女子らしい声。

これは…


「七星さん?」

「ピンポーン!当たり!来てくれたんだね!

あ、あと同級生で同じクラスなんだし、ためでいいし、楓でいいよ!」


元気な笑顔と大きな瞳。

これで何人の男がこの子に恋をしてきただろう。

俺も、どきっとはするが、恋には落ちない。

でも、もう少し近くで言われていれば、危ないところだった。


「わかった。楓って呼ぶよ。」


俺がそういうと楓は何も言わず、にこっと微笑んだ。それはまた、少女のように無邪気だった。

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普通の俺と双子の君たち! 清水 優杏 @kiiyafu

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