第3話 思惑  【敵国視点】

***************エフスロス民主国軍事本部**********


広い会議室で男性五人が円になる様にして椅子に座って話している。電気はついているが全員が若干俯いている為、顔に陰影がついている。





会議室入り口に一番近い席に座っている男性が話し始める。


スファギ大統領「それでは戦況報告会議を行う、ハウラ陸軍元帥」


そう言うと向かい側に座っている男性が立ち上がり答える。


ハウラ「はい、大統領。先ほど入って来た報告では、暗殺特務部隊の奇襲によりフリオ王国の「死の大隊・・・・」の訓練指導官を含めて全滅を確認しました。流石に奴らも新兵ばかりの野外訓練ではさすがに対抗しうる術は無かったようですね。残る心配は基地に残っている死の大隊の本隊員どもが些か心配ではありますが・・・」


そう報告する男性は不敵な笑みを浮かべる。





スファギ大統領「確かにそれは心配だな、だが・・・今回の奇襲で新兵とは言え、数を減らしただけでも効果はある。基地に残っている部隊員だけでは出来る事が限られるからな。よくやった」


スファギも満足げな表情を浮かべている。


ハウラ陸軍元帥「ありがとうございます。」


そういうとハウラは、お辞儀をして椅子に座る。





スファギは向かってハウラの右隣に居る男性に話掛ける。


スファギ大統領「ラオブ海軍元帥はどうなんだ?」


そう言われたラオブ海軍元帥は、立ち上がり答える。


ラオブ海軍元帥「はい、現在我々の艦隊はヴィーゼン連邦共和国に向けて航行中でございます。到着予定時刻は約1週間後とみてはいますが、今回の奇襲による暗殺特務部隊の回収までも含めると、多少時刻が前後するかもしれません。」


スファギはそう報告を受けると、先ほどの笑顔が消えて真剣な面持ちになった。





スファギ大統領「そうか・・・それで・・・回収にはどれ程かかるのだ?」


そう質問している顔はもはや怒っている。


スファギ大統領が怒っている表情を見てハウラは若干にやけている


ラオブ海軍元帥は額から汗が流れている、もう一度資料に目を落とし再びスファギ大統領に報告し直す。


ラオブ海軍元帥「はい!お、およそ12時間後には回収地点まで辿り着くかと・・・」


そう報告し直した、ラオブ海軍元帥の声は震えている、報告を聞いたスファギ大統領は深いため息をついた。





スファギ大統領「分かった、もうよい・・・ご苦労だった」


それを聞いたラオブ海軍元帥は安堵した表情を浮かべる。


ラオブ海軍元帥「あ、ありがとうございます」


ラオブは感謝の言葉を言い、席に座ろうとした瞬間にスファギ大統領が話しかける。


スファギ大統領「次からは迅速に部隊を展開しろ、何の為にわざわざ神と協力して戦ってるのか貴様分かっているのか?なんの為にわざわざ軍事統括司令官まで呼んで会議を開いているかわかるか?この中でのそれぞれ居る元帥の中でも貴様が一番無能だからだ。今回は大目に見るが次失敗したら首が飛ぶぞ?もちろんこれは比喩などではないからな。注意しろ」


暴言を吐き終えたスファギ大統領は上を向いた状態で深いため息をついた。


ため息を吐いた後の表情は、まだ吐き足らないのか不満そうな表情をしている。一方暴言を吐かれた、ラオブ海軍元帥は完全に怯えた表情を浮かべて立っている。


スファギ大統領は自分の右隣りに居る、男性に話しかける。スファギが話しかけたところでラオブは椅子にゆっくりと座った。





スファギ大統領「それではクリシス空軍元帥・・・報告を」


そう言われたクリシス空軍元帥は立ち上がると報告を行った。


クリシス空軍元帥「はい、現在我々の部隊は作戦通りにヴィーゼン連邦共和国内にあるゼファー国際空港に2機忍ばせています。」


そう報告を受けた大統領は質問をする。


スファギ大統領「たった2機か?大丈夫なんだろうな?」


質問されたクリシス空軍元帥はすぐに答える。


クリシス空軍元帥「大丈夫です、偵察機の事前報告によると輸送機6機に辺り護衛機が4機と報告を受けています。相手ヴィーゼン連邦共和国は制空権が保証されている国内の移動だけなので、それ以上護衛機を付ける必要性を感じなかったのでしょう。むしろ少なくてこちらとしても好都合でした。」


