4話 美少女とお買い物

 放課後、駅ビルの中の時計ショップで、なぜか俺は美少女と並び立っていた。時計を見つめる彼女の綺麗な顔がガラスケースに映る。美人は3日で飽きると言うが、こいつの姿が美術館に飾られているのなら、確かに3日はその前から動く必要はないだろう。


 顔だけじゃなく、スタイルまでいいなんて反則だ。胸だけはつつましいけれど。


「あんた、なにか妙なこと考えてないでしょうね」


 見透みすかすように彼女は詰め寄ってくる。


「いや、別にやましいことは考えてないぞ」


 教室では気づかなかったが、彼女が近づくとたまらなくいい匂いがした。鼻を刺すような香水の匂いではない、もっと優しい匂いだった。


「それより気に入ったのはあったか」


 今では同じモデルでも様々なカラーリングや材質のものが販売されている。中には女の子でも気に入りそうな色もたくさんあった。


 しかし、篠原はそんなもの意に介さないように言う。


「あんたのとおんなじなのはどれ?」


「ああ、それだったらこれだな。復刻版だけど、デザインはほとんど変わらない」


 黒いウレタンボディに、昔ながらの四角いモノクロ液晶、相変わらずの無骨ぶこつなデザインだな、と自分でも呆れる。


 しかし篠原は迷うことなくそれを買った。店員にプレゼント用ですか、と尋ねられ、違います、と淡泊たんぱくに答えていた。


「今日は急に付き合わせて悪かったわね。コーヒーでも奢るわ」


 彼女は俺を置いて先に同じ駅ビルのコーヒーショップに入って行った。仕方なく俺は彼女の背中を追いかける。

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