第16話 元友人

 前回は幸運についてを記した。今回は失敗、それもはっきり僕自身の失敗について記しておこうと思う。

 今さらと言えば今さらの話、書いて何が改善するとも思えない。

 だからこれは、手前勝手な言い訳に近い。


 まだ真面目に創作をやり直し出す前のこと。数ヶ月前から友人が、投稿サイトで連載を始めていた。頑張っていたのは確かだ。読んでみた後で素直に感想を述べる。ただそれだけのことを、当時の僕はしなかった。なぜか。まだデビュー前の謎の作者、藜(現トネ・コーケン)に熱狂していたからだ。

 熱心に『スーパーカブ』を『RUN!』を薦る一方、友人の作品に言及することは無かった。早い段階で読むのをやめていた。多くを逸していたと、今では思う。感じた面白さに嘘はつけないとしても。


 友人の連載完結の、確か数日後だったように思う。よせばいいのに僕は、ギョーカイの人に作品を話してみてもと言い出した。たまたま、別件で会う用事があったんだ。それなり話題にもなって、無事に完結もしたようだからと。悪気も損得もなかった。だからこそ、余計に質が悪い。

 じゃあどこが面白かったんですかと、あれは最後の確認だったんだな。こちらはしどろもどろ、それまでだ。読み易さなんて感想、読まなくても言える。まともに読んだなら、まずは具体的なシーンを挙げるべきだったろう。所詮しどろもどろの中、打算なしにと言って通じるはずもない。すべては今、思い返せばの話。


 それからの事はほとんど知らない。色眼鏡をつけたままでも丁寧に読める、そう思い違う程にはまだ自惚れていない。読めばおそらく、感想より感情が先に立つ。そう思えてしまう程には、まだ冷静ではいられない。


 あれから数年が経つ。どうしているのかと、時折気にかかる。どうにも勝手なものだ。たとえとうに縁を切られても。

 書き続けていて欲しい。願わくば、楽しく書いていて欲しい。手前勝手な願い事を連ねながら、この回は終わる。


付記:

同時期、ネットの揉め事で片棒担がされた事も遠因ではある(無意味な多忙だった)。後に小説の題材にした。 https://kakuyomu.jp/works/1177354054887167884/episodes/1177354054887179886

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