スファギ大統領は納得した表情をして小さく頷いた。


暫くの沈黙の後に、スファギ大統領が話し始める。





スファギ大統領「では諸君、報告の漏れは無いな?」


そう訊かれた、元帥一同は一斉に席を立ち返事をした。


元帥一同「はい」


それを聞いたスファギ大統領は笑みが漏れる。最後にスファギ大統領と、左隣りに座っている男性が席を立つ。


スファギ大統領「良し・・・では第三回戦況報告会議を終了とする。全員解散」


そう言われた元帥一同は寸分の狂いもなくスファギ大統領に敬礼をして足早に会議室を去っていった。





元帥達が会議室から出て行ったのを確認してから、左隣りに座っていた男性に話しかける。


スファギ大統領「後のことは任せましたよ、モナダ軍事統括司令官」


モナダ軍事統括司令官「あぁ、任せておけ」


モナダ軍事統括司令官は返事はするが、スファギ大統領と目を合わせようとしなかった。


スファギ大統領は追い詰めるように言う。


スファギ大統領「いいんですか?そんな態度を取って・・・確かヴィーゼン連邦共和国の田舎に娘さんが居ましたよね?」


あまりの衝撃にモナダは驚きを隠せない。


モナダ「貴様・・・どうしてそれを・・・」


一呼吸してスファギは話す、話し始めた顔は会議室で浮かべた笑みよりも喜んでいる。


スファギ「戦争と政治はね・・・情報と立ち位置なんですよ。自分がいかに最適な立ち位置を取り、先に情報を手にするかで勝敗は分かれる、私は先の大戦時にフリオ王国に軍を侵攻させました。この時、我が『エフスロス民主国』だけルイーナ政策の事は知らされていませんでした、丁度あの時はフリオ王国との和平交渉決裂により戦争を仕掛ける頃に先の大戦が始まった。」





そういうスファギは遠い眼差しをして、若干もの悲しい表情浮かべる。


スファギ「神々は人類を弄んでいるのか?先に愚弄したのは人類か?元々生贄など要求するから間違いが起きたのだと・・・その時は思いました。そう思ったので私は当時フリオ王国から軍を撤退させフリオ王国と共に共闘をしました、だが結果はどうです?大戦には負けて、フリオ王国は大戦で失われた防衛力を確保する為に敗戦直後にすぐさまヴィーゼン連邦共和国と同盟を結びました。


それにより大規模な軍備増強を行いました。敗戦後の我が国は復興の目処すら立たぬまま一方的、かつフリオ王国が有利な条件で和平交渉突きつけました。


我々は飲まざるを得なかった。再軍備するにも余力が残っていない、残った元帥や指揮官、そして十分とは到底言えない兵士達で何ができるんです?そこで思ったんです。

 

「先の大戦で起こった我が国に対しての屈辱は次の大戦で晴らす」と


そして今は亡きブルへリア帝国の戦争難民を受け入れた。受け入れた目的は一つです。難民の中には優秀な人材が居るかも知れないと・・・そして貴方「モナダ・クウェーサー・・・ ・・・・・・」を見つけました。すみません、あなたを利用してしまい。私だってこんな事したくは無いんです。」


そう言われたモナダは黙るしか出来なかった・・・


話を終えて満足したのか、スファギは最後に一言。


スファギ「そろそろ時間ですので、お先に失礼。」


そう言うとスファギは会議室を後にした。

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ホーリー・オブ・ストーリーズ もかめ @mokame

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