3話 どこでも売ってるよ

 それは四角い液晶を指して「スクエア」であるとか、ある映画でイケメン俳優はいゆうが身につけていたことから「スピードモデル」とか呼ばれているらしい。日本で爆発的に流行り始めたのは90年代後半のことらしいが、どちらにせよ俺が生まれる前の話だ。

 そんな古めかしいモデルだが、良いものはいつの時代でも生き残るものらしく、腕時計ショップに行けば大抵売っている定番商品だ。


「だからどこでも売っているって言っているだろ」


 俺は隣に座る美少女に説明した。だが、篠原はそれで納得しない。


「どこでもじゃわからないわよ」


 俺は仕方なくスマフォでネット通販のページを表示して見せる。


「ほらアマズンでも買えるぞ」


「アマズン?」


 篠原はキョトンとした顔をする。まじか。父親がIT会社を経営しているのにアマズンも知らないのかよ。


「お前、買い物とかしないのか?」


「失礼ね、買い物くらいしてるわ。いつも百貨店の人がうちにきて、適当なものを見繕ってくれるのよ」


 なんだそのおすすめ機能。そんな買い物の仕方知らないぞ俺は。


「売ってる店、案内しなさいよ」


「へ?」


 それから篠原は教科書に顔を戻して言う。


「放課後付き合いなさい」


